2022年5月30日月曜日

長崎市幹部が記者に性的暴力 市に1975万円支払い命令 地裁判決

長崎市幹部が記者に性的暴力
 市に1975万円支払い命令 地裁判決

 

2022年5月30日() 10:09 毎日新聞

 

 2007年に当時の長崎市幹部の男性から取材中に性的暴力を受けたとして、報道機関の女性記者が市に約7470万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、長崎地裁(天川博義裁判長)は30日、市の責任を認めて約1975万円の支払いを命じた。

 

 訴状などによると、女性は077月、長崎原爆の日(89日)に市が開く平和祈念式典に向けた取材で、夜間に庁舎外で面会した市原爆被爆対策部長(当時)から被害を受けたと主張。心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し入院や休職を余儀なくされたほか、別の市幹部が性的暴力を否定する虚偽の情報を広めるといった2次被害を受けたとしていた。部長は問題発覚後の0711月に自殺した。

 

 裁判で女性側は「男性は取材に応じて情報を提供する形を装い、性的暴力に及んだ。職務中に受けた性的暴力は取材活動や、報道・表現の自由を脅かす」と主張。一方、市側は「男性は以前からセクハラに当たる言動をしており、女性が自覚して適切な対応を取っていれば回避できた」などと反論していた。

 

 女性の人権救済申し立てを受けた日本弁護士連合会は14年、「市の幹部職員が職務上の優越的地位を乱用し、女性の意に反して強要した人権侵害行為であり、市は防止措置を尽くしていなかった」と指摘。女性への謝罪や再発防止策の策定を市に勧告していた。

 

 判決後、取材に応じた原告弁護団は「基本的な原告の主張が認められた社会的意義のある判決だ」と評価した。

 

 原告弁護団によると、取材中の記者に対して市幹部が職権を乱用して性暴力を振るったことに加え、市の別の幹部が虚偽の風説を流したことも認められたという。【中山敦貴、松本美緒】

 

 

※ 他社のニュースも掲載致します 

記者「働く女性が誇り高く生きる希望に」
 性暴力、長崎市に賠償命令

 

2022年5月30日() 20:59 毎日新聞(中山敦貴、松本美緒)

 

 2007年に長崎市の男性部長(死亡)から取材中に性暴力を受け、別の市幹部から虚偽情報を流され2次被害にも遭ったとして、報道機関の女性記者が市に約7470万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、長崎地裁(天川博義裁判長)は30日、2次被害を含めて市の責任を認め慰謝料など約1975万円の支払いを命じた。

   ◇

 原告の女性記者は判決後に長崎市内で記者会見し、周囲の支えなどに感謝の意を表し「勝訴できたことにほっとしている」と振り返った。判決については「働く女性にとって、性的暴力に遭うことがなく、遭ったとしてもその不当性が社会に認められ、誇り高く生きられるようになるための一筋の希望になってほしい」と願った。

 

 女性が被害に遭ったのは、市幹部の退庁後に独自情報を得るため試みる、「夜回り」と称される取材中だった。判決では、性暴力が部長の職務に関連すると認定。女性は「記者として、事件に向き合った当事者として、このような形で報道の自由が侵害されることがないよう願う」と語った。

 

 女性は今も心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療を続けている。「合意の上だった」という部長の虚偽の弁明などが週刊誌で報じられた。女性は「なぜ一緒に部屋に入ったのか」「引き返せばよかったのでは」といった中傷にさらされ、インターネット上でも女性の顔や名前、勤務先を暴こうとするなど心ない書き込みが相次いだ。会見では「呼吸もできず、立とうにも体に力がうまく入らず、倒れ込むこともしばしばあった。何年もそんな状態が続いた」と苦しみも吐露した。

 

 女性は人権救済を申し立て、日本弁護士連合会が2014年に謝罪や再発防止対策などを勧告した。しかし、市が拒否したため、女性は提訴に踏み切った。

 

 市側は法廷で「女性が部長のセクシャルハラスメントの危険性に気付いていながら取材優先の考え方から適切な対応を取らなかった」「当日の適切な対応次第では、事件を回避できた」などと主張した。訴訟を通じ女性は「裁判に負けないためなら行政組織も恥ずかしげもなくこういう主張をするのか」と感じたという。

 

 被害から15年。女性は、市に対し「判決を重く受け止めて反省し心から謝罪し、事件を二度と起こさないよう、行政組織としての原点に立ち返ってほしい」と訴える。そして「今後は傷付けられた人の名誉、体調回復を支える側に回りたい」と力を込めた。

 

 ◇公権力とメディアに課題を投げかけた

 谷口真由美・大阪芸術大客員准教授(ジェンダー法)の話 今回の件も含め、取材現場では女性への差別に加え、取材に応じる側と取材する側の力の差も合わさって深刻な事態が起きており、公権力とメディアの双方に課題を投げかける判決だ。判決を踏まえ、長崎市は女性に謝罪し再発防止へ誠実に対応すべきだ。報道機関側も、差別構造が発生しやすい関係性の中で夜間の取材をさせるべきかどうかなどは考えなければならない。


《カウンセラー松川のコメント》

事案発生から15年とのことですが、
提訴からですと2年を経ての民事訴訟第一審判決なので遅くはありません。
被害の理由はともあれ加害行為について認定されました。
この様な訴訟では多額の賠償金額だと思います。
しかし、性的暴力に遭いながら刑事告訴しなかったのは腑に落ちません。
この部分が市側の主張に反映されているとも思えます。
犯罪被害に遭ったら、早期に警察へ通報するのが一般的ではないでしょうか?
未だ第一審の判決なので、被告の長崎市が控訴することで、
判決が変わる可能性もあります。

被害者の方へ
性的暴力に遭いながら警察に通報しなかった点が
この報道では分からないのですが、
刑事告訴をしていれば民事訴訟についても
発生から15年もの時間を要さなかったと思います。
現に提訴から2年で一審判決を得ているのですから。

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