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2025年7月25日金曜日

▼不調抱え仕事、7兆円の損失 メンタル面、横浜市大など試算

不調抱え仕事、7兆円の損失 メンタル面、横浜市大など試算

 

2025年7月25日() 17:58 共同通信

 

 国内の労働者がメンタル面の不調を抱えながら働くことによって、年間7兆円超の経済的損失が生じているとの試算を、横浜市立大などの研究チームがまとめた。

 

 チームによると、不調で仕事のパフォーマンスが低下することによる損失額を全国レベルで示したのは初めて。65歳未満の精神疾患にかかる医療費(約1兆円)の7倍に相当し、行政や企業による一層の支援が必要だとしている。

 

 チームは2022年、全国の2074歳の労働者約27500人を対象にしたインターネット調査を実施。「気分が沈む」「眠れない」といったメンタル面の症状や、こうした症状による仕事への影響などを尋ねた。

 

 症状がある期間の仕事の「量」と「質」の低下度合いをそれぞれ11段階で評価してもらい、症状が出た日数や、性別・年齢別の就労率、平均日収を加味して損失額を算出したところ、約73千億円に上った。

 

 年代別で症状があると答えた人の割合が最も高かったのは、女性では2529歳(9.5%)、男性では3034歳(8.1%)だった。


《カウンセラー松川のコメント》

就業者がメンタル不調による経済的損失について、
この様に数字として計上されるのは、分かり易いと思います。
経営者も試算とは言え、大きな損失を防ぐ為にも
メンタルヘルスの重要性について気がついて欲しいです。


2025年7月19日土曜日

ストレスチェックで職員十数人「異常に高い」…上司2人組のパワハラが発覚、懲戒処分に

ストレスチェックで職員十数人「異常に高い」
…上司2人組のパワハラが発覚、懲戒処分に

 

2025年7月19日() 11:08 読売新聞

 

 奈良県大和高田市は18日、部下の放射線技師に業務上必要な範囲を超える 叱責(しっせき )をするパワーハラスメントを行ったとして、市立病院技術局の局長(58)と同局放射線技術科の技師長(52)を減給10分の12か月)の懲戒処分にした。

 

 発表では、2人は201811月、同科の会議でほかに2人が同席する前で技師に対し、「辞めさせるぞ」などと発言した。

 

 毎年実施するストレスチェックで23年、十数人の同科職員が異常に高いストレスを示したことから、アンケート調査を行ったところ、パワハラが発覚した。局長と技師長は18年当時、技師長と係長で、その後もパワハラ行為が繰り返されていた可能性もあるという。



※ 他社のニュースも掲載致します

大和高田市立病院 パワハラ行為で技術局長ら2人を減給処分

 

2025年7月22日() 18:54 奈良テレビ

 

 大和高田市は、市立病院で部下に対しパワハラ行為を行ったとして、58歳の男性技術局長ら2人を懲戒処分にしたと発表しました。

 市によりますと、2018年に2人は、当時1年目だった放射線技師に対し、その場にいた他の放射線技師2人の前で、「辞めさすぞ」などと発言したといいます。2023年に行ったストレスチェックで放射線技術科のみ高ストレスという結果の職員が多かったため、ヒアリングを行った際に発覚し、病院がパワハラと認定しました。市は18日付で2人を減給10分の1、2カ月の懲戒処分としました。


《カウンセラー松川のコメント》

ストレスチェックは法制化され、形骸化する可能性も秘めていますが、
大和高田市ではストレスチェックを活用し、
パワハラ加害者に対する処分を行いました。
邪推の域を超えませんが、
内部通報等により当局が各種資料を精査した結果かも知れませんが・・・
どちらにしても、ストレスチェックが機能したと言う事実は残りましたので、
制度としては「結果良し」と言えるのではないでしょうか。

被害者の皆様へ
解決までに7年を要してしまいましたが、
加害者が処分されたことで、一旦は落着としましょう。
そして、再発したならば加害者は違ったとしても、
然るべき部署に相談や訴えをしてください。
健全な職場環境は全員で築くものです。

2025年7月18日金曜日

精神障害の主な原因は「上司からのパワハラ」 厚労省が公表した労災認定データ

精神障害の主な原因は「上司からのパワハラ」 厚労省が公表した労災認定データ

 

2025年7月18日() 8:17 北陸放送

 

働きすぎによる健康被害が後を絶ちません。厚生労働省は、2024年度の「過労死等」に関する労災補償状況を取りまとめ、公表しました。

 

「過労死等」とは、過重な業務による脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスを原因とする精神障害、あるいはそれらによる死亡を指します。

 

今回の集計では、過労死等に関する労災請求件数が4,810件に上り、前年度に比べて212件増加しました。さらに、労災保険給付の支給決定件数は1,304件と、前年度から196件増加しています。このうち、死亡・自殺(未遂を含む)の件数は159件で、前年度比21件の増加となりました。

 

今回の結果から、現代社会における労働環境の厳しさ、そして働く人々にのしかかる重圧が依然として深刻であることがうかがえます。

 

■月80時間以上の残業が分岐点。脳・心臓疾患の労災、最多は50代・トラックドライバーなどの運輸業

 

業務による過重な負荷が原因とされる脳・心臓疾患に関する労災補償状況を見ると、2024年度の請求件数は1,030件で、前年度から7件増加しました。このうち、支給決定件数は241件で、前年度比25件の増加となっています。また、支給決定件数における死亡件数が67件に上り、前年度から9件増加しました。

 

業種別の傾向では、特に「運輸業、郵便業」での請求件数が213件、支給決定件数が88件と、いずれも最多となっています。これは、長距離・長時間労働が常態化しやすい「道路貨物運送業」が、請求件数155件、支給決定件数76件で最多であったことからも裏付けられます。 職種別では「輸送・機械運転従事者」が請求件数177件、支給決定件数75件で最多となり、業務の特性がリスクに直結している現状が浮き彫りになっています。

 

年齢層では、「5059歳」の請求件数が411件、支給決定件数が129件で最も多く、次いで「60歳以上」、「4049歳」が続きます。中高年層が脳・心臓疾患のリスクにさらされやすい状況が示されています。

 

また、時間外労働時間別に見ると、支給決定件数では、1か月評価期間で「100時間以上〜120時間未満」が18件と最も多く、26か月平均評価期間では「80時間以上〜100時間未満」が63件で最も多くなっています。これは、いわゆる「過労死ライン」を超える時間外労働が、脳・心臓疾患の発症に深く関与していることを示唆しています。

 

■【40代が最多】心の病、最大の引き金は「上司からのパワハラ」。業種別では医療・福祉で顕著

 

仕事による強いストレスが原因で発病する精神障害に関する労災補償状況では、2024年度の支給決定件数が1,055件と、前年度から172件増加し、初めて1,000件を超えました。未遂を含む自殺の支給決定件数も88件で、前年度比9件の増加となりました。

 

業種別では、「医療、福祉」が請求件数983件、支給決定件数270件と圧倒的に多く、中でも「社会保険・社会福祉・介護事業」が請求件数589件、支給決定件数152件で最多となっています。人手不足や重い責任が背景にあると推測されます。次いで「製造業」「卸売業、小売業」が上位を占めています。

 

職種別では「専門的・技術的職業従事者」が請求件数1,030件、支給決定件数300件で最も多く、次いで「事務従事者」「サービス職業従事者」が続いています。

 

年齢別では「4049歳」が請求件数1,041件、支給決定件数283件で最多となり、働き盛りの世代が精神的な負荷を抱えている現状が見て取れます。

 

精神障害の発病に関与した出来事(心理的負荷の強度を評価する事象)を見ると、支給決定件数において以下の項目が上位を占めています。

・「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」:224

・「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」:119

・「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」:108

 

