【伊賀】“忍者の町”市長に今度はパワハラ疑惑
百条委で双方の主張が対立 自治体が陥りやすい職員vs.トップ構図のワケ
2026年9月2日(水) 13:22 読売テレビ
“忍者の町”として知られる三重・伊賀市が今、職員に対する市長の“パワハラ”疑惑で揺れています。
実はこの市長、これまで事故の不申告や不倫疑惑報道など、数々の問題が取り沙汰されてきた人物です。果たして“パワハラ”はあったのか? 双方の主張とは?
■“パワハラ”疑惑の前にも…
『伊賀流忍者』発祥の地として有名な三重・伊賀市。この“忍者の町”で市政を任されているのが、三重県議などを経て、2024年11月に市長となった稲森稔尚氏(42)です。そんな市長に今、市職員に対する“パワハラ”疑惑がかけられています。
世間を騒がせたのは、今回が初めてではありません。2026年3月、公務で自家用車を運転中にガードレールに接触しましたが、警察への報告を怠ったため、報告義務違反の疑いで書類送検されました。(後に起訴猶予処分)
2026年6月には、一部週刊誌で「三重県津市の女性市議との不倫疑惑」が報じられましたが、市長は「不貞行為の事実については一切ない」と否定し、市長を続投するとしていました。
■“パワハラ”疑惑の発端は『民間企業の工事未完了』
こうした中、さらに持ち上がったのが、市職員への“パワハラ”疑惑です。発端は、市の公共施設『旧上野ふれあいプラザ』の売却を巡り、市長が職員に民間業者との契約解除を指示したことでした。
2021年11月、伊賀市は『旧上野ふれあいプラザ』を民間企業に契約金721万円で売却しました。しかし、稲森氏が市長に就任した2024年11月、事業完了期限に現場立ち合いを行うと、工事の未完了が判明。
2025年1月31日を事業期間延長の検討期限としましたが、同年4月に民間企業が違約金約5700万円を納付し、予算成立後に契約金を返還することで、契約解除が成立しました。
被害を訴える伊賀市職員・吉岡一課長によると、パワハラがあったのは、工事の未完了が判明した翌月の2024年12月だったといいます。パワハラ疑惑申立書(吉岡課長側の資料)によると、『旧上野ふれあいプラザ』の契約解除を巡り、市長と電話でやり取りしたといいます。
(稲森市長/2024年12月)
『民間企業の社員Cを雇っていることで、会社として信用できないから、今すぐ契約解除してください』
(吉岡課長/2024年12月)
『民間の従業員に対して、こちらから解雇するようには言えない。それを理由に契約解除するのは、正当な理由にならない』
(稲森市長/2024年12月)
『なぜ、できないんですか。やらないなら、あなたの処遇も考えますよ。異動希望を書いてください』
また、電話でのやり取りの直後、市長が課の窓口を訪れ、電話での会話について再び言及し、外に移動したといいます。その際、市長は「いい加減なことばかりして、こちらが指示したことをしないからや。4年間、何もしないで。うるさい、うるさい」と発言しました。吉岡課長は「うるさいとはなんや」と発言し、両者にらみ合いとなり、部長が仲裁に入ったということです。
吉岡課長は、「ハラスメントを受けた」として当時の上司に報告しました。しかし、その後、調査は行われなかったとして、2026年4月、市議会に申し立てを行いました。市議会は6月に百条委員会を設置し、調査を始めました。
6月30日、稲森市長は公式SNSを更新し、「私の公約でもあり長年の懸案だった『旧上野ふれあいプラザ問題』の課題解決に向けて、業者側の契約不履行を根拠にして業者との契約解除を強く指示したが、民間業者の社員の解雇を求める必然性はない。職員に『異動希望を求めた』との発言を行った認識は一切ない」との見解を示しました。
また、7月の会見では、「国のガイドラインが示すようなパワハラはなかったと(百条委員会で)証明されると確信している」と発言しました。
■真っ向から食い違う証言…百条委員会で語られたこと
8月25日に行われた百条委員会で、被害を訴える吉岡課長は「『処遇を考えます』と言われたときには、こういうことを今のご時世で言われるんだという驚きと、脅迫に近い話なのかなと感じた」などと証言しました。
一方、稲森市長は、問題となっている「あなたの処遇を考えます」「異動希望を書いてください」といった発言について、改めて否定しました。
しかし、「いい加減なことばかりして」「4年間、何もしない」など対面でのやり取りについては、「一字一句覚えているわけではないが、そういう内容・主旨の話をしたのではないかと記憶している。その場では、お互い大きい声を出し合うような状態になってしまい、大きい声を出したことについては謝罪したつもりです」と、吉岡課長との間で“言い合い”になったことは認めました。
また、“いい加減なこと”とは何かと聞かれた際には、「(吉岡課長から)契約解除すれば違約金を受け取れなくなるというような、虚偽の説明をされていたということ。また、民間企業に対して、吉岡課長が『私が間に入って市長が反対するのを抑え込んであげているんだ』というような発言をしていた。非常に当時、つらい悲しい思いをした」と証言しました。
さらに、発端となった民間業者との契約を解除するよう職員に指示したことについては、「(複合施設は)5年近く中心市街地に“負の遺産”として残っているような状態で、それを解決するのが、私の市長選挙の重要な公約でもありました。ですので、契約不履行を起こした事業者とは速やかに解除すべきだ、という指示を出しました」と話しました。
■市長の“パワハラ問題” 識者の見解は?
