長時間労働を苦に自ら命を絶った巡査
自殺から7年半で当時の上司が遺族に直接謝罪
「恨む気持ちはもう一切ない」
2025年4月6日(日) 11:02 テレビ熊本
長時間労働が原因で2017年に自殺した玉名警察署の男性巡査の遺族に対し、熊本県警の幹部と当時の上司が3月28日に直接謝罪した。男性巡査が命を絶った日から7年半がたっていた。
5カ月間で月平均130時間の時間外労働
刑事を夢見て2012年に熊本県警の警察官となった渡邊崇寿巡査(当時24)。玉名警察署に勤務していた2017年9月に遺書を残して自ら命を断った。
自殺する直前の5カ月間の時間外労働は月平均130時間を超過。遺書には「死んで地獄にいくのも怖いですが、明日が来ることがもっと怖いです」とつづられていた。
渡邊巡査の遺族は2022年5月に「常軌を逸する長時間労働で自殺に追い込んだ。県警に安全配慮義務違反があった」として、熊本県に対し約7800万円の損害賠償を求める裁判を起こした。
2024年12月、熊本地裁は「長時間労働で精神疾患を発症し、渡邊巡査は自殺に至った」と認定。「時間外労働を削減するなどの措置を講じておらず、注意義務違反があった」として、熊本県に約6200万円の賠償を命じた。
原告代理人の光永享央弁護士は「原告の請求が全面的に認められた完全勝訴。判決文から、裁判所の県に対する怒りがにじみ出ている」と話した。
母・渡邊美智代さんは「遺書の中には『疲れたので休みます』と書いてあった。死ななければ、ゆっくり休めないほど追い詰められたことを証明できた。『きつかったね、ごめんね』という気持ちでいっぱい」と振り返った。
自殺から7年半 熊本県警が遺族に直接謝罪
被告の熊本県は控訴せず、判決が確定。熊本県警は「当時、勤務環境の整備が不十分だった」などとして責任を認め、遺族に直接謝罪する意向を示していた。
そして、渡邊巡査の死から7年半がたった3月28日、熊本県警の宇野晃警務部長らが遺族の自宅を訪れた。
熊本県警察本部の宇野晃警務部長は「勤務環境の整備が十分ではなく、尊い命を失わせてしまったことについて、心からおわび申し上げます。誠に申し訳ありませんでした」と、遺族に直接謝罪した。
母・美智代さんは「亡くなって丸7年がたちました。7年たたなければ県警からの言葉って聞けなかったのか。残念で仕方がありません。もっと前に聞きたかったです」と、声を震わせ訴えた。
また、母・美智代さんは2020年に公務員の労災に当たる『公務災害』に認定されたにもかかわらず、これまで県警から十分な説明はなく、「誰も寄り添ってくれなかった」と話した。
母・美智代さんは「尊い命が亡くなって崇寿の将来、未来がなくなりました。私たちには希望がなくなりました。こんなに長い間待たせたことを、私たちが納得するように説明してください。それが私たちの望みです」と話した。謝罪の場には当時の上司も訪れ、謝罪したという。
美智代さん「恨む気持ちはもう一切ない」
そして午後、遺族は会見を開き、母・美智代さんは「7年間思っていたこと、願っていたことがかなった日だった。『上司に謝ってほしい』とずっと思っていた」と、思いを述べた。
遺族の代理人弁護士によると、熊本県警はこれまで謝罪や適切な説明ができなかったことについて「公務災害認定を受けて謝罪し、責任を認めることもあり得たかもしれない。当時、そこまで踏み込めず、さらに4年以上、心労をかけた」とおわびの言葉を述べたという。
また、当時の上司は「亡くなったあの日から、一日たりとも渡邊刑事のことを忘れたことはありません。今後も一生、心に刻みながら生きていきます」と涙を流しながら謝罪したという。
母・美智代さんは「両手をついて、額を畳にこすらんばかりの態度で『申し訳なかった』と言ってもらえた。そこまで最後にしてくれたのは、私としてはうれしかった。崇寿とお父さんの遺骨は長い間、家にそのままにして、毎日一緒に過ごしてきた。区切りがついたのでちゃんとお墓に納めて供養していきたい」と話し、息子の自殺から一つの節目を迎えようとしていた。
母・美智代さんは会見で「当時の上司に直接、息子に謝ってほしかった。きょうはその気持ちが通じた。恨む気持ちはもう一切ない」とも話していた。
《カウンセラー松川のコメント》
拙ブログ2024年12月4日付け記事
「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: 巡査自殺、熊本県に6180万円賠償命令 地裁「当直は時間外労働」
これの続報です。
判決の確定は昨年のうちです。
そして、熊本県警としての謝罪は年明けての3月も終わる頃になっての謝罪。
しかも、県警のトップではなく、労務管理の最高責任者である警務部長。
実は、どこまでも本気で謝罪する気が無いのが、見え透いている感じです。
人ひとりの命が失われた事の重大さを認識していないというよりも、
「キャリア官僚である県警本部長には謝罪をさせられない」
そんな斟酌が働いているのでしょう。
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