特にパワーハラスメントが、精神障害の原因として突出して多いことが判明しました。これは、職場内の人間関係やハラスメント対策が喫緊の課題であることを示しています。

 

■「副業」や「裁量労働」にも潜むリスク。見えにくい“合わせ技”の過重労働とは

 

現代の多様な働き方が広がる中で、これまでとは異なる形で見過ごされがちな新たな過重労働のリスクが浮上しています。それが、複数の職場で働く「副業・兼業」や、労働時間管理が個人に委ねられる「裁量労働制」における過労の問題です。

 

■「副業・兼業」が引き起こす見えない過労

 

近年、働き方改革や個人のキャリア形成の多様化により、副業や兼業といった複数の職場で働くスタイルを選ぶ人が増えています。しかし、それぞれの職場の労働時間やストレスが単独では過重でなくとも、合算されることで労働者の心身に大きな負荷がかかるリスクが顕在化しています。これを評価するために設けられたのが「複数業務要因災害」という概念です。

 

「複数業務要因災害」とは、事業主が同一ではない二つ以上の事業に同時に雇用されている労働者について、全ての就業先での業務上の負荷を総合的に評価することにより、傷病等との因果関係が認められる災害を指します。つまり、一社での労働時間が短くても、他の職場の労働時間と合わせると、いわゆる「過労死ライン」を超えるような過重労働になっているケースも含まれています。

 

「複数業務要因災害」については、脳・心臓疾患の支給決定件数が6件(前年度比1件増)、うち死亡が3件(前年度比2件増)でした。精神障害の支給決定件数は2件(前年度比2件減)、うち死亡が1件(前年度比1件増)でした。 企業側だけでなく、労働者自身も、自身の総労働時間やストレス負荷を客観的に把握し、適切な自己管理を行うことの重要性が改めて問われています。

 

■「裁量労働制」の陰に潜む過重な責任と負荷

 

一方、労働時間配分を労働者の裁量に委ねることで、効率的な働き方を促すとされる「裁量労働制」においても、過労死等のリスクが確認されています。この制度は、専門性の高い業務(専門業務型)や企画立案などの業務(企画業務型)において適用されますが、その「裁量」が時に過度な自己管理と責任を伴い、結果的に長時間労働に繋がりやすい側面も指摘されています。

 

「裁量労働制対象者」に関する労災補償状況では、脳・心臓疾患で4件、精神障害で4件の支給決定が確認されています。

 

企業は、裁量労働制を適用する労働者に対しても、単に制度を導入するだけでなく、実態として業務量が過大になっていないか、過重なストレスがかかっていないかなどを定期的に確認し、適切な健康管理や業務量の調整、ストレスチェックの実施など、心身の健康を守るための具体的な配慮を怠ってはなりません。

 

■誰かの悲劇で終わらせない。過労のない社会を実現するために

 

今回の厚生労働省の公表データは、現代の労働環境において、過労やストレスに起因する健康問題が深刻化の一途をたどっていることを明確に示しています。特に、運輸業における長時間労働や、医療・福祉現場での精神的負荷、そして職場でのハラスメントといった問題が、多くの労働者の心身に大きな影響を与えている実態が浮き彫りになりました。

 

企業には、労働時間管理の徹底、ハラスメント対策の強化、そして従業員のメンタルヘルスケアへの一層の取り組みが求められます。また、私たち一人ひとりも、自身の健康を守る意識を持つとともに、職場で異変を感じた際には、迷わず相談機関や専門家に助けを求めることが必要です。誰かの悲劇で終わらせない。私たち一人ひとりが当事者意識を持ち、社会全体でこの問題に向き合っていく必要があります。


《カウンセラー松川のコメント》

ハラスメントの根絶は難しいです。
しかし、ハラスメントの発生対応は可能です。
それが出来ているだけでも、
「ハラスメント被害に遭った」との回答を軽減可能です。
要はトップがそして組織がハラスメントに対して向き合っているかどうか
それがハラスメントで問題として扱われるかに至ります。



▼時間外労働100時間超えも・・・名古屋市の男性教諭がうつ病で自殺 遺族が損害賠償請求 解決金5600万円で和解成立

時間外労働100時間超えも・・・
名古屋市の男性教諭がうつ病で自殺 遺族が損害賠償請求
 解決金5600万円で和解成立

 

2025年7月18日() 1:53 中部日本放送

 

名古屋市の男性教諭が自殺したのは長時間労働などによるものだとして遺族が損害賠償を求めた裁判は、市が5600万を支払うことで和解しました。

 

2016年、名古屋市立の中学校教諭だった当時36歳の男性は、うつ病を発症したのち自殺しました。男性は部活動の顧問などを務め、うつ病を発症する前の3か月間の時間外労働時間は月平均で100時間を超えていました。

 

男性の遺族は、学校側が長時間労働を把握しながら業務内容を変更するなどの対応を取らなかったとして、名古屋市と愛知県に約6900万円の損害賠償を求めていましたが、名古屋市が5600万円の解決金を支払うことで和解が成立しました。

 

名古屋市の杉浦弘昌教育長は「このような事態を招いたことは重く受け止めております。働き方改革を推進し、教職員の心身の健康、子どもたちが安心安全に過ごせる学校づくりに取り組んでまいります」とコメントしています。

2025年6月25日水曜日

精神障害労災、初の1000件 過去最多、カスハラ原因目立つ

精神障害労災、初の1000件 過去最多、カスハラ原因目立つ

 

2025年6月25日() 17:57 共同通信

 

 厚生労働省は25日、仕事によるストレスが原因で精神障害を発症し、2024年度に労災認定を受けたのは1055件(対前年度比172件増)だったと発表した。6年連続で過去最多となり、初めて千件を超えた。このうち自殺や自殺未遂に至ったのは88件(同9件増)。原因別で、初めて通年で集計したカスタマーハラスメント(カスハラ)が108件で、全体で3番目の多さだ。

 

 原因別の最多は「パワハラ」224件、次いで「仕事内容・仕事量の大きな変化」119件。カスハラは23年度から原因項目に追加され、7カ月分で52件だったが、通年の今回は、セクハラの105件を上回った。今回の108件中78件が女性だった。

 

 年齢別では、40283件、30245件、20243件と続く。業種別では「医療、福祉」270件が最も多かった。請求件数についても3780件(同205件増)で過去最多となった。

 

 

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仕事で心の病、過去最多 労災認定1055件 24年度

 

2025年6月25日() 18:15 時事通信

 

 厚生労働省が25日発表した2024年度の労災補償状況によると、仕事による強いストレスが原因となった精神障害の労災認定は前年度比172件増加の1055件だった。

 

 初めて1000件を超え、過去最多を更新した。

 

 原因では「上司からのパワーハラスメント」が224件と最も多く、次いで「仕事内容・仕事量の大きな変化」の119件。「顧客や取引先、施設利用者などからの著しい迷惑行為」のカスタマーハラスメントも108件に上った。

 

 

 

2024年度精神障害による「労災認定」が過去最多1055
 初の1000件超 「パワハラ」要因が最多 厚生労働省

 

2025年6月25日() 18:37 東京放送

 

仕事によるストレスが原因でうつ病などの精神障害を発症したとして、昨年度に労災認定されたのが1055件に上り、初めて1000件を超えたことが分かりました。

 

厚生労働省によりますと、昨年度、仕事によるストレスが原因でうつ病などの精神障害を発症し労災認定された件数は、前の年度から172件増えた1055件と過去最多となり、集計を始めた1983年度以降、初めて1000件を超えました。

 

要因としては、▼上司などからのパワーハラスメントが最も多く224件。次いで、仕事内容や仕事量の変化が119件、いわゆる「カスタマーハラスメント」が108件でした。

 

また、脳や心臓の病気で労災認定されたのは、前の年度から25件増えた241件でした。

 

