2025年5月28日水曜日

「強くなければダメ」と苦しむ人に3つの「ほっと」…救急救命士、惨事ストレスの経験基に提言

「強くなければダメ」と苦しむ人に3つの「ほっと」
救急救命士、惨事ストレスの経験基に提言

 

2025年5月28日() 18:11 読売新聞(竹村文之)

 

 消防職員が業務改善のアイデアなどを発表する全国大会に、兵庫県の三田市消防署の救急救命士、三好結友(ゆう)さん(27)が近畿代表で出場する。提言するのは声をかけ合う職場環境の大切さ。職務で負った心の傷を、先輩らに打ち明けたことで克服した経験を基にしている。

 

全国大会を前に気持ちを高める三好さん(兵庫県三田市で)

 

 三田市初の女性消防職員として2019年に採用された三好さんが、心に変調をきたしたのは2年目の春。ドクターカーで駆け付けた死亡事故の現場だった。遺体の状況や、泣き叫ぶ家族の声、見物人の「早く助けろ」という怒号に動揺し、立ちすくんでしまった。

 

 無力感から自分を責め、「一人になるとフラッシュバックして涙が出た」といい、不眠や食欲不振が続くまま数か月間、勤務した。

 

 転機は心理カウンセラーと話す機会を得て、少し心が軽くなったこと。勇気が出て、職場の先輩にも苦悩を打ち明けたところ、親身になって聞いてくれた。「胸の内を吐き出す大切さを知った」。先輩とは何でも相談できる間柄となった。

 

 自身のしんどさが、災害や事件、事故などで受ける「惨事ストレス」によるもので、心の正常な反応だったことも知った。自責の念からも逃れられたという。

 

 私以外にも、強くなければダメだと葛藤に苦しむ職員は多いはず――。そう考えていた昨秋、「全国消防職員意見発表会」の希望者募集があり、手を挙げた。

 

 仕上げた原稿の題名は、「ほっトーク しませんか?」。ほっとする、放っておかない、温かい(ホット)と三つの意味を込めた。

 

 思いを打ち明ける座談会のような場を設け、安心できる雰囲気の醸成を勧める内容で、「仲間の気持ちに気付くきっかけになる」と強調。チームプレーや信頼関係の向上、ストレスケアにつながる効果を説く。

 

 4月に神戸市であった県大会では「誰だってつらい時はつらい」と訴える部分で「以前の自分に語りかけているような気持ちになった」。涙をこらえながら制限の5分間で発表し、県内各地区から集まった8人のうち最優秀に選ばれた。「他の発表者からも『感動した』と声をかけてもらい、伝わったんだと実感できた」と振り返る。

 

 530日に広島市で開かれる全国大会では、9支部から集まった計10人が、育児休業の取得や防火教育の大切さなどをテーマに語る。

 

 あの現場の情景は、今も目に浮かぶ。しかし、支えられている安心感を得て、前向きになれたという三好さん。「共感し、寄り添い合うことの重要性を伝えたい」と意気込んでいる。


《カウンセラー松川のコメント》

「心理カウンセラーと話す機会を得て、少し心が軽くなったこと」
心理職の一人として私もほっとしております。
そして、この様に誰かの支えになれた事は本当に良かったと思います。
県予選とブロック予選を勝ち抜いて来た職員が一堂に会しての大会。
是非、好成績を収めて頂きたいです。


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