2022年1月28日金曜日

陸上自衛官 自殺裁判 原告側が控訴【熊本】

陸上自衛官 自殺裁判 原告側が控訴【熊本】

 

2022年1月28日() 13:09 熊本放送

 

陸上自衛隊西部方面隊の自衛官だった男性が教官からパワハラを受け、自殺したとして両親が国などを相手に損害賠償を求めた裁判で、原告側は自殺の責任を認めなかった熊本地方裁判所の判決を不服として28日控訴しました。

 

この裁判は、7年前当時22歳の男性自衛官が2人の教官から「殺してやりたい」といった暴言などを受けパワハラで自殺したとして、男性の両親が国と教官2人に損害賠償を求めていたものです。

 

1月19日の地裁判決では、教官が「殺してやりたい」といった発言をしたとしパワハラ行為を一部認め国に220万円の支払いを命じた一方で「男性の自殺は予見できなかった」として、男性が死亡した責任については認められませんでした。

 

原告側はこの点について絶対に許すことができない判決とし28日控訴しました。

 

 

※ 他社のニュースも掲載いたします 

教官のパワハラ 自殺の予見は困難か
 息子の無念晴らす 両親が控訴

 

2022年1月28日() 16:42 毎日新聞(中村園子)

 

 「お前のような奴を見てると殺したくなると言われた」。6年前、教官からパワーハラスメントを受けた苦しみを遺書に残して、陸上自衛隊の男性自衛官(当時22歳)が自殺した。両親が当時の教官2人と国に計約8100万円の損害賠償を求めた訴訟は19日に熊本地裁で判決が言い渡されたが、両親は28日に控訴した。国に220万円を支払うよう命じた判決だったが、いったい何を認め、何を認めなかったのか。

 

 男性は西部方面隊(熊本市)の陸士長だった。3等陸曹への昇進を目指し2015929日から長崎県内の教育隊に派遣されていたが、約1週間後の107日、宿舎内で命を絶った。遺書には「殺したくなる」と言われたことや「103名の前で毎日毎日吊し上げにされると思うとやり切れない」などと記されていた。

 

 教育隊で男性に何があったのか、判決の事実認定はこうだ。

 

 男性は、教官の部屋まで指示を聞きに行く「伝令業務」を担当していた。151056日、男性は業務のために教官である区隊長の部屋を訪れたが、入室時の言葉遣いや敬礼の仕方、立ち位置などの「入室要領」に沿った動作ができていないと言われ、何度も追い返された。同僚の一人は男性から相談を受けてその動作を見たが、間違っていると思える部分はなかったという。

 

 6日夜、男性は夕食も取らず、同僚に「入室要領の指導をされて、自分はもう、どうしていいのか分からない」と言い、区隊長のもとに行った。廊下で男性と区隊長の2人のやり取りを見ていた班長(教官)は、男性の胸ぐらをつかんで揺すった。

 

 区隊長はその後、男性と同僚の計104人全員を屋外に集合させ「入室要領ができていない学生がいる」として男性に挙手させて説教し、消灯時刻を早めると指示した。その後、男性がまた区隊長の部屋に行くと「お前のようなやつは殺してやりたい」というようなことを言われた。そして男性は命を絶った。

 

 区隊長は訴訟の尋問で「『殺してやりたい』とは発言していない」と主張していた。しかし、判決は、同僚が男性から区隊長の発言内容を聞いていたと訴訟で証言したことや、男性が悩んでいる様子を見ていたことなどを理由に、区隊長の主張を退けた。

 

 判決は、区隊長の発言や、班長が胸ぐらをつかむなどした行為は安全配慮義務に違反すると認定。区隊長が全員の前で男性に挙手をさせ消灯時刻を早めたことも「自らの失態のために全員が連帯責任を負わされたという屈辱感を与え、不適切。男性を心理的に追い詰めた」として安全配慮義務違反と判断した。そのうえで、これらの違法行為で男性が受けた精神的苦痛に対する慰謝料200万円、弁護士費用20万円の計220万円の賠償を国に命じた。

 

 一方、男性の死亡によって生じた損害の賠償責任を国側に負わせるには、教官たちが男性の自殺を予見できた可能性が認められることが必要だった。だが、判決は「男性が安全配慮義務に違反する指導を受けていたのは106日夜の短時間で、自殺を予見するのは困難だった」などと判断。男性が生きていれば将来得られた収入(逸失利益)や、男性が命を絶つまで追い詰められた精神的苦痛に対する慰謝料など他の請求を退けた。

 

 判決後、男性の母は「区隊長は息子に何度も入室を繰り返させ、十分な指導もせずに全員の前で手を挙げさせ、『殺してやりたい』と言って自死に追い込んだ。息子は指導者とは程遠い人たちに囲まれ、一生懸命に答えを出そうとしていたが、あまりにも理解しがたい対応に心が折れたのだと思う」と述べた。

 

 男性は高校卒業後の12年に自衛官になった。元々運動が得意ではなかったが努力を続け、教育隊に入った直後の体力検定の成績は2位だった。父は「優しい息子だった。災害派遣を命じられたらすぐに行っただろう。立派な自衛官になってほしかった」と悔やむ。「弱い立場の者を精神的に追い詰めれば、当然死んでしまうことはあり得る。そのことを軽視した判決はとても受け入れられない」。審理は今後、福岡高裁に移る。


《カウンセラー松川のコメント》

拙ブログの1月19日付け記事
「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: 陸自隊員のパワハラ自殺、国に220万円賠償命令 熊本地裁 教官の違法な指導認定 (mms119.blogspot.com)
これの続報です。
一般的な感覚からすれば

「自衛隊の教育機関で教官による殺人なんて荒唐無稽」
と思われるでしょう。
しかし、22歳の陸士長にとって区隊長や班長は鬼より怖い存在だったかも知れません。
区隊長から「礼式が間違っている」と言われ、
同僚に相談するも、同僚は間違っているとは思えないとのこと。
どこが間違っているかも指導されず、
ただ繰り返し「間違っている」と指摘するだけが教育手法ではありません。
そして、連帯責任にまで及んだ上に「殺してやりたい」とまで言われれば、
相当精神的に追い込まれても当然です。
「まさか自衛隊で殺人なんて」と思うのは、自衛隊の厳しさを知らないからでしょう。
最終的に戦闘と言う命懸けの任務を課する自衛隊では、
時に死を覚悟する様な教育もあるでしょう。
二士から士長までは軍隊ならば兵隊で命令されるだけの立場ですが、
三曹から曹長までは軍隊なら下士官となり、
下士官から上位の者は命令する立場となります。
即ち、三曹になることは部下の命を預かる立場になるのです。
よって、士とは異なった厳しさを求められます。
だから厳しい教育も必要なのでしょう。
しかし、それは個々の隊員に合わせる必要もあります。
それは命を預かる教育者ほど配慮しなければならない内容です。
短時間のパワハラだから自殺するか分からないと定量的に判断するのは
あまりにも安直過ぎます。
重視するべきはパワハラの内容です。
しかし、裁判官にはこのままでは教育隊のことは理解出来ないでしょう。
先ずは候補生と区隊長や班長の関係性を深く理解しなければ、
残念ながら控訴審でも同様の判決となると思います。

御遺族の皆様へ
コメントでも記しましたが、部外者には自衛隊の内情は分かりません。
この部分の理解を得てこそ真の判断が出来ると思いますので、
弁護人と相談してみてくださいませ。

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