 

 

「労災」申請・認定件数が過去最多 精神障害の認定は1000件超

 

2025年6月25日() 19:16 日本テレビ

 

長時間労働や心理的なストレスで病気になったり、自殺したりした場合に申請できる「労災」が申請件数、認められた件数ともに過去最多でした。

 

厚生労働省によりますと、昨年度、過重な労働や仕事での強いストレスで、脳や心臓の病気や、精神障害になったとして、請求された労災の件数は、過去最多の4810件でした。

 

このうち労災と認められ、補償が支給されたのは、同じく過去最多の1304件でした。また、精神障害の労災認定が1055件と初めて1000件を超え、原因別では「上司などからのパワハラ」が最も多かったということです。

 

厚生労働省は、「人間関係や仕事環境の変化で強い心理的負荷を感じる労働者が一定数いる」として、精神障害の増加の理由について早急に検証するとしています。


《カウンセラー松川のコメント》

便利な世の中になると共に生き難い世の中にもなっています。
「やった者勝ち」「何かをするとハラスメント」「明るい未来が見えない」
そんな中であれば、頑張る甲斐も無いでしょうから、
心の支えも生まれなくなるでしょう。
コロナ禍で世の中は悪い方に傾きましたが、それが完全には戻りません。
皆が楽な方へ向かうほど、実際は苦しい結果を生み出しています。
「政治が悪い」「経済が悪い」
それが原因かも知れません。
しかし、一人ひとりが「利他主義」となれば、
もう少し生き易い世界になるはずです。
世界的な動きとならなくても、せめて日本国内だけでも。


2025年6月20日金曜日

心身不調の経済損失、年7兆円超 生産性低下、認識されにくく 勤労者2.7万人調査・横浜市大など

心身不調の経済損失、年7兆円超 生産性低下、認識されにくく
 勤労者27万人調査・横浜市大など

 

2025年6月20日() 14:32 時事通信

 

 横浜市立大などの研究チームは20日までに、肩凝りや不眠など心身の不調を抱えたまま仕事を続けたことによる国内の経済損失額について、年間計約76兆円に上るとの研究結果を発表した。

 

 労働生産性の低下に伴うもので、2024年の名目GDP(国内総生産)の約1%に相当するという。

 

 世界保健機関(WHO)は、出勤しているのに心身の不調で業務効率が落ちている状態を「プレゼンティーズム」と提唱。見た目では仕事をこなしているように見えるため、企業や社会の損失として認識されにくい特徴がある。

 

 原広司・横浜市立大准教授らは22年、国内で働く約27千人を対象にインターネット調査を実施。メンタルヘルスに関する症状の回答などを踏まえた上で、経済的な損失額を推計した。

 

 その結果、プレゼンティーズムなどによる年間損失額は計76兆円。男性は労働力人口が多く平均収入も高い4549歳、女性は2529歳で最も損失額が多かった。

 

 心身の不調を抱える人の割合は、男性は3034歳、女性では2529歳が最も多い。20代女性は同年代の男性と比べて17倍高く、原准教授は「職場や生活環境の違いなど、複合的な要因が影響している可能性がある」としている。

 

 厚生労働省が22年に実施した国民生活基礎調査によると、病気やけがなどを抱える男女の自覚症状は、腰痛と肩凝りが上位を占めた。定年の撤廃や延長などで働くシニア世代も増えており、治療と仕事の両立支援は今後も重要になる。

 

 国は、従業員の健康の保持・増進に投資して業績向上に結び付ける「健康経営」を推進。運動や食生活の改善に取り組む企業や団体が増える中、原准教授は「健康を守ることは、働く人の尊厳を守るだけでなく、組織の持続的成長の基盤となる。その視点を多くの企業に共有してほしい」と話した。


《カウンセラー松川のコメント》

働く人の心身の不調は、その人が所属する組織へも悪影響を及ぼします。
それどころか、経済全体にも及んでしまうのですね。
健康は本人だけでなく、周囲や勤務先でも配慮し、対応する案件。
自己責任で完結させる訳にはいかない時代となりました。


2025年6月18日水曜日

▼宮崎県知事部局の精神疾患休職 最多75人 教職員は76人

宮崎県知事部局の精神疾患休職 最多75人 教職員は76人

 

2025年6月18日() 9:58 宮崎日日新聞

 

 2024年度に県の知事部局で精神疾患を理由に休職となった職員は75人で、過去10年で最多となったことが17日、分かった。県内市町村立小中学校、県立学校の教職員は計76人に上った。心の病からの復職や未然防止に向けて、県と県教委はメンタルヘルス対策に力を入れる。

2025年6月5日木曜日

「熊本こころの電話」 相談員確保に苦慮 高齢化や負担の重さが要因?

「熊本こころの電話」 相談員確保に苦慮 高齢化や負担の重さが要因?

 

2025年6月5日() 9:19 熊本日日新聞(藤山裕作)

 

「生きていてくれて良かった」。電話相談でつらい気持ちを和らげ、自殺防止に取り組む「熊本こころの電話」が、ボランティア相談員の確保に苦悩している。高齢化や負担の重さなどが要因とみられる。そんな中でもボランティアたちは相談者の悩みに寄り添い、受話器を持ち続けている。

 

 「少しは楽になったかな」

 

 熊本市の施設の一室。相談員の主婦(82)は、受話器の向こうの40代男性に優しく語り掛けた。男性は1人暮らしで自殺未遂をした経験があるという。以前からの相談者だが、久しぶりのやりとりだった。主婦は「命を絶たずにいてくれて本当に良かった」と語る。

 

 別の電話で対応していた主婦(63)は、元相談者。悩みを聞いてもらい楽になった経験からボランティアになった。「相談者の声のトーンが明るく変わった時がうれしい」と、やりがいを感じている。

 

 熊本こころの電話は1984年に開設し、熊本県精神保健福祉協会が年中無休で運営。約8カ月間の養成講座や実習訓練を経て、協会から「ボランティアカウンセラー」に認定される。これまでの認定者は計1504人に上る。

 

ボランティアカウンセラー同士が相談や悩みごとを互いに共有する「つぶやきノート」など

 

 ただ、新規認定者は年々減少傾向にあり、最も多かった86年度の65人に対し、2024年度は7人。年間の活動人数もピークの03年度は290人だったが、24年度は半数に満たない124人に減った。60代~80代が相談員全体の約7割を占め、高齢化が進んでいる。熊本こころの電話運営委員会は「このまま減ると、存続にも影響してくる」と危機感を募らせている。

 

 電話相談は午前11時~午後6時半にボランティアが3交代制で対応。受け付け可能な電話3台のうち、少なくとも常時2台を稼働させたいものの、1人で担当せざるを得ない場合も。1人当たりの相談が長時間に及ぶケースも少なくないが、途中で電話を切るのは難しい。ほかの電話が鳴り響いても受けきれないのが現状だ。

 

 職場のハラスメント、家庭環境、異性との悩みなど多様な相談を、メモを取りながら真剣に傾聴している。ただ、中には強い口調での批判や侮辱する言葉を発する相談者もおり、ボランティアのストレスとなるケースも。ボランティア同士の「交流ノート」「つぶやきノート」や、当番の際にミーティングの時間を設けるなどして相談員のケアにも力を入れる。

 

 運営委員会の上田啓司副委員長は「話を聞くことで孤立を防ぐ。混迷する世の中でかけこみ寺として果たす役割は今後も大きい。年間でボランティア150人ほどは確保したい」とし、協力を呼びかけている。熊本こころの電話☎0962856688


