2022年5月30日月曜日

従業員からの訴訟に備え、「パワハラ保険」加入急拡大…契約数は4年前の倍

従業員からの訴訟に備え、「パワハラ保険」加入急拡大
…契約数は4年前の倍

 

2022年5月30日() 11:25 読売新聞

 

 中小企業で、職場のパワーハラスメントを巡る訴訟リスクに備えた保険加入が急拡大している。改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)で今年4月から中小企業に対策が義務づけられ、経営課題としてパワハラ対応の重要性が増していることが背景にある。

 

 加入が増えているのは、損保会社が販売する「雇用慣行賠償責任保険」。企業がパワハラやセクハラ行為があったとして従業員から訴訟を起こされた場合、敗訴した際の損害賠償や慰謝料、訴訟費用などを補償するものだ。保険料は企業規模に応じ、年間5万円から数十万円程度という。東京海上日動火災保険と損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の大手損保4社によると、今年3月末時点の契約件数の合計は4年前に比べて倍増し、約9万件だった。

 

 パワハラ防止法は2020年6月に施行され、当初は大企業のみが義務化の対象で、中小企業は努力義務とされていた。今年4月以降、中小企業も違反した場合は厚生労働省の指導や勧告の対象となった。対応が不十分な場合に従業員から訴えられる可能性も高まっている。

 

 中小企業では繁忙期に労働環境が厳しくなることも多く、経営側が留意していても、従業員側がパワハラと受け止めるケースがあり、訴訟に備えた保険のニーズがあるという。「保険加入とともに対応策の助言を求める中小企業が多い」(東京海上広報)といい、損保各社は補償だけでなく、セミナーなどを通じハラスメント防止策の指南も行っている。

 

 この保険に加入した福岡県のある介護施設運営会社の代表者は「管理職中心に日頃からハラスメントの注意喚起を行っているが、従業員の意識には差があり、完璧な対策を維持するのは難しい」と打ち明ける。

 

 中小企業の間では、義務の対象となったことが十分に認知されていない面もある。日本損害保険協会が昨年7月に中小企業約1000社を対象にした調査では、ハラスメントによる従業員からの訴訟リスクに対し「対策や対処をしていない」と答えた企業は52・5%に上っている。


《カウンセラー松川のコメント》

中小企業では企業としての資金面や人材面と共に
経営者の無理解や管理監督者の無知も相まって
なかなかハラスメントに注力するのが難しいのが実状です。
それを補完する形での保険商品となりますが、
「この保険に加入しているから安心、大丈夫」では済みません。
健全な職場作りの為には経営者や組織が自ら動く必要があります。
決して「最後は金目でしょ」ではありません。

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