米軍基地の勤務でパワハラ、労災認定 労基署「人格否定する発言」
2026年9月9日(水) 5:00 朝日新聞(遠藤美波、遠藤隆史)
米軍岩国基地(山口県岩国市)で設備のメンテナンスをしていた50代の男性が精神疾患を発症したのは、米国系企業の上司からのパワハラなどが原因だったとして、岩国労働基準監督署が今年3月に労災と認定していたことがわかった。
米軍基地は、日米地位協定に基づき米側に「管理権」があり、許可なく出入りできない。労働トラブルを裏付ける記録の提出を求めるのも難しいが、このケースは男性が上司との会話を録音したり、メッセージを保存したりしていた。専門家は「実態把握が難しい米軍基地内のパワハラが労災認定された珍しいケースではないか」としている。
■退職迫られ適応障害で休職
男性や代理人弁護士によると、男性は2021年8月、基地内の設備の維持管理業務を担う米国系企業「PAE Design & Facility Management(現Amentum Design & Facility Management)」に雇用された。22年2月に基地内のクレーン設備のメンテナンスなどの担当になったが、高所作業を監督する際に米軍の規定で必要とされる安全関係の資格がないまま業務を強いられたという。
また、23年1月には、男性によって新型コロナウイルスに感染させられたと考えた上司から「お前のことを一生恨む 絶対に許さん」とメッセージが送られてきた。
約1週間後には男性の勤務態度や言動についてPAE社の幹部ら5人との面談があり、「君を配置する場所がない」などと退職を迫られたという。
男性は不安感や動悸(どうき)が止まらなくなり、適応障害と診断され休職した。
■「人格や人間性を否定する発言」労基署が認定
労災申請を受けた岩国労基署は、男性が無資格で業務をするという不適切な行為を強いられたと指摘。上司からのメールも「人格や人間性を否定する、業務上不必要な発言だった」と判断し、適応障害の発症は業務に起因すると結論づけ、労災認定した。
米軍基地の労働問題に詳しい熊本学園大学の春田吉備彦教授(労働法)は「今回は民間企業が相手の出来事だが、基地内で起きたことを日本の労基署が把握するハードルは高い。泣き寝入りする例もあるとみられるが、労災が認められたことに大きな意義がある」と話している。
Amentum社は「コメントできない」とした。
米軍基地業務で労災認定 上司がパワハラ、精神疾患
2026年9月9日(水) 12:24 共同通信
米軍岩国基地(山口県岩国市)内で設備メンテナンスに従事していた50代の日本人男性が精神疾患を発症したのは、勤めていた米国系企業の上司からのパワハラなどが原因だったとして、岩国労働基準監督署が労災認定していたことが9日、分かった。3月23日付。
代理人の谷真介弁護士によると、米軍基地内で起きた労働トラブルは裏付けが難しく、労災認定されるケースはまれだという。
労基署の調査文書などによると、男性は2021年8月から基地内の設備維持管理業務を担う米国系企業で勤務。22年2月、高所作業を監督する際に必要な米軍規定の安全資格を保有していないのに、クレーン設備などでの業務を強いられた。
さらに、男性によって新型コロナウイルスに感染させられたと考えた日本人の上司から「一生恨む 絶対に許さん」とのメッセージを送られ、別の幹部らからは退職を迫られるなどした。男性は適応障害と診断され休職し、現在は会社側によって雇い止め状態にされているという。
米軍岩国基地で勤務の男性、パワハラや退職強要など
「表に出にくい基地内の出来事」による労災認定
2026年9月10日(木) 16:27 読売新聞
米軍岩国基地(山口県岩国市)内で設備メンテナンスに従事していた50歳代の男性が精神疾患になったのは、勤務していた米国系企業(東京都)とその元請け会社による退職の強要や上司のパワーハラスメントなどが原因だったとして、岩国労働基準監督署が3月、労災認定していたことがわかった。
男性の代理人の谷真介弁護士によると、米軍基地内で起きた労働トラブルは裏付けをとるのが難しく、労災認定されるケースは珍しいという。
谷弁護士によると、男性は2021年に米国系企業に採用された。その後、採用された企業ではなく元請け会社のマネジャーから直接業務を指示されるようになり、資格のない高所作業の監督業務を担当させられ、時間外労働時間が増加したこともあって心身に不調をきたした。環境の改善を求めたが、企業側は応じなかったという。
23年1月、男性に新型コロナウイルスに感染させられたと思った日本人の上司から「お前のことを一生恨む 絶対に許さん」とのメッセージを受けたほか、両社との面談で勤務態度の悪さなどを指摘され、退職を示唆されて適応障害となり休職した。
同6月に復職を申し出たが、元請け会社の米国人マネジャーから拒絶され、基地に入るための許可証の返還を求められた。男性はトイレに逃げたが、マネジャーに力ずくで腕をつかまれたため、軽傷を負った。男性はかけつけた米軍憲兵に手錠をかけられ、基地外に連行されて許可証も押収された。
労基署は、同年1月までの出来事が原因で強い心理的負荷がかかって発病に至り、症状が継続しているとして業務上災害と認定。同6月の出来事も事実認定した。男性は取材に対し、「表に出にくい基地内の出来事だったので認められてよかった」と話している。
谷弁護士は、「在日米軍基地内という閉鎖空間で違法状態におかれ、被害を訴えても改善されなかった構造的な問題がある。今回の認定は基地で働く人の権利保護に関わる重要な先例となる」と評価している。
男性は米国系企業と元請け会社を相手取り、地位確認などを求めて係争中。男性を採用した企業は現在、同基地内の業務は行っていないと説明し、「言いたいことは山ほどあるが、コメントは差し控えたい」としている。