《カウンセラー松川のコメント》

各地の「いのちの電話」の相談員不足が問題となっておりますが、
熊本県内には「いのちの電話」とは別に「こころの電話」もあるのですね。
公益財団法人熊本県精神保健福祉協会が運営しています。
相談員になる為の研修もある様ですが、
受講料は必要なのでしょうか?
数万円の受講料を支払い、長時間の研修を受けた上に、
活動は全て手弁当では、成り手が減少するのも当然でしょう。
ボランティアの制度も大切ですが、
決して「ボランティアは無償」と決まってはいません。
保護司、民生委員、消防団員。どれも公設のボランティアですが、
全て構成員の善意で成り立っています。
しかし、成り手不足でも悩んでいます。
システムが破綻しない様に構築や再構築も必要だと思います。


2025年6月4日水曜日

災害時などのストレスから心の健康を守る「こころのサポート授業」  自分の心との向き合い方学ぶ 盛岡市

災害時などのストレスから心の健康を守る「こころのサポート授業」
  自分の心との向き合い方学ぶ 盛岡市

 

2025年6月4日() 16:06 岩手放送

 

2025年度、生徒が防災や震災復興について学んでいる盛岡市の中学校で4日、災害時などのストレスから心の健康を守るための特別授業が行われました。

 

授業が行われたのは、盛岡市の渋民中学校です。

渋民中学校は2025年度、生徒が防災や震災復興について学んでいて、4回目となる今回の授業には心の健康について研究する兵庫教育大学の冨永良喜名誉教授が招かれました。

 

災害に直面した場合、強いストレスからマイナス思考に陥るケースも多くありますが、冨永名誉教授は、自身の経験を信頼できる人に聞いてもらうことでストレスを和らげることができるとアドバイスしました。

 

4日の授業で生徒たちは、ストレス緩和に効果があるとされるストレッチも体験し、災害が発生した場合に備えて自分の心との向き合い方を学んでいました。


《カウンセラー松川のコメント》

若年者であっても惨事ストレスによる心身の不調は発生します。
そして、心身の不調は平時でも分かり難いですが、
大きな災害では個人の些細な変化は見落とされがちです。
だからこそ、専門家からの講習で、
少しでも自助や共助が出来る様になることは大変重要で
価値あることです。


2025年6月2日月曜日

▼メンタル休職ワースト2位の奈良県で「改善の兆し」 69人→49人

メンタル休職ワースト2位の奈良県で「改善の兆し」 69→49

 

2025年6月2日() 7:30 朝日新聞(阪田隼人)

 

 奈良県庁で2024年度に新たにメンタル不調で長期病休に至った職員は49人で、前年度の69人から3割減少したことが明らかになった。再発や前年度から続く病休者を含めると計120人で職員全体の332%。全国ワースト2位だった前年度(135人、379%)より改善した。

 

 県庁でのメンタル不調による長期病休者(30日以上)の割合は、全国の都道府県と比べて高い傾向にある。23年度までは3年連続でワースト2位、20年度以前はワースト1位が続いた。24年度の順位はまだ明らかになっていない。

 

 県は山下真知事の就任直後の235月に働き方と職場環境改革の推進会議を創設。暴言抑止のための通話録音機能や部下が上司を評価する「360度評価」の導入、メンタルヘルス対策の充実に取り組んできた。

 

 新たな長期病休者は、集計記録がある20年度以降は毎年度60人台で推移していたが、今回初めて40人台に減った。

 

 総務厚生センターの担当保健師は「職員のメンタル不調の状況は中長期的な視点での評価が必要だが、管理職や職員の意識も変化してきており、働き方改革の全庁的な取り組みによる成果の兆しと捉えたい」と話している。

 

■奈良県のメンタル不調による長期病休者の割合と年度ごとの新たな病休者数

2020年度 349%(ワースト1位) 62

2021年度 307%(ワースト2位) 60

2022年度 330%(ワースト2位) 63

2023年度 379%(ワースト2位) 69

2024年度 332%(?)       49

2025年5月31日土曜日

メンタルケア指針を教職員向けに策定 県教委、データで周知へ

メンタルケア指針を教職員向けに策定 県教委、データで周知へ

 

2025年5月31日() 15:20 琉球新報

 

 県教育委員会は30日、公立学校教職員向けのメンタルヘルスケアの指針「メンタルサポートガイドライン」を策定したと発表した。教職員に特化したメンタルヘルスのガイドラインは全国的にも例が少ないといい、県では初めての取り組みとなる。各県立学校や市町村教育委員会にデータで提供し、周知を図る。

 

 ガイドラインでは、心の不調に陥りやすい教員の職場環境の特徴などを説明し、メンタルヘルスの必要性を訴えているほか、心の不調の予防やケアについて、同僚や管理職、外部資源など5つの視点から説明している。医療機関や電話相談窓口の情報もまとめて掲載し、利用しやすくした。

 

 精神疾患の病気休職者が右肩上がりの教職員現場では、自分自身で心の不調に気づけないことや、対応方法が分からないことなども課題となっているという。

 

 メンタルヘルスにおける教職員現場の特徴として、児童・生徒や保護者などの感情に働きかけて仕事を進めることが求められ、やりがいを感じる一方で疲弊しやすい側面があるという。風邪などと同じように、早期に気づいて対応することが重要となっている。

 

 半嶺満県教育長は「自分の状態に気づいて具体的に対処ができる環境をつくっていきたい。先生方が内容を確認できる場を持ちたい。しっかり学校に周知していきたい」と話した。


《カウンセラー松川のコメント》

教職員の仕事量は増える一方の上に、些細な事で苦情を入れて来る保護者対応。
しかも、自分等だけの意見を押し込もうとする、所謂モンスターペアレンツ対応。
管理職も防波堤にはならず、担任に対応を一任する状態。
児童生徒の身体に悪意無く触れても「パワハラ」「セクハラ」に発展。
超過勤務が増えても、特例措置で満額支給はされない。
こんな環境では「メンタルヘルス不調が起きる土壌」と言えます。
指針を示すことも大切ですが、本来やるべきことは
メンタルヘルス不調が発生しない職場作りなのです。
指針を示したから職務完了ではありません。


2025年5月28日水曜日

「強くなければダメ」と苦しむ人に3つの「ほっと」…救急救命士、惨事ストレスの経験基に提言

「強くなければダメ」と苦しむ人に3つの「ほっと」
救急救命士、惨事ストレスの経験基に提言

 

2025年5月28日() 18:11 読売新聞(竹村文之)

 

 消防職員が業務改善のアイデアなどを発表する全国大会に、兵庫県の三田市消防署の救急救命士、三好結友(ゆう)さん(27)が近畿代表で出場する。提言するのは声をかけ合う職場環境の大切さ。職務で負った心の傷を、先輩らに打ち明けたことで克服した経験を基にしている。

 

全国大会を前に気持ちを高める三好さん(兵庫県三田市で)

 

 三田市初の女性消防職員として2019年に採用された三好さんが、心に変調をきたしたのは2年目の春。ドクターカーで駆け付けた死亡事故の現場だった。遺体の状況や、泣き叫ぶ家族の声、見物人の「早く助けろ」という怒号に動揺し、立ちすくんでしまった。

 

 無力感から自分を責め、「一人になるとフラッシュバックして涙が出た」といい、不眠や食欲不振が続くまま数か月間、勤務した。

 

 転機は心理カウンセラーと話す機会を得て、少し心が軽くなったこと。勇気が出て、職場の先輩にも苦悩を打ち明けたところ、親身になって聞いてくれた。「胸の内を吐き出す大切さを知った」。先輩とは何でも相談できる間柄となった。

 

 自身のしんどさが、災害や事件、事故などで受ける「惨事ストレス」によるもので、心の正常な反応だったことも知った。自責の念からも逃れられたという。

 

 私以外にも、強くなければダメだと葛藤に苦しむ職員は多いはず――。そう考えていた昨秋、「全国消防職員意見発表会」の希望者募集があり、手を挙げた。

 

