2020年6月8日月曜日

報復恐れ、相談ほぼゼロ 山口県内消防職場のパワハラ窓口

報復恐れ、相談ほぼゼロ 山口県内消防職場のパワハラ窓口

 

2020年6月8日() 21:24 中国新聞(山本真帆)

 

昨年の匿名アンケートで6割が職場のパワハラを指摘した光地区消防組合の中央消防署

 危険な火事現場での人命救助に備え、厳しい訓練や厳格な指揮命令系統が暴力やパワハラにつながりやすいと指摘される消防職場。対策として消防庁は3年前、全国の自治体に相談や通報窓口の設置を通達した。だが、中国新聞の調べでは、これまでに山口県内の全12消防本部に職員から寄せられた相談は美祢市消防本部に数件あるだけでほぼゼロ。「閉鎖的な職場で当の上司に筒抜けになるのが怖く相談できない」と明かす職員もおり、制度が機能しているとは言いがたい。

▽匿名調査では訴え相次ぐ

 「息子もちゃんと相談できる体制が整っていれば、孤立せず死を選ぶことはなかったのではないか」。昨年1月に自殺した宇部中央消防署員の松永拓也さん=当時(27)=の父哲也さん(63)はやりきれない思いを語る。

 

■「名ばかり窓口」

 松永さんは命を絶つ前に職場に横行する上司からのパワハラや不祥事などを遺書につづっていた。同署を管轄する宇部・山陽小野田消防局はパワハラ相談を局の総務課が取りまとめているが、哲也さんは「パワハラの上司や職員が相談先であれば、萎縮して話などできない。名ばかりの窓口ではないか」と訴える。

 全国で相次ぐ消防職場でのパワハラや暴力事件を受け、消防庁は2017年7月、全国の自治体に相談窓口の設置を通達した。単独消防では自治体の人事担当部署、複数の自治体による消防組合では職場内に窓口を設ける場合が多い。

 消防庁は情報源の秘匿や相談しやすい環境づくりを求めているが、現場では疑問視する声が上がっている。県中央部の消防本部の20代の男性消防士は「弁護士など外部の第三者でなく職場の窓口では上司や同僚に漏れるかもしれない」と懸念。「上司にばれたらパワハラがもっとひどくなりかねない」と不安がる。

 この男性のように多くの消防士が報復を恐れて通報や相談をしていないのではと思わせる出来事が光市の光地区消防組合であった。

■職場で犯人捜し

 同組合は昨年3月、職員110人に匿名アンケートを行い、101人が回答した。うち26人が実際にパワハラの被害に遭ったと回答。他の職員が被害を受けるのを見聞きするなど職場にパワハラがあるとの指摘は62人に上った。自由記述では「勤務中に窓ガラスを殴打し威圧的に命令された」「にらみつけ無視や書類を投げ付けられた」などの生々しい証言もつづられていたという。

 だが、同組合の窓口にも職員から相談が寄せられたことは一度もない。組合はアンケート回収後ほどなく原本をシュレッダーで処分。処分理由について組合は「特定の犯人捜しが目的ではない」としている。

 回答した若手職員の一人は「アンケートの後、(誰がパワハラがあると書いたのか)職場で犯人捜しがあった」と明かす。「意見をくみ上げるような風通しの良い職場ではない。訴えたい思いを我慢している人は多い」と表情を曇らせる。

 2月に開かれた同組合議会で赤星公一消防長は「厳正な規律や一定の厳しい訓練が求められ、ハラスメントなどにつながる恐れは高い」と消防職場の特殊性への理解を求めた。

 広島大でハラスメント相談室長を務めた横山美栄子教授は「相談窓口は本来、訴え出た被害者が解決につながると思えなければ機能しない。秘匿性の担保や相談した後にどうなるのか、透明性の確保が重要。上司ではなく、利害関係のない第三者が相談を受け付ける仕組みが必要だ」と指摘する。


《カウンセラー松川のコメント》

被害の訴えがあれば、当然組織としてその真偽を確かめるでしょう。
決して大きくない組織の中での内定調査だとしても
加害者が訴えられている事を知るのは難しくありません。
すると当然、加害者は保身の為に訴えた者を探します。
加害者が誰をターゲットにしていたか心当たりがあれば、
訴えた者を特定するのも容易でしょう。
また、調査する者が安易に被害者の名を挙げるかも知れません。
警察が容疑者を逮捕する様な訳にはいきませんから
加害者は被害者に対して口止めや報復をする可能性もあります。
だから、内部告発をする側もリスクを追いながらの必死ですが、
調べる側としては苦労が増えるばかりなので歓迎はしないでしょう。
よってニュースの小見出しどおり「名ばかり窓口」となっても
不思議ではありません。
これは決して消防に限らず公安職どころか全ての職場で言えることです。
だからこそ、ハラスメントの相談窓口は外部にも設けて
保秘の態勢を明確にする必要があるのです。
そして、特にパワハラが発生し易い環境の公安職だからこそ、
[安心して利用の出来る相談窓口を設置]することが大切であり、
これは健全な職場環境を築き、業務遂行に支障を出さない為にも
重要な案件なのです。

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