巡査自殺、熊本県に6180万円賠償命令 地裁「当直は時間外労働」
2024年12月4日(水) 19:24 毎日新聞(野呂賢治)
熊本県警玉名署刑事課の巡査だった渡辺崇寿(たかとし)さん(当時24歳)が2017年9月に自殺したのは県警が注意義務を怠ったことが原因だとして、遺族が県に約7800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁は4日、過労と自殺の因果関係を認めて約6180万円の支払いを命じた。品川英基裁判長は「上司の刑事課長らは過重業務の状況を把握できたのに解消措置を講じず、注意義務に違反した」と述べた。
判決によると、渡辺さんは12年に県警に採用された。17年3月に玉名署刑事課に異動し、約半年後の17年9月、遺書を残して自殺した。自殺は業務上の過度な負担に起因しているとして20年11月に公務災害に認定された。
訴訟では当直時間の長時間労働の実態などが争われた。県警は当時、刑事課の当直業務には仮眠時間もあることなどから「断続的労働」として扱っており、時間外労働時間に算入すべきではないと訴えていた。
これに対し判決は、当直時間中も上司の指揮下にあり、事件が起きれば仮眠や休憩中でも直ちに対応する必要があったとし、時間外労働時間に当たると指摘。渡辺さんが亡くなる前の5カ月間の時間外労働は月143~185時間で、過労死ラインとされる月80時間を連続して大幅に超えており、「精神的・肉体的な負荷は強度だった」と認めた。
その上で、上司の刑事課長らが過労状態を容易に把握できたのに対応を怠ったため、渡辺さんは遅くとも17年8月までにうつ病などの精神障害を発症し、自殺に至ったと結論付けた。
渡辺さんの母美智代さん(64)は記者会見を開き、ほぼ全面勝訴の判決について「息子の名誉を回復するために頑張ってきた。涙が出た」と喜んだ。遺族側代理人の光永享央弁護士(福岡県弁護士会)は「勤務実態に即して当直時間を丸々労働時間に算定しており、画期的だ」と評価した。
熊本県警は「判決文を確認し、対応を検討する」とのコメントを出した。
熊本県警巡査の自殺、
地裁が長時間労働との因果関係を認め県に6200万円の賠償命じる
2024年12月4日(水) 23:54 読売新聞
熊本県警玉名署の巡査(当時24歳)が自殺したのは長時間労働による精神障害が原因として、遺族3人が県に約7800万円の損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁は4日、計約6200万円の支払いを命じた。品川英基裁判長は判決で長時間労働と自殺との因果関係を認め、「被告は業務の過重性を回避すべき注意義務を怠った」と指摘した。
判決によると、巡査は2017年春から同署刑事課に勤務し、同年9月に自殺した。亡くなるまでの約5か月間の時間外労働はいずれも国が過労死ラインとする月平均80時間を超え、当直時間帯も含めて最長で月185時間に達した。
県側は当時のルールでは、当直は時間外労働に算入すべきではないと主張したが、品川裁判長は「使用者の指揮命令下に置かれている」として退けた。
判決後に記者会見を開いた母親(64)は「判決で息子の真の名誉回復ができた。仏前で報告したい」と語った。県警の松見恵一郎首席監察官は「判決文を確認し、今後の対応を検討する。亡くなった職員の冥福(めいふく)を祈り、遺族に心からお悔やみ申し上げる」との談話を出した。
「地獄にいくのも怖いですが、明日がくることがもっと怖い」
24歳警察官が命断った原因は「長時間労働」地裁認定 熊本
2024年12月4日(水) 19:06 熊本放送
「死んで地獄にいくのも怖いですが、明日がくることがもっと怖い」
こう書き残して自殺した、24歳の現職警察官。自殺した原因は「長時間労働」であると、熊本地方裁判所が認定しました。判決に臨んだ警察官の母親が、胸の内を語りました。
■月130時間超の時間外労働
