2022年11月21日月曜日

営業先で受けた性暴力  被害訴える高い壁「泣き寝入りせず声を上げてほしい」  女性の切実な願い

営業先で受けた性暴力
 被害訴える高い壁「泣き寝入りせず声を上げてほしい」
 女性の切実な願い

 

2022年11月21日() 19:38 北海道テレビ

 

 今月12日から25日は「女性に対する暴力をなくす運動」期間です。今回の特集は「性暴力」について。被害を訴える女性の前に立ちはだかったのは、想像以上に高い「壁」でした。

 

 保険会社の営業をしていた34歳の女性。夫との間に3人の子どもを授かり幸せな日々を送っていましたが、今年1月、その生活が一変。営業先だった小樽市内のリフォーム会社で、性暴力を受けたのです。保険プランの説明を終えて帰ろうとしたところ、社長の今井寿彦被告に突然腕を掴まれ、無理やり性行為を迫られたと言います。

 

 女性:「『やめてください』と言った時は、『うるさい、聞こえるだろ、静かにしろ』と言われて本当に怖かった。背も大きいし、声も大きいですし」。

 

 腕には全治10日間のけが。女性はやっとの思いで警察に被害届を出し、今井被告は強制性交致傷の罪で起訴されましたが、その後も女性の苦悩は続きました。

 

 「女性と性交はしたが、同意の上だった」。9月に行われた裁判員裁判で、今井被告が主張したのは無罪。性行為の対価として、女性に1万8000円を支払ったと主張したのです。

 

 女性:「嘘を言われたことで私自身も傷つきましたし、家族もすごく傷ついたので、本当に許せなかった。裁判中に自分が着ていた服や下着までさらされ、思い出したくもないことをしゃべるのも嫌だった」。

 

 争点となったのは、今井被告による女性へのセクハラ行為の数々でした。保険の契約が決まると、性行為を求めるメッセージを連日送ったり、女性が会社を訪問した際に、体を触るなどの行為を繰り返しました。

 

 女性:「私も最初は冗談だと思って。でも、お客様なので怒らせないように笑って流してもらうようにしたかったので『困ります』『怖いですよ』と拒否しました」。

 

 今井被告からのセクハラについて、同僚の女性には相談しましたが、会社の上司には相談できなかったと言います。

 

 女性:「できないですよね。みんな上司が男なので。『あなたじゃ対処できないの?』と思われるのも嫌ですし、そういうことをされていると思われるのも嫌。上司が女性だったら相談しやすいと思うんですけど」。

 

 5日間に及ぶ裁判で、今井被告には求刑通り懲役9年の判決が言い渡されました。

 

 女性:「正直、私も悪いんじゃないかとどこかで自分を責めていたので、あなたの仕事は間違ってなかったと裁判長が言ってくれたことに、本当に心が救われたし安心しました」。

 

 今井被告は、判決を不服として控訴。一方、女性は心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病などと診断され、今も仕事を休職しています。

 

 2017年にアメリカで始まり、世界中に広がった「MeToo」運動。性被害に遭っても沈黙してきた人たちが、自ら声を上げるきっかけになりました。しかし、去年、内閣府が発表した調査では、性交などの暴力を受けた人のうち、警察に連絡・相談したのはわずか5.6%。

 

 照屋優海さん:「声を上げるまでのハードルもまず高くて、その後に起訴されて有罪になるハードルもとても高くて…」。

 

 札幌市に住む照屋優海さん(35)。11年前、会社の上司から性行為を強要されました。被害から10年以上。今、声を上げることの大切さを感じています。

 

 照屋さん:「私ができることは、話すことで会話のトピックになって議論されて、性被害を受ける状況がなくなっていけばいいなと思う」。

 

 照屋さんの心の支えになっているのが、NPOが運営する「SACRACH(さくらこ)」です。道と札幌市が設置した相談窓口で、警察や医療機関などと連携しながら性暴力を受けた被害者をサポートしています。

 

 須田布美子弁護士:「もちろん誰かに言うこと自体もすごくハードルが高いし、それ以前に自分が被害にあったことを認めることもすごくハードルが高い。誰かと話を共有する、あるいは加害者にちゃんと責任を取ってもらう。そのためにも専門機関に相談してほしい」。

 

 性被害を訴えることに対する、様々な「壁」。ただ、営業先で被害に遭った女性は、勇気を出して声を上げたことで心が救われたと話します。

 

 女性:「私がもし泣き寝入りをしていたら、今でも苦しんでいたと思う。正義は勝つので間違ったことをしていないのであれば、しっかり声を上げてほしい」。


《カウンセラー松川のコメント》

思い出したくない被害を公にしないと他人だけでなく
自身も被害に遭い続けることにもなるでしょうから
勇気をもって被害を申告することも大切です。
しかし、それは被害の当事者ではないから正論を言えるだけで、
当事者としては生死に関わる問題と言っても過言ではないでしょう。
保険の外交員の仕事は実績主義ですし、正社員の様な身分の安定も無いと、
余計に被害を口外するのも躊躇われて当然とも言えます。
また、勤め人にとって顧客同様に大切なのが上司です。
勤務評定や人事への影響を考えると、無碍に断るのも難しいでしょう。
綺麗事だけでは済まないのが大人の社会ですが、
自分自身が心身の傷を負ったり残したりするくらいならば、
悪い事は「悪い」と言ったり、ダメな事は「ダメ」と断ったりするのも、
また自己防衛の一つです。

被害者の皆様へ
この様なおぞましい被害を口外するのは大変だったと思います。
しかし、皆様の勇気で被害の拡大を防げたのです。
自己犠牲による社会貢献をされたのは間違いありません。

0 件のコメント:

コメントを投稿