2020年12月17日木曜日

マタハラ被害、熊本県内でも 妊婦への嫌み、退職強要… コロナで深刻化懸念

マタハラ被害、熊本県内でも 妊婦への嫌み、退職強要… コロナで深刻化懸念

 

2020年12月17日(木) 14:03 熊本日日新聞(豊田宏美)

 

 妊娠・出産や育児を理由に職場で嫌がらせを受けたり退職を強要されたりするマタニティーハラスメント(マタハラ)に関する被害相談が県内でも絶えず、コロナ禍で深刻化する恐れも指摘されている。企業の労務管理に詳しい専門家は「多様な人材が活躍できる職場に」とマタハラ防止を呼び掛ける。12月は国が定める「職場のハラスメント撲滅月間」。

 

 熊本市の事業所に勤める30代の女性は、今年の夏に第1子の妊娠が判明。つわりが重く不正出血もあったため、立ち仕事が多く、重い荷物を運ぶこともある担当業務を変更できないか女性上司に相談した。すると、上司に「そんなにきついの? 私もつわりはきつかったけど、仕事はちゃんとしてた」と言われたという。

 

 人事担当者に相談したが、秋には立ち仕事が多い別部署への異動を命じられた。その頃に切迫流産し、1カ月休職。幸い大事に至らず復職できたが、上司からは「その程度のことで休んだのか」と嫌みを言われたという。その後、デスクワーク中心の仕事に替わったものの、女性は「上司がとがめられることは一切なく、社内でマタハラが許容されていたことが悔しい。マタハラは許されないことだという認識と防止策が、社会全体に広がってほしい」と訴える。

 

 熊本労働局雇用環境・均等室によると、県内のマタハラに関する相談は2019年度47件(前年度比4件増)。育児休業取得に対する陰口が多いという。また、妊娠・出産を理由にした雇い止めなど「不利益取り扱い」に該当する可能性のある事案も49件(同16件減)あった。不利益取り扱いが確認された場合、同室は事業主に指導し、改善されなければ罰則として事業所名を公表する。ただ、公表に至る例はほとんどない。

 

 今年はコロナ禍で会社の経営が厳しくなったとして、育休中の女性が雇い止めに遭う事例も出ているという。

 

 厚生労働省が15年に初めて実施したマタハラ調査では、妊娠・出産した派遣社員の48%、正社員の21%が「マタハラを経験した」と回答し、とりわけ立場の弱い人が嫌がらせの対象になっている実態が明らかになった。

 

 出産・育児に関係する主な法律は、労働基準法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など。社会保険労務士の金子洋子さん(65)=熊本市=は「事業主には、職場でマタハラを含むハラスメントが起きないよう就業規則への明記や研修が求められている」と言う。

 

 マタハラに当たる発言例としては、「時間外労働をしないのなら昇進しないと思え」「短時間勤務で早く帰れていいね」など。妊娠中の従業員に「具合が悪そうだけど大丈夫?」と気遣うのは問題ないが、「つわりがひどいなら辞めればいいのに」と言えばマタハラになる。

 

 「同じ趣旨のことを伝えるとしても、一方的に『こうしなさい』と言うのはハラスメントに当たる」と金子さん。育休取得を申し出た男性に「男が育休なんてあり得ない」と言うのも完全なハラスメントだ。

 

 金子さんは「少子高齢化の中で会社が人材を確保し生き残るためには、社員同士が助け合う労働環境が欠かせない。妊婦側にも、産休や育休に入る前に業務の引き継ぎをきちんとするなどの配慮が必要で、後に続く人が育休を取りやすくなるよう努めてほしい」と話している。


《カウンセラー松川のコメント》

「女性の敵は女性」と言われることもありますが、それを体現した事案ですね。
パワハラ、セクハラ、マタハラ。どれでも女性が加害者にもなることを
改めて認識しました。
さて、中小事業所の責任者にとって頭の痛い問題の一つに、産休育休があります。
産休育休の使用は労働者の正当な権利行使なので妨害する訳にはいきません。
しかし、特定の従業員が一年以上も自己都合で休むのですから、
人員に余裕が無いとなると欠員分の補充をしなければなりません。
当然、余計な出費となりますし、その出費に対する公的支援はありません。
同じ部署で仕事をしている人ならば、業務量の負担増となる場合もあります。
産休育休を使用している時点では、
休んでいる本人以外には何の恩恵も無いどころか余計な負担が増える場合もあります。
そんな背景がありますので、マタハラは抑止し難いのです。
マタハラを擁護する訳ではありませんが、この様な背景を解消しない限り、
産休育休への無理解やマタハラは無くならないでしょう。

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