Q.予算と人事権を握っている市長が、実際に「処遇も考える」「異動希望を書いて」と言っていたとしたら、パワハラになりますか?
(弁護士・亀井正貴氏)
「精神的苦痛を与えるような行為にはなり得ます。ポイントは、業務命令自体が正当なのか、つまり解除要件を満たしているのかという問題と、そのやり方・説明の仕方の問題です」
Q.「異動希望を書いて」という言葉だけでは、パワハラとは認定されないということですか?
(亀井氏)
「これは微妙なところで、例えば『業務命令に違反すれば一般的にはこうなる』という説明を冷静にしていれば、話は別です。業務命令の妥当性もパワハラ認定の一つの要素なので、もちろん問題となります。ですが、自分の判断で“どこかに飛ばすぞ”というニュアンスを出しているところが問題で、結構きわどい事実認定になってくると思います」
Q.音声などがなく、「市長がこう言っていた」と複数人から話が出てきた場合でも、証拠になりますか?
(亀井氏)
「証拠の問題については、録音が一番大切です。伝聞の場合は、よほどのことがない限り…。なので、今回の件は微妙なやり取りです。処遇の問題についても、一般的に業務命令に違反すれば何らかのペナルティーを受けるわけだから、普通に説明すれば何も問題なかったかもしれません。相当しっかりした証拠がないと認定は難しいのではないかと思います」
Q.市長など特別職のガイドラインはあるんですか?
(法政大学大学院・白鳥浩教授)
「パワハラに関しては、首長などの特別職には罪刑法定主義の原則というものがあり、一般職員向けのパワハラ規定が直接適用されない側面があります。ですから、兵庫県の斎藤知事も当たらないという事例があり、なかなか難しい状況になっているんだろうと思います」
Q.虚偽の説明があったことや、吉岡課長が「私が市長と話つけてあげるから」みたいなことを言っていることについては、どう考えますか?
(弁護士・野村修也氏)
「どこの自治体もそうなんですが、市長などの“急に来たトップ”に指示を出されると、職員の中には『今までやってきたことを全否定される』という強い抵抗が生まれる人もいます。それを“パワハラ”と言って対抗してくる図式になりかねない背景があります。また、選挙で選ばれた人には基本的に対抗馬がいて、職員の中には、そちらを支持していた人もいます。一般論としてですが、選挙で決まったトップが不祥事等を見つけ出されて、追い出されていく可能性は、常にリスクとしてはあるということです」
(白鳥教授)
「稲森氏は現職を落として当選しています。だから、これまでの行政とは違うことをやり始めていて、そこが市職員としては政治的にどうだったのかという部分もあるかもしれません」
Q.百条委員会で結論は出るのでしょうか?
(亀井氏)
「事実認定の問題なので、微妙かなと思います。本来、百条委員会も第三者委員会も、市長の適正などを論点とした上でパワハラを認定するならいいんですが、制度として、今回はどうかなとは正直思います」
(白鳥教授)
「第三者委員会も百条委員会も基本的には法廷でも警察でもないので、その調査には限界があります。結論に対しては法的な拘束力がないということは、知っておかなければいけないと思います」
《カウンセラー松川のコメント》
拙ブログ8月25日付け記事
「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: ▼伊賀市長“パワハラ”で証人喚問 「異動希望書いて」発言あった? 真実は?主張は対立
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