2017年、熊本県の玉名警察署の刑事課に所属していた渡邊崇寿(わたなべ たかとし)さん(当時24)が自ら命を絶ちました。
渡邊さんの母親、美智代(みちよ)さんたち遺族は「渡邊さんが自殺したのは常態化した長時間労働が原因」として、県に約7800万円の損害賠償を求め提訴しました。
遺族によりますと、渡邊さんは自殺する前の5か月、平均で月130時間を超える時間外労働をしていたということです。
渡邊さんの遺書には『すみません。つかれたので休みます。』という言葉が記されていました。
渡邊さんの遺書 (一部抜粋)『死んで地獄にいくのも怖いですが、何もないところに行き消えてしまうのも怖いのです。しかし、明日がくることがもっと怖いのです。』
渡邊さんの母・美智代さん「地獄に行くより明日が来るのが怖いという言葉が、どんなにつらかったのだろうかなと」
また、崇寿さんが自殺した理由について県警から明確な説明がないままだと言います。
美智代さん「県警は説明をする義務がある。私たち遺族は聞く権利がある。だからそこをきちんとしてほしい」
■判決は「県に約6200万円の賠償」
12月4日の判決で熊本地裁の品川英基(しながわ
ひでき)裁判長は、個人の生命や犯罪と向き合う警察の仕事の特殊性に触れた上で、県警側が「業務の過重性を回避すべき注意義務を負うものと解釈すべき」として、長時間労働と自殺の因果関係を認め、県に約6200万円の賠償を命じました。
判決後の会見で、美智代さんは涙をぬぐいながら息子への言葉を紡ぎました。
美智代さん「勝ったよ、報われる時が来たよと伝えるだけです」
「ごめんねっていう気持ちでいっぱいですよね」
■県警側の主張 地裁の判断は
裁判の争点は渡邊さんの自殺が予見できるものだったかどうか。
県警は、渡邊さんの「仕事負担度が低い」という問診結果が出ていたことや、産業医の受診を希望していなかったことなどを挙げ、「自殺は予見できなかった」と主張していました。
これに対し熊本地裁は「過剰な業務の実態を知れば心身の健康を損なうことは知りえる」と県警側の主張を退けた形です。
原告の代理人弁護士は「主張していた時間外労働が全て認められた画期的な判決」と評価しています。
判決を受け、県警は以下のコメントを出ました。
「判決文を確認し、今後の対応を検討して参ります。改めまして、お亡くなりになった職員のご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご遺族に対しましては心からお悔やみを申し上げます」
《カウンセラー松川のコメント》
長時間労働に起因する自殺ですが、
自殺に至るにはメンタルヘルス不調が関わっています。
単に「仕事で疲れた」だけならば、自殺に至ることはまず無いでしょう。
それはこの裁判でも認められています。
肉体の限界も、精神の限界も個々で異なりますが、
国が定めた過労死ラインとされる月平均80時間の超過勤務に対して、
数か月間も大幅に超えた超過勤務を強いていたのは、
労務管理上で大変問題があります。
自殺の予見性についても、労務管理が為されていれば、
超過勤務の時間数から自殺の可能性は導き出せるはずです。
その為の過労死ラインなのですから。
また、当直勤務を時間外労働ではないとする県側の主張も、
実態と乖離した屁理屈であり、判決は当然の内容と言えます。
そして警察では「自殺者は精神異常者」と見做す風潮があり、
亡くなられた渡邊さんに対しても同様の見方をしていたと思います。
警察も業務多忙ながら、非正規職員を導入は出来ませんし、
予算や定員もあることから、一人当たりの労働時間が多くなる傾向があります。
しかし、この様な判決が出た以上は、
県警幹部は県と定員増や予算増加の折衝をするべきでしょう。
更に、県議会の教育警察常任委員会も対応するべきです。
尚、これは熊本県警だけでなく、他の都道府県警察でも配意する案件です。
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