2020年9月3日木曜日

若手への暴行や嫌がらせ横行 板野東部消防本部 懲戒処分せず批判も【詳細版】

若手への暴行や嫌がらせ横行 板野東部消防本部 懲戒処分せず批判も【詳細版】

 

2020年9月3日(木) 徳島新聞

 

 藍住、北島、松茂の3町を管轄する板野東部消防組合消防本部で、40代の複数の消防士が20代の若手消防士に対して暴行や暴言などの不適切な行為を繰り返していたことが徳島新聞の取材で分かった。若手消防士は顔をたたかれたり足を蹴られたりしたほか、業務ではない指示を受けるなどしていた。消防本部は一部について内部調査を行って事実を確認したが、「被害者が望まなかった」などとしてパワーハラスメントによる懲戒処分をしていない。関係者の間では「隠蔽(いんぺい)された」と批判の声が上がっている。

 

 関係者によると、42~49歳の消防士4人が今年に入り、同じ班の20代の消防士1人に対し、私生活についてしつこく尋ねたり家庭環境をやゆするような呼称を使ったりした。また、業務とは関係がない場所の写真を撮影してくるように指示し、従わなかったところ叱責(しっせき)。食事を作っている最中に頭などを繰り返したたくこともあった。

 

 若手消防士は精神的苦痛に耐えかね、5月から休職し、一時は通院。消防本部は事実関係を調査し、約1カ月後に職場に復帰した若手消防士を別の班に異動させた。川脇稔消防長は4人を口頭注意処分としたものの、懲戒処分は見送った。

 

 別の班で勤務する消防士(45)は4月、出動先から帰署した直後の救急車の中で、別の20代の消防士1人が仕事でミスをしたのに対し、声を荒らげて激しく叱責。その際、顔を右手でたたいた。さらに、ミスに関して事実とは違う話を他の消防士に流布。この後、20代消防士は救急隊に組み込まれない日が増え、意図的に業務から外されている。

 

 この45歳の消防士は、2017年2月にも別の20代の消防士1人に激しい暴行を加えた。出動先から戻った直後、救急車から降りた20代消防士の足を蹴って突き倒し、覆いかぶさるようにして暴行。さらに、胸ぐらをつかんでフェンスに押し付け、約2メートル下の用水路に頭から転落させかけたほか、屋外などで1時間にわたって正座させた。

 

 消防本部ではベテランから若手への「指導」と称し、不適切な行為が横行しているという。関係者は「若手が萎縮し、業務に集中できていない」と訴えている。

 

 川脇消防長は「アンケートを行って実態を把握したい。全職員を対象にハラスメントについての講習会を開くことも考える。安心して相談できる窓口も作りたい」と話している。

 

 消防本部は、第1消防署(北島町北村)と第2消防署(藍住町笠木)を拠点とし、消防士約90人が所属している。

 

■懲戒なし「被害者が望んでいない」 幹部にインタビュー

 川脇稔消防長ら幹部4人が徳島新聞の取材に応じた。主なやりとりは以下の通り

 

 記者
「消防士1人が家庭環境をやゆされるなどの嫌がらせを受け、病気休暇を取得している。なぜ苦情処理委員会を開催し、懲戒処分を検討しないのか」

 

 川脇消防長
「本人(被害者)と話した結果、そこまで望みませんということだった」

 

 記者
「別の消防士1人は顔をたたかれる暴行などを受けている。事実は把握しているか」

 

 川脇消防長ら
「もっとしっかりせないかんという意味で頭(ヘルメット)をたたいたと聞いている」

 

 記者
「要するに激励ということか」

 

 川脇消防長ら
「憎しみはなかった。本人(被害者)が失敗したと。それぞれ調査をした結果、本人(被害者)が懲戒処分を望まなかった。本人(加害者)と上司に厳重注意し、ここまでしたらいかんということは伝えた」

 

 記者
「3年前、別の消防士が殴ったり蹴ったりされ、長時間正座させられたケースもあった」

 

 川脇消防長
「内容は把握していない」

 

 記者
「同じ加害者による被害が相次いでいる」

 

 川脇消防長
「職員全員に対し、ハラスメントは何かということについて勉強する講習会を開こうと思う。アンケートも行い、実態を把握したい」

 

 記者
「パワハラを懲戒処分しないことで、組織内に不満がたまっているようだ」

 

 川脇消防長
「安心して相談できる窓口を作りたい」

 

■隠蔽体質指摘する声 他県では賠償命令も

 消防組織は階級社会で男性中心の職場であり、大規模な異動がないため、人間関係が固定化しがちだ。こうした職場の特性もあり、消防職員のパワハラを巡っては自殺者が出るなど深刻なケースが多い。消防庁が対策を講じているものの、実態は一向に改善していない。

 

 職場のハラスメント研究所(東京)の金子雅臣所長は「体質的な根深い問題」と指摘する。パワハラが無くならない原因として、上司が責任を問われるのを避けるために口頭注意程度で済ませる隠蔽体質があると言い、「第三者の目が入らない限り、出口はない」と問題視する。

 

 板野東部消防組合の内規では、パワハラが疑われる事案があった場合は「ハラスメント苦情処理委員会」を開いて事実を確認すると明記。事実と認定されれば、加害者に戒告以上の懲戒処分を下すよう定めている。しかし、今回発覚したケースはいずれも「被害者が懲戒処分を望まなかった」などの理由で、委員会すら開かれていない。

 

 関係者は「幹部が保身に走っている。他県の事例では板野東部より軽い事例で懲戒処分が出ている。隣接する鳴門市や板野西部でも過去に懲戒処分があった。板野東部だけ体質が変わらない」と嘆く

 

 似たケースでは、高知県の高幡消防組合消防本部の消防士が職場でパワハラを受けたとして、組合を訴えた裁判がある。今年3月、高知地裁はパワハラを認定し、消防士2人への賠償金の支払いを命じる判決を出した。

 

 判決によると、須崎消防署副署長は、休暇中の同僚への連絡を拒否した部下に怒り、部下のひざの上に靴を脱いだ足を置いた。15年には別の消防士を署内で正座させて叱責し、ペットボトルを投げ付けた。高知地裁はいずれの行為も「業務上の指導の範囲を逸脱し、社会通念上違法だ」と認定した。

 

 金子所長は、板野東部消防組合の事案が裁判でパワハラと認定されるかどうかについて「個別の事実関係があり、判定は難しい」とした上で、「身体的、精神的な攻撃、過剰な要求、業務の適正な範囲を超えた命令などのパワハラ行為に該当し、アウトになる(パワハラに認定される)可能性が極めて高いとは思う」と言っている。


《カウンセラー松川のコメント》

明らかな[脳筋]連中による虐めです。
この記事で着目したいのは、事案内容も当然ですが、
それ以上に記者と消防長との質疑応答です。
「さすが地元紙だけのことはある」と感心しました。
そして記者の質問に対して、
消防長の回答が如何にその場を取り繕おうとしているか如実に表れています。
ハラスメント行為による処分者が出れば、
それは回り回って管理監督者の責任問題にも発展し、
最終的には消防長自身にも及びことを恐れているのが分かり易いです。
組織のトップが保身に走れば、不祥事も揉み消されるか、
トカゲの尻尾切りで済ますかのどちらかです。
ハラスメントの被害者は組織内で立場の弱い者が多いですから、
下手にトカゲの尻尾を切るよりは、揉み消し工作を図った方が得策です。
それが今般の事案とその後の経緯となっています。
こんなトップが居る限り、職場の健全化は無理ですが、
トップも何か後ろめたい事をしているのでしょうね。

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