 仕上げた原稿の題名は、「ほっトーク しませんか?」。ほっとする、放っておかない、温かい(ホット)と三つの意味を込めた。

 

 思いを打ち明ける座談会のような場を設け、安心できる雰囲気の醸成を勧める内容で、「仲間の気持ちに気付くきっかけになる」と強調。チームプレーや信頼関係の向上、ストレスケアにつながる効果を説く。

 

 4月に神戸市であった県大会では「誰だってつらい時はつらい」と訴える部分で「以前の自分に語りかけているような気持ちになった」。涙をこらえながら制限の5分間で発表し、県内各地区から集まった8人のうち最優秀に選ばれた。「他の発表者からも『感動した』と声をかけてもらい、伝わったんだと実感できた」と振り返る。

 

 530日に広島市で開かれる全国大会では、9支部から集まった計10人が、育児休業の取得や防火教育の大切さなどをテーマに語る。

 

 あの現場の情景は、今も目に浮かぶ。しかし、支えられている安心感を得て、前向きになれたという三好さん。「共感し、寄り添い合うことの重要性を伝えたい」と意気込んでいる。


《カウンセラー松川のコメント》

「心理カウンセラーと話す機会を得て、少し心が軽くなったこと」
心理職の一人として私もほっとしております。
そして、この様に誰かの支えになれた事は本当に良かったと思います。
県予選とブロック予選を勝ち抜いて来た職員が一堂に会しての大会。
是非、好成績を収めて頂きたいです。


2025年5月12日月曜日

心の病で労災申請、兵庫県内で過去最多 23年度122件 「パワハラ相談、年々深刻に」

心の病で労災申請、兵庫県内で過去最多 23年度122
 「パワハラ相談、年々深刻に」

 

2025年5月12日() 7:30 神戸新聞(千葉翔大)

 

 過重労働やハラスメントによって精神疾患を発症したとして、兵庫県内で労災を申請した件数が2023年度に122件あり、都道府県別の公表を始めた06年度以降で最も多かったことが、厚生労働省のまとめで分かった。兵庫では増加傾向が続き、10年前から7割近く増えた。自死を選ぶ事例もみられ、強い心理的な負荷を感じる職場環境が改めて浮き彫りとなった。

 

 うつ病など、精神疾患を巡る県内の申請件数は18年度に初めて100件を超え、近年は120件前後で推移している。都道府県別にみると、23年度は東京、大阪、愛知などに続き、兵庫県は8番目に多かった。

 

 申請件数が増加する一方、業務上疾病として、労災保険の給付が決まった労災認定は31件。うち2件は自殺(未遂を含む)に至ったケースだった。

 

 全国では、23年度の申請件数3575件、労災認定件数883件はともに過去最多。認定された労災の原因の内訳は都道府県単位で公表されていないが、全国集計では「パワーハラスメント」が157件で最多だった。また、23年9月には、精神疾患による労災の認定基準が改正。カスタマーハラスメント(カスハラ)が原因項目に追加されるなど、心理的な負荷の原因についても多様化している。

 

 過労死問題などに取り組むNPO法人「ひょうご労働安全衛生センター」(神戸市中央区)の西山和宏事務局長は「パワハラ行為の相談は年々、深刻になっていて、長時間労働も是正されていない。仕事で失われた命は取り返しがつかないと、社会に訴え続ける必要がある」と指摘している。


《カウンセラー松川のコメント》

2023年度なので、俗に言う「コロナ明け」の頃でしょう。
新型コロナウィルスの流行や過度の予防から、
人びとの心が荒んだり、コミュニケーションが疎遠になったりで、
ハラスメント被害やそれに伴う心身の不調の増加も続いていた時期です。
また、このコロナ禍の4年間程は、学校でも休校や団体活動の自粛があり、
団体行動について体験しない時期から直接に社会人となった方も多く、
その影響も少なくないと思います。
被害者対策とは別に、あと数年間は動向を注視する必要もあるでしょう。

2025年4月22日火曜日

「こころの救護法」で子供、友人の異変に気付きも 各地区代表の消防職員が意見発表【長崎県対馬市】

「こころの救護法」で子供、友人の異変に気付きも
 各地区代表の消防職員が意見発表【長崎県対馬市】

 

2025年4月22日() 11:15 テレビ長崎

 

消防業務に関する知識や意識を高めようと、消防職員による意見発表会が対馬市で開かれました。

 

今年の発表会は対馬市で開かれ、各地区の予選を勝ち抜いた代表11人が取り組むべき課題などについて意見を述べました。

 

平戸市消防本部の福田真生さん(25)は2024年、全国で529人の子供が自ら命を絶ったことに触れ、友達の異変に気付く方法を教える「こころの救護法」について発表しました。

 

福田真生さん(25

「実際に接し方、対処法について実技を用いて学んでもらう。そうすることで心の病に対する理解が深まり、早期発見、早期対応につながるのです」

 

福田さんは最優秀賞に選ばれ、424日、九州地区の大会に出場します。


《カウンセラー松川のコメント》

消防職員の意見発表会。
署内選抜から、県内選抜等を経て、全国大会へ臨む大きな行事です。
その意見発表会で自殺に関する心理の部分に触れたことが、
報道されるのも珍しいです。
若年者の自殺も大きな社会問題なので、その自殺を予防することは、
救急出場件数を抑止する点でも大切です。
どうか、全国大会まで進出し、好成績を収めて欲しいと願ってます。


2025年4月6日日曜日

長時間労働を苦に自ら命を絶った巡査 自殺から7年半で当時の上司が遺族に直接謝罪「恨む気持ちはもう一切ない」

長時間労働を苦に自ら命を絶った巡査
 自殺から7年半で当時の上司が遺族に直接謝罪
「恨む気持ちはもう一切ない」

 

2025年4月6日() 11:02 テレビ熊本

 

長時間労働が原因で2017年に自殺した玉名警察署の男性巡査の遺族に対し、熊本県警の幹部と当時の上司が328日に直接謝罪した。男性巡査が命を絶った日から7年半がたっていた。

 

5カ月間で月平均130時間の時間外労働

刑事を夢見て2012年に熊本県警の警察官となった渡邊崇寿巡査(当時24)。玉名警察署に勤務していた20179月に遺書を残して自ら命を断った。

 

自殺する直前の5カ月間の時間外労働は月平均130時間を超過。遺書には「死んで地獄にいくのも怖いですが、明日が来ることがもっと怖いです」とつづられていた。

 

渡邊巡査の遺族は20225月に「常軌を逸する長時間労働で自殺に追い込んだ。県警に安全配慮義務違反があった」として、熊本県に対し約7800万円の損害賠償を求める裁判を起こした。

 

202412月、熊本地裁は「長時間労働で精神疾患を発症し、渡邊巡査は自殺に至った」と認定。「時間外労働を削減するなどの措置を講じておらず、注意義務違反があった」として、熊本県に約6200万円の賠償を命じた。

 

原告代理人の光永享央弁護士は「原告の請求が全面的に認められた完全勝訴。判決文から、裁判所の県に対する怒りがにじみ出ている」と話した。

 

母・渡邊美智代さんは「遺書の中には『疲れたので休みます』と書いてあった。死ななければ、ゆっくり休めないほど追い詰められたことを証明できた。『きつかったね、ごめんね』という気持ちでいっぱい」と振り返った。

 

自殺から7年半 熊本県警が遺族に直接謝罪

被告の熊本県は控訴せず、判決が確定。熊本県警は「当時、勤務環境の整備が不十分だった」などとして責任を認め、遺族に直接謝罪する意向を示していた。

 

そして、渡邊巡査の死から7年半がたった328日、熊本県警の宇野晃警務部長らが遺族の自宅を訪れた。

 

熊本県警察本部の宇野晃警務部長は「勤務環境の整備が十分ではなく、尊い命を失わせてしまったことについて、心からおわび申し上げます。誠に申し訳ありませんでした」と、遺族に直接謝罪した。

 

母・美智代さんは「亡くなって丸7年がたちました。7年たたなければ県警からの言葉って聞けなかったのか。残念で仕方がありません。もっと前に聞きたかったです」と、声を震わせ訴えた。

 

また、母・美智代さんは2020年に公務員の労災に当たる『公務災害』に認定されたにもかかわらず、これまで県警から十分な説明はなく、「誰も寄り添ってくれなかった」と話した。

 

母・美智代さんは「尊い命が亡くなって崇寿の将来、未来がなくなりました。私たちには希望がなくなりました。こんなに長い間待たせたことを、私たちが納得するように説明してください。それが私たちの望みです」と話した。謝罪の場には当時の上司も訪れ、謝罪したという。

 

美智代さん「恨む気持ちはもう一切ない」

そして午後、遺族は会見を開き、母・美智代さんは「7年間思っていたこと、願っていたことがかなった日だった。『上司に謝ってほしい』とずっと思っていた」と、思いを述べた。

 

遺族の代理人弁護士によると、熊本県警はこれまで謝罪や適切な説明ができなかったことについて「公務災害認定を受けて謝罪し、責任を認めることもあり得たかもしれない。当時、そこまで踏み込めず、さらに4年以上、心労をかけた」とおわびの言葉を述べたという。

 

また、当時の上司は「亡くなったあの日から、一日たりとも渡邊刑事のことを忘れたことはありません。今後も一生、心に刻みながら生きていきます」と涙を流しながら謝罪したという。

 

母・美智代さんは「両手をついて、額を畳にこすらんばかりの態度で『申し訳なかった』と言ってもらえた。そこまで最後にしてくれたのは、私としてはうれしかった。崇寿とお父さんの遺骨は長い間、家にそのままにして、毎日一緒に過ごしてきた。区切りがついたのでちゃんとお墓に納めて供養していきたい」と話し、息子の自殺から一つの節目を迎えようとしていた。

 

母・美智代さんは会見で「当時の上司に直接、息子に謝ってほしかった。きょうはその気持ちが通じた。恨む気持ちはもう一切ない」とも話していた。


《カウンセラー松川のコメント》

拙ブログ2024年12月4日付け記事
「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: 巡査自殺、熊本県に6180万円賠償命令 地裁「当直は時間外労働」
これの続報です。
判決の確定は昨年のうちです。
そして、熊本県警としての謝罪は年明けての3月も終わる頃になっての謝罪。
しかも、県警のトップではなく、労務管理の最高責任者である警務部長。
実は、どこまでも本気で謝罪する気が無いのが、見え透いている感じです。
人ひとりの命が失われた事の重大さを認識していないというよりも、
「キャリア官僚である県警本部長には謝罪をさせられない」
そんな斟酌が働いているのでしょう。

2025年3月17日月曜日

救急現場に居合わせた「バイスタンダー」 救命率向上の役割担うも心身のケアに課題

救急現場に居合わせた「バイスタンダー」
 救命率向上の役割担うも心身のケアに課題

 

2025年3月17日() 18:44 産経新聞(塚脇亮太)

 

事件や事故、急病の現場に居合わせた「バイスタンダー」と呼ばれる一般人に対する精神的ケアのあり方が課題となっている。応急措置など現場での適切な行動が救命率を上げるといわれる一方、重圧にさらされ心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを発症するケースも多いからだ。バイスタンダーのケアのための制度を整える動きが出始めている。

 

総務省消防庁によると、令和5年の救急出動による現場到着までの平均所要時間は約10分。この間にバイスタンダーによる心肺蘇生などの応急措置が適切になされることで、救命効果が期待できるとされる。

 

現場に居合わせた場合、119番通報にとどまらず、状況に応じて胸骨圧迫や人工呼吸、自動体外式除細動器(AED)を使って電気ショックを与えるといった活動が求められる。各地の消防が、一般人向けの救命講習も実施している。

 

人の生死を分ける状況に直面した人が精神に過度の負担を受けることは想像に難くない。愛知県小牧市の救急救命士らが、高齢者の心停止現場に居合わせた福祉施設職員360人に行った調査(平成27年)によると、9割近くが応急処置後に何らかのストレス反応があったと回答。不安や後悔、無力感などを訴える声が目立ったという。

 

バイスタンダーの精神的な負担を軽減するための制度を構築する動きもある。東京消防庁や名古屋市では、応急手当てを行ったことによって、入院や通院が必要になったり、提訴されたりした場合などに金銭的な支援を受けられる保険制度を創設。静岡県焼津市と藤枝市を管轄する志太消防本部では、応急活動の不安や疑問に対応する相談窓口を設置している。

 

しかし、消防庁の調査(令和5年)によると、バイスタンダーの精神的ストレスに対し、ケアを行っている消防本部の割合は全国の約409%と半数未満。令和4年時点(383%)からは増えたが、十分とは言い難く、支援体制の整備が喫緊の課題となっている。


《カウンセラー松川のコメント》

消防も警察も民間人の協力に対して案外と冷淡な対応が多いです。
警察に至っては協力者への対応より自分達の対応を優先する場面も。
要するに
「市民は協力して当たり前。なんでも行政にやらせるな」
そんな感じを受けます。
救命措置にしても「要救助者が死ななければ感謝状贈呈」
しかし「死んでしまえば何もしない」これが当たり前。
それか、感謝カードと言うお守りにもならないカード渡されて終わり。
バイスタンダーだって何かが欲しい訳ではなく、
純粋な気持ちで対応しているのでしょうけど、
その善意に甘えすぎな部分も感じます。
せめて、こころのケアくらいはして欲しいですよね。


2025年3月4日火曜日

パワハラ相談窓口 匿名で相談可能も…結局求められる実名 未だに救急用資機材投げつけや「ぶっ殺す」などの暴言 2年前に多数のパワハラ行為発覚の今治消防

パワハラ相談窓口 匿名で相談可能も結局求められる実名
 未だに救急用資機材投げつけや「ぶっ殺す」などの暴言
 2年前に多数のパワハラ行為発覚の今治消防

 

2025年3月4日() 19:09 あいテレビ

 

パワハラ問題が相次いで発覚した今治消防。2年ほど前に設置したパワハラの相談窓口に、これまでに57件の相談が寄せられていたことがわかりました。ただ、取材を進めると、運用の問題点も見えてきました。

 

■約2年前にパワハラ問題が発覚 その後も繰り返される

 

今年1月、愛媛県にある今治消防の現役職員からあいテレビに寄せられた告発の手紙。

〜私は今治消防の職員です。約2年前の令和411月に今治消防のパワーハラスメントが問題となりました。〜

 

問題となった、そのパワハラ。

「お前はバカか。あほか」―――。

今治消防では、2年余り前、部下への暴力や暴言に加え、仮眠時間に筋トレをさせたり救急用のチューブを鼻から差し込んだりするなどのパワハラ行為が発覚し、問題となりました。

 

寄せられた手紙では、これ以降も今治消防でパワハラが繰り返されていて、部下に救急用の資機材や無線機を投げつけたり「ぶっ殺す」などの暴言をはいたりするなどの行為があったと指摘しています。

 

■相談窓口設置「匿名で相談できる」とされるも実名での回答を求める運用

 

今治消防は、2022年の11月にパワハラが問題となったことを受け、翌12月からハラスメント被害などに関する専用の相談窓口を設置しています。寄せられた情報は通常、消防の総務課が管理し、実際に被害を訴えるなど緊急性が高いと判断されれば、消防長など上層部と共有し対応を協議するということです。

 

あいテレビが取材したところ、この窓口には25日の時点で、計57件の相談や情報が寄せられていることがわかりました。ただ、消防によりますと「匿名で相談できる」とされているものの、聞き取りの中で相談者が実名を名乗って回答を求める運用となっていることから、やり取りの多くは、その時点で途絶えるということです。

 

臨床心理学の専門家は、相談窓口には何より匿名性が重要と話します。

 

人間環境大学  藤代富広教授

「まずは、連絡をしてきてくれた被害者とされる方の個人情報は、その窓口だけ

に留めて、加害者とされる人やその上司とかには絶対に漏らさないのが大前提」

 

その上で、外部の専門家を交えた相談体制を構築することが不可欠と述べました。

 

あいテレビが独自に入手した資料に記載されているのは、おととしの夏に実施された職場環境をめぐる調査では「早急な問題提起はなかった」と判断されています。しかし、現役の職員からあいテレビに告発の手紙が寄せらるなど、パワハラ被害を訴える声は途絶えておらず、相談態勢の実効性が問われています。


《カウンセラー松川のコメント》

拙ブログ同日(3月4日)付け記事
「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: 「ぶっ殺すぞ」消防署でパワハラ発覚後も止まず… 救助に駆け付けた民家でも、住民の前で無線機投げつけ暴言か 現役署員から告発の手紙 愛媛県・今治消防
これの続報です。あいテレビは地元局として今治消防の問題を報じ続けてます。
匿名で相談出来る体の窓口でありながら、相談を進めると名乗りが必要になる。
本気で相談窓口を運用する気概を全く感じさせない設定です。
上記3月3日付け記事での《カウンセラー松川のコメント》でも記しましたが、
2022年時点で問題が表面化した時から、
対策をしない本気度だけは熱く伝わっているので、
今治市消防本部はパワハラ天国の頂点を目指しているのだと思います。
自治体消防の最も悪い面を表しているのが今治市消防本部です。

2025年3月1日土曜日

地下鉄サリン被害者がPTSD 事件から30年、支援継続必要

地下鉄サリン被害者がPTSD 事件から30年、支援継続必要

 

2025年3月1日() 0:02 共同通信

 

 地下鉄サリン事件の被害者を支援するNPO法人「リカバリー・サポート・センター」(東京)が、2023年に被害者のうち約200人を調査した結果、24.1%の男女が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えている可能性が高いことが、28日分かった。00年から毎年、数百人を対象に定期的に調査を続けてきた。体の不調を訴え続ける当事者もおり、1995年の事件発生から30年近くたってもなお、症状と折り合いをつけながら生活する実態が浮かび上がった。

 

 地下鉄サリン事件では6千人以上が重軽症となった。同法人は00年から年1回、希望する被害者の検診を行い、その際、PTSDも含めた心身の状態も尋ねてきた。

 

 「場面がいきなり頭に浮かぶ」「考えないようにしている」など22の質問に「04点」の5段階で回答し、計25点以上となればPTSDの疑いがあるとされ、その割合は00年は男性26.7%、女性38.8%だった。

 

 10年は男性20.3%、女性45.5%となり、直近の23年は男女ともに24.1%だった。



※ 他社による関連ニュースも掲載致します

被害者支援団体、3月で解散 受診者減少、職員も高齢化
―理事長「心身の不調に折り合い」・地下鉄サリン事件30年

 

202531日(月) 00:02 時事通信

 

 オウム真理教による地下鉄サリン事件から30年となるのを機に、被害者の集団検診などをしてきたNPO法人「リカバリー・サポート・センター」(東京)が3月末で解散することが28日、分かった。受診者数の減少やスタッフらの高齢化が理由で、理事長で弁護士の木村晋介さん(80)は「被害者も心身の不調と少しずつ折り合いをつけられるようになった。30年の節目で、解散を決めた」と明かした。

 

 センターは2002年3月、検診体制の強化やサリンの健康への影響を調べる目的で設立された。有志の医師らによる検診は事件翌年の1996年から行われていたが、5年ほどたっても目の不調を訴える被害者は少なくなかった。

 

 木村さんは「一過性だと思われたサリンの症状が持続的なものだと分かった。長期的に被害者を診る体制が必要だった」と振り返る。神経眼科医や精神科医らが集まり、坂本弁護士一家殺害事件で支援活動に当たった木村さんが理事長を引き受けた。

 

 年に一度の検診では眼科検査やカウンセリングに加え、アロマセラピーやツボマッサージ講習会なども開き、被害者同士の交流の場も設けられた。高齢化による受診者数減少やコロナ禍もあり23年に検診は終了したが、有志の頃を含め延べ2700人以上が受診した。

 

 体や目、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの症状について問うアンケートも00年から毎年続け、これまで延べ約7600人分のデータが蓄積された。20年には広島大などがデータを基に、被害者とPTSDとの関連についての研究成果を発表した。データは今後、研究者らへの提供も念頭に活用法を検討中といい、木村さんは「サリンの人体への影響を示す貴重な資料。万が一、同じような事件が起こったときには先例として役立てられれば」と話す。

 

 センターの解散は昨年11月の総会で決議され、今年2月末発行の広報誌で会員約1000人に報告された。事件30年に合わせ集めた会員の手記には「センターの存在が心の支えになった」「気持ちに安心感を与え続けた」などの言葉が並んだ。

 

 設立当初からの職員の山城洋子さん(76)は「当初は資金面や被害者との関係で不安もあり、一年一年の積み重ねだった。続けられたことをよしとしたい」と感慨深げに話した。


《カウンセラー松川のコメント》

リカバリー・サポート・センターについて
共同通信と時事通信が同日同時刻に配信しておりますが、
「統計数値の発表」と「同センターの解散」と
全く別の事案を報じております。
日本のみならず世界を震撼させた「地下鉄サリン事件」。
サリンと言う有毒物質による被害だけでなく、
心への被害が及び、それが今も続いているのは
被害者にとっては辛い日々が続いているだけでなく、
事件や被害者の存在が風化してしまう事も恐ろしいです。
団体を維持するには、気持ちの問題だけなく、財政基盤も必要です。
30年間に渡り団体活動を継続出来ただけでも、
大いな称賛に価します。
被害に遭わなかった方々、事件当初は生まれていなかった方々、
多くの人びとで被害者支援を継続したいものです。

2025年2月17日月曜日

メンタル休職3年連続ワースト2位 奈良県知事「何としても脱却を」

メンタル休職3年連続ワースト2位 奈良県知事「何としても脱却を」

 

2025年2月17日() 18:00 朝日新聞(机美鈴)

 

 奈良県庁で2023年度にメンタル不調で長期病休に至った職員の割合が、全国の都道府県でワースト2位となったことがわかった。3年連続のワースト2位に、山下真知事は「何としても脱したい」と語った。

 

 17日に県庁であった、行財政改革と働き方・職場環境改革推進会議の席で報告された。担当課によるとメンタル不調による30日以上の病休者は職員全体の379%に上り、記録の残る18年度以降で最多。全国平均(217%)を上回り、2122年度と同様に、全国で2番目に多かった。

 

 復職しても2年以内に再びメンタル不調で休職する割合は388%に上り、「3割以下」とする目標を達成できなかった。

 

 山下知事は就任直後の236月に働き方と職場環境改革の推進会議を創設。部下が上司を評価する「360度評価」やハラスメント対策の充実に取り組んできた。知事は「改革が進めば数字は次第に改善すると思う」との見方を示した。

 

 一方で、働き方改革の進展を受け、管理職が業務を抱え込みがちであることや、パワハラと受け取られるのを恐れて指導が難しいとの声が上がっていることも紹介し、「上司と部下の関係がよりフラットになった方がよいと思う」と述べた。


《カウンセラー松川のコメント》

「何としても」で何とかなる訳ではありません。
メンタルヘルス不調は小さな事でも起きる場合はあります。
小さな事が積み重なることで起き易くなります。
下の者から上の者まで、一人ひとりが自分の事として捉え、
他人や組織任せにせずに取り組まなければ、無理でしょう。

2025年2月12日水曜日

企画案が却下され、体調を崩した28歳女性 仕事のやる気をなくさせる上司とは?

企画案が却下され、体調を崩した28歳女性 仕事のやる気をなくさせる上司とは?

 

2025年2月12日() 11:40 読売新聞

 

産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」

 仕事をしていれば、ストレスはつきもの。精神科産業医として45年以上のキャリアを持つ夏目誠さんが、これまで経験してきたケースを基に、ストレスへの気づきとさまざまな対処法を紹介します。

 

 私は大手企業を中心に精神科産業医を務めて45年以上になりますが、近年は若手社員が会社をすぐに辞めることが問題になっていて、相談に訪れた社員が退職する経験もしばしばです。相談事例から浮かび上がってくるのは、上司の側に若手を育てようという意識が足りないのではないかという問題です。一度は企画が却下されて、へこんだものの上司が代わって意欲を回復した若手女性社員の例を紹介します。

 

頑張ってセールス企画案を仕上げたが

 会社で行われたストレスチェック後の「高ストレス者」面談に訪れたのは、メーカー営業部の総合職、28歳の小坂明代さん(仮名)です。

 

産業医 : 落ちこむ、イライラするなどの心身の愁訴が多く、上司サポートが低い結果となっています。うまくいっていないのでしょうか?

小坂さん: 上司が理解してくれない気がしています。

産業医 : 例えば?

小坂さん: 課長から指示された販売セールスの企画案です。やりたい仕事なのでうれしくって。でも締め切りが迫っていて、かなり無理をして仕上げたんです。

産業医 : どんな案?

小坂さん: 「このアイテムで華やぐ、あなたに」がキャッチコピー。若い女性向けの提案です。同僚の女性に協力してもらいました。課長が「これからは若い感性が大事。どんどん案を膨らませてほしい」と期待してくれたので、やる気が出たのです。

産業医 : なるほど。

 

却下の理由はあいまい、体調悪化

小坂さん: でも、2週間後に完成案を提出したら、「うーん、もう一つだな」と言われて却下されました。

産業医: ショックだったね。

小坂さん: 理由を尋ねても、「社内にもいろいろな考え方があって」「ヒットにつながるかな……」と歯切れが悪くて、よくわかりません。

産業医 : 残念でしたね。

小坂さん: 可能性があると思って頑張っただけにショックで……。無理をしたこともあって、家庭でもうまくいかないことが続いて体調を崩してしまったのです。つらかった。

産業医 : そうですね。

小坂さん: 体が動かなくなってしまったので、10日以上有休を連続して取りました。

産業医 : それで。

小坂さん: 休職は嫌だったので、2週間後に復帰しました。課長の態度は相変わらず冷たくて。

産業医 : 気持ちが晴れないよね。

小坂さん: 毎日、ウツウツした気分のまま働いています。

産業医 : よく話してくれたね。

小坂さん: ありがとうございます……

 

1年後に女性課長が着任

 小坂さんはその後も定期的に相談室を訪れていました。1年後に課長が代わって、相談に訪れる小坂さんの様子に変化が現れました。

 

小坂さん: 新しい課長は女性で明るく、話しやすい雰囲気なので、職場の雰囲気が変わってきたんです。「女性課長なら理解してくれるかもしれない」と期待して、一度却下された企画案についても話を聞いてもらいました。

産業医 : 話したんだね。

小坂さん: はい。課長は「頑張りすぎて前みたいにならないように。無理はしないでね」と優しく声をかけてくれて、私たちの企画案について丁寧に聞いてくれたのです。

 

企画案にしっかり向き合ってくれた

産業医 : 良かったね。

小坂さん: ええ。問いかけながら聞いてくれました。

産業医 : うれしいね。

小坂さん: 課長は「いい案です。若い女性の感性が生かされているよ。今、求められているものだと思う。検討させてね」って言ってくれたのです。

産業医 : 前向きですね。

小坂さん: (笑顔で)1週間後、課長は「いい企画書です。この案で行きたいわね」って言ってくれました。

産業医 : そうかそうか。

小坂さん: 本当にうれしかった。ブルーな部分がスーッと消えましたよ。

産業医 : もう相談の必要はなさそうだね。

小坂さん: ありがとうございます。

 

 半年後、小坂さんは相談室を訪れました。「新しい課長になったことで、私たち一人ひとりの気持ちに変化をもたらして、職場の空気が変わりました」と明るい表情です。「管理職がチームの力を引き出してくれるんですね」と語ってくれました。

 

2人の課長のコミュニケーション能力の差

 事例を検討しますと前任の課長は、若い感性を重視すると期待をいだかせたものの、企画案を却下する際の態度や説明があいまいで、部下に心理的負担を与えました。これにより、彼女は仕事への自信を失い、体調を崩す結果となったのです。

 

 新たに着任した女性課長は、提案に耳を傾け、問いかけなどを通して具体的なフィードバックを行いました。これにより、職場の空気や彼女たちのモチベーションに変化が生まれ、社内での課長の頑張りもあって企画案が取り上げられることにつながったのでしょう。

 

 小坂さんが経験した2人の課長は考え方やコミュニケーション能力に差があったわけです。

 

女性管理職の登用が日本経済にプラスかも

 ストレスの高い若手の相談を受けていると、前任の課長のように若手を育てようという意欲が上司の側に欠けている例によく出会います。上司が部下の意見に 真摯しんし に耳を傾け、適切なフィードバックを行う。それができていないのです。

 

 一方、小坂さんの例もそうですが、女性社員に対して、若手を育てようという意欲を持って接する女性管理職の話をしばしば耳にします。男性中心の企業社会で生きる女性同士、わかり合いやすく、後進を育てることに積極的な傾向があるように思えます。

 

 しかし、圧倒的に女性管理職が少ないのが現実。厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」によれば、女性管理職の割合はわずか127%。今後、女性管理職がもっと積極的に登用されることで、様々な場面で日本経済の成長にプラスの影響が出てくるのかもしれません。


《カウンセラー松川のコメント》

夏目医師は精神科産業医として45年以上の経験があるので、
対応や見立てについても信頼して良いと思います。
ところが、最初の上司が嫌がらせをする訳でなく、
頑張った仕事に対して満足な対応をしてくれないから
それがストレスとなって有給休暇を使って10日間休んだとのこと。
仕事で頑張ったのは評価されたいですが、
勤め人としては当たり前の事をしているだけ。
どんなに頑張っても、それが採用されるかは目の前の上司だけでなく
他の関係者の評価も影響します。
結局、異動により新しい課長により、自分の仕事を認めて貰えた。
それは課長が男性か女性かでなく、仕事の取り組み姿勢や感性の違いであり、
「女性(同性)課長だから認めてくれた」と思うのは短絡的です。
そして、自分の仕事が認められたから、気分が良くなるのは当然でしょう。
誰だって真剣に取り組めば取り組むほど、自分の仕事を認めて欲しいでしょう。
しかし、仕事とはそんなに甘いものではありません。
頑張りを評価しくれる保証もありません。
厳しい言い方ですが、
「自分の仕事が認められず、上司の態度が悪い」
そんな事で凹むのは当然でも、仕事を休む様では、
これからの社会人として続けられるのか心配です。
この展開だけなら、仕事仲間や友人と一席設けて愚痴を言う程度と同じ。
その様な自助努力もしないで「上司が悪い」で産業医の世話になるのも
いかがなものかと感じました。
産業医を甘える対象にしてしまう情けない事例ではないてじょうか。