2022年11月9日水曜日

トランスジェンダー社員に上司「戸籍の性別変更を」…「SOGIハラ」でうつ病、労災認定

トランスジェンダー社員に上司「戸籍の性別変更を」
…「SOGIハラ」でうつ病、労災認定

 

2022年11月9日() 5:01 読売新聞

 

 心と体の性が一致しない「トランスジェンダー」の40歳代会社員が、勤務先の職場で性自認を侮辱する「SOGI(ソジ)ハラスメント(SOGIハラ)」により、うつ病を発症したとして、神奈川県内の労働基準監督署から労災と認定されていたことがわかった。認定は6月30日付。代理人弁護士によると、SOGIハラによる労災認定が明らかになるのは、全国的にも珍しいという。

 

 会社員は戸籍上の性は男性で、性自認は女性。2006年に神奈川県内の大手製造会社に就職し、17年に職場で性自認を公表した。会社員が情報開示請求で入手した労災認定を巡る調査書によると、会社側は会社員を女性として扱い、敬称を「さん」とするよう従業員に周知した。

 

 その後、指導役だった上司との関係が悪化。18年4月、別の管理職を交えた話し合いの場で、会社員が上司から「彼」と呼ばれたことに抗議すると、上司は「戸籍上の性別変更をしてから言いなさい」と発言した。「女性らしく見られたいなら、こまやかな心遣いが必要」とも言われた。この席で、上司は会社員のことを何度も「彼」と呼び、数日後の話し合いでも「くん」の敬称で5回呼んだという。

 

 会社員はその後、体調を崩した。医療機関で睡眠障害や、うつ病と診断され、18年12月から休職した。

 

 労基署はこうした上司の発言を「性自認に関する侮辱的な言動。本人の人格を否定する精神的攻撃で、執拗(しつよう)に行われた」と指摘。会社員に強い心理的な負荷がかかり、うつ病を発症したとして、労災認定した。会社員は21年9月に復職している。

 

 読売新聞の取材に会社員は、自身の性自認に違和感を覚え、髪を伸ばすようになると、上司から「髪を切れば」と言われ、苦痛になっていったことも明かした。会社員は「上司から暴言があった時は存在を分かってもらえないことがつらく、その場で泣くほどだった。性自認は自分でコントロールできるものではなく、職場の理解が不可欠だ」と訴えた。

 

 会社員の労災申請の代理人を務めた小野山静弁護士は「長時間労働など他の要因がなく、SOGIハラのみで労災を認定した判断は評価できる。今回の認定により、SOGIハラを含むハラスメント対策がさらに進むことを願う」と話した。

 

 会社員が勤める大手製造会社は「労災が認定されたことは重く受け止めている。同様の問題が起きないよう再発防止に取り組む」とコメントしている。

 

 ◆SOGIハラスメント=恋愛対象などの性的指向(Sexual Orientation)や性自認(Gender Identity)を侮辱する行為。職場や学校で、こうした行為に悩まされてきた性的少数者らが2017年に定義した。許可なく他人の性自認や性的指向を公表する「アウティング」なども含まれる。



※ 他社のニュースも掲載致します

「女として扱われたいなら手術を」
 SOGIハラ認定、録音が決め手

 

2022年11月10日() 21:37 朝日新聞

 

 性自認や性的指向について侮辱される「SOGI(ソジ)ハラ」を職場で受けたことでうつ病を発症したとして、神奈川県にある大手メーカーの40代社員が労災認定されたことが分かった。社員が10日、東京都内で開いた記者会見での主なやりとりは以下の通り。

 

 「今回、労災申請をでき、しかも認定をとれた大きな要因は、やっぱり証拠をとっていたことが大きいのかなと思います。具体的にいうと録音をしていたということです。ハラスメントをされそうなことは、働いていると、だいたいわかるというか、この上司からまた変なことを言われるんだろうなと、きっと被害を受ける労働者は何となく気づいている。苦しんでいる人は気づいていると思います。常にというのは難しいかもしれませんが、証拠をとって、泣き寝入りせずに闘っていってもらいたいです」

 

 「女として扱われたいなら手術でも何でもすればいいじゃないかと、加害者の上司からも言われましたし、SNSなどでも性別を変更すればいいじゃないかという人もいますが、日本の性別変更のハードルの高さを知らなさすぎるんだなと感じています」

 

 「性的マイノリティーの方などに対する見方、世間の風当たりとかは、徐々にではあるが、よくはなってはいると思います。いわゆるパワハラ防止法とか、改正もされ、それが大企業だけでなく中小企業にも適用される状況になっています。これからも一労働者、一市民として、声を上げ続けていかないといけないと思っています」

 

 ――労災認定され、社会に伝えたいことをもう少し詳しく教えて下さい。

 

 「LGBTの当事者の方に、職場で進んでカミングアウトしろとか言っているわけではもちろんありません。カミングアウトしていようがしていまいが、いろんな立場の方がいると思いますが、どんな立場であってもハラスメントにあわないような職場をつくっていく必要があると思います。そのためには職場、社会全体の理解は当然重要ですし、もとづくのは法律だと思います。だから、あきらめずに政治に積極的にかかわっていってほしいし、あきらめずに日々の生活を営んでほしいし、もしハラスメントにあったら、自分の心と体が傷つかない程度に、泣き寝入りせずにある程度はがんばって闘っていただけたらと思います。そのためのバックアップとして、労働組合や労働弁護団、いろんな支援団体があります。スマホとかで情報を得られる時代なので、がんばれる範囲で動いていってもらえたらというのが、経験をふまえた願い、伝えたいことです」


《カウンセラー松川のコメント》

何か「生きに難い世の中になった」と感じてしまいました。
戸籍上の男性、見た目も男性の社員が「自分は女性です」と
言われても納得出来ない人が居て当然だと思います。
別に性自認の善悪ではなく、人としてその受け止め方にも差異があるでしょう。
少なくても、この数十年間は「性自認」と言う概念は皆無に等しかったので、
それを受け入れないのを悪と簡単に断罪かるのも安直過ぎると思うのです。
戸籍と自認の性が一致しない当人は苦しんでいるのかも知れませんが、
それを周囲ず全て受け入れてくれるとは限らないのが現状です。
報道では当該上司が意固地になっている様にも解釈出来ますが、
性自認について一方的な主張をしても感情論に発展するだけかも知れません。
今までの流れも含んでの自己主張をするのも大切かと感じました。

被害者の方へ
とても辛い思いをされたのは報道から伝わって来ました。
しかし、文化や認識を変えるには時間を要します。
自己主張も大切ですが、
それが強過ぎると返って反発を招く場合も多々有りますので
今後の権利拡大の為にもその点には注意をされた方が良いと思います。

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