文化芸術団体にハラスメント対策求める 文化庁の有識者検討会が報告
2024年9月6日(金) 21:30 朝日新聞(田島知樹)
文化庁は6日、文化芸術団体や同庁にハラスメント対策を求める有識者検討会の報告を発表した。
ハラスメント対策については、労働関係の法令やフリーランス新法などが事業者らの責務などを規定している。一方で文化芸術の分野では、師弟関係など法令では扱いにくい関係があることを報告は指摘。各業界を統括するような文化芸術団体が、分野に応じたハラスメントへの対処方針を定めることや相談窓口を設置することを求めた。
各団体による対処方針の策定に先立って、文化庁に対して参照指針を作ることも要望。また、独自の慣習がある文化芸術分野の現場や人材登用の仕組みなどの把握が重要とした。文化庁は、これらの取り組みのために来年度予算の概算要求に3億9千万円を計上している。
芸能界のハラスメント防止、文化庁が方針 専門家派遣など4億円計上
2024年9月6日(金) 14:00 毎日新聞(西本紗保美)
文化庁は6日、映画や音楽、伝統芸能団体でのハラスメント防止や労働環境改善に向けた方針を発表した。閉鎖的で独特な慣習が一部で残る文化・芸術分野で軽視されがちな「個人の尊厳」の保護を進めるとして、ハラスメント対応の専門家の派遣や法律相談の窓口設置などの経費約4億円を2025年度予算の概算要求に計上した。
文化・芸術分野では、映画監督が「指導」の名目や地位関係性を利用し、俳優やスタッフらが性暴力被害に遭ったり、死亡した劇団員の遺族がパワハラ被害を主張したりする事例があった。このほか、フリーランスが多い現場での長時間労働や契約トラブルなどが問題視されてきた。一方で文化庁が134団体を対象に実施した調査によると、パワハラの対処方針を定めているのは17団体、セクハラは15団体にとどまる。
政府の「新しい資本主義実現会議」は、日本のアニメ、映画などのコンテンツ産業の海外進出や、作家への利益還元などの課題を念頭に「クリエーター個人の創造性が最大限発揮される環境の整備」を掲げている。
これを受け、文化庁は芸術家らの「個人の尊厳ある創造環境向上」に各団体が取り組む方法を検討する会議を7~8月に計4回開催。能楽や人形浄瑠璃などの伝統芸能家や各団体の代表者、大学教授らが意見を交わし、方針を取りまとめた。
議論のまとめでは、各団体がハラスメントから個人を守るための対応指針や、フリーランスでの労働実態が多いことを踏まえ、就業や契約について専門家の助言を受けられる体制の整備を明記。そうした取り組みについて各団体が参考にできる指針を、文化庁が策定することにした。
文化庁は概算要求に、各団体にハラスメント防止の体制整備について助言する専門家を派遣するなどの新規事業として2億円の経費を計上。また23年9月に開設した、個人のための無料法律相談窓口の継続などに計1億9000万円を盛り込んだ。
文化庁担当者は「芸術・芸能分野に『ブラック』なイメージが定着し、担い手が減っているとの懸念も寄せられている。芸術の質を下げることなく、持続可能な業界にしていく取り組みが求められる」としている。
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