2024年1月17日水曜日

▼市議に何度も陳謝求めた議会の対応「違法」 市に賠償命じる判決

市議に何度も陳謝求めた議会の対応「違法」
 市に賠償命じる判決

 

20224年1月17日() 12:22 毎日新聞(木谷郁佳、浜名晋一)

 

 議場での陳謝を拒んだことを理由に議会への出席停止を決めた奈良県香芝市議会の対応は違法だとして、青木恒子市議(69)=共産=が国家賠償法上の被告である市に330万円の支払いを求めた訴訟で、奈良地裁は16日、33万円の賠償を市に命じた。寺本佳子裁判長は「議会に与えられた裁量権の逸脱・乱用に当たる」と違法性を認め、議会の対応を非難した。

 

 ◇裁判長「裁量権の逸脱・乱用」

 

 市議会は青木氏が川田裕議長を侮辱したなどとして2022年2月から9月にかけて、懲罰に当たる陳謝処分を5回にわたって出した。青木氏は陳謝文の読み上げを繰り返し拒否。議会は同年12月、陳謝よりも重い処分の出席停止(4日間)を決めた。訴訟では、これらの議会の対応が適法かどうかが問われた。

 

 青木氏は国民健康保険料の納付相談で市民に付き添って窓口を訪れたことについて、川田議長から「政治倫理条例の観点で問題がある」と指摘された。この発言に「パワハラのように聞こえた」などと反論。一連のやりとりが議長への侮辱と一部議員に捉えられ、陳謝処分を科されることになった。判決はまず、この陳謝処分の妥当性について検討した。

 

 青木氏が朗読を求められた陳謝文には、懲罰を科すかを決める審査で他の議員が時間を割かれたことなどについて謝罪する内容が含まれていた。寺本裁判長はこうした記載について「処分理由ではない言動があたかも懲罰の対象であるかのように受け止められ、社会通念上、相当ではないことは明らか」と指摘。陳謝文の朗読を青木氏が拒否したことも「議会の内部規律と品位の保持を損なうものではない。(あったとしても)その程度は極めて低い」とし、朗読拒否を理由に何度も陳謝を求めた議会の対応は違法と結論づけた。

 

 その上で、違法な陳謝処分を根拠とした出席停止処分も、議会の裁量権の乱用に当たると判断。処分議案に賛成した議員らは、少なくとも過失があったとした。

 

 市側は過去の判例を基に、陳謝処分の適法性については司法が判断すべきでないと主張し、棄却を求めていた。しかし判決は「出席停止の適法性について、(根拠となった)陳謝処分の適法性や相当性を審査しなければ、議会の合理性などについても的確な審査ができない」とし、市側の訴えを退けた。

 

 青木氏に対して市議会は22年8月にも同様の理由で8日間の出席停止処分を科した。この際、青木氏側の仮処分申請に基づいて地裁は出席停止処分の差し止めを命じ、裁量権の範囲を超えていると指摘していた。

 

 判決後に奈良市で記者会見した青木氏は「『侮辱』と言われ、納得できなかった。訴えが認められて良かった」と話した。代理人の一人、古川雅朗弁護士は「意図的に陳謝処分が繰り返され、従わなければ出席停止処分にされた。陳謝の段階から懲罰の趣旨を超えていると裁判所は判断しており、評価できる判決だ」と語った。

 

 香芝市の福岡憲宏市長は「被告は香芝市だが、内容は市議会にかかることなのでコメントは差し控える」。市議会の川田議長は「判決内容を見ていないので、コメントできない」と話した。

0 件のコメント:

コメントを投稿