「バカ」「くず」「市長を出せ」…深刻化するカスハラ
栃木県内自治体でも被害 クレームとの線引きに苦慮
2024年5月20日(月) 12:02 下野新聞
「バカ」「くず」「市長を出せ」…。栃木県内自治体で深刻化する「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の実態が、19日までに実施した下野新聞社の調査で浮き彫りになった。カスハラに対する社会の意識が高まる中、各自治体は「職員を守る」との意識で対応に取り組んでいる。
希望に沿わないと庁舎内で立腹し怒声を発し、職員の人格否定や誹謗(ひぼう)中傷を繰り返す。窓口に3時間以上も居座るほか、上司の謝罪を執拗(しつよう)に要求する。通知事項を不服として電話で長時間にわたり不満を言い続ける。後を絶たないカスハラ被害を受け、各自治体は対策を進めている。
宇都宮市や下野市では、窓口対応した職員を撮影して、交流サイト(SNS)にさらされる問題が起きた。下野市はリスク軽減を図るため、7月から名札を名字だけにする対応を決めた。
いち早く4月から名札を名字だけに切り替えた塩谷町。SNS上での被害は確認されていないが、カスハラのニュースを見た女性職員の声を受けて変更した。「町民から苦情はなく、名札を替えたデメリットはない」(同町)