人権侵犯事件、職場のハラスメント行為が最多に 法務省「救済に全力」
2025年5月28日(水) 12:19 産経新聞(大島真生)
学校や職場でのいじめ、性別・障害などによる差別…。こうした行為について法務省は相談窓口を設けて被害者の救済に取り組んでいるが、昨年確認された人権侵犯事件は、パワハラなどの労働権関係が最多だったことが明らかになった。これまでは個人情報の漏洩(ろうえい)といったプライバシー関係がトップだったが、法務省関係者は「ハラスメント行為に泣き寝入りしない、という意識の高まりが背景にあるのではないか」と推察している。
■個人情報の漏洩も
法務省人権擁護局によると、昨年の人権相談件数は17万4292件。このうち、同省が人権侵犯事件として新規に救済手続きを開始したのは8947件で、前年(8962件)からほぼ横ばいだった。
救済手続きを開始した種類別では、労働権関係が1663件(18・6%)とトップ。続いてプライバシー関係1437件(16・1%)▽学校でのいじめ1202件(13・4%)▽虐待(暴行含む)1025件(11・5%)▽差別907件(10・1%)-となっている。
令和5年はトップのプライバシー関係が1554件(17・3%)、2位の労働権関係が1487件(16・6%)で、ともに前年から件数は増加した。法務省関係者は「職場でのパワハラやセクハラ、顧客からのカスハラといったハラスメント被害の訴えが増えている」と指摘。「単純にハラスメント行為が増加したというより、権利侵害には立ち向かうとの意識が高まっている側面が大きいのではないか」と分析する。
■障害者に差別発言
被害者の属性に注目すると、障害のある人の被害件数は、差別待遇が171件と最多。暴れることなどを口実に、ベッドに縛り付けたり部屋に軟禁したりする「人身の自由」に関する事案が52件、社会福祉施設職員らによる人権侵害が40件と続いた。
具体的な差別行為としては、精神障害を抱える人が賃貸物件を借りようとした際、不動産会社がオーナーの意向も確認せずに障害だけを理由に仲介を拒否した▽身体障害のある人が採用の内定先の会社役員から差別的発言を受けた-などの例があった。
昨年7月には、旧優生保護法下で障害などを理由に不妊手術を強制された被害者が国に損害賠償を求めた訴訟で最高裁が旧法を憲法違反とする判断を示した。法務省は「障害を理由とする偏見や差別の解消に改めて努めている」としている。
■ネット被害は高水準
近年では、インターネット上での人権侵害も大きな課題となっている。ネット上での人権侵犯事件は1707件。このうちプライバシー関係が635件(37・2%)と最も多く、次いで人種や病歴、性癖、部落出身などの個人情報を無断で指摘する「識別情報の摘示」が475件(27・8%)、名誉棄損が329件(19・3%)だった。
識別情報の摘示の具体例では、住所氏名、電話番号をさらされたプライバシー侵害や、勤務先から懲戒処分を受けたと投稿された名誉棄損などがあった。
ネット被害救済のため法務省はプロバイダーに1610件の削除要請を行い、このうち1028件(63・9%)が削除された。法務省関係者は「ハラスメントは社会問題であり、今後も救済に注力していく。人権侵犯の一掃に全力を尽くす」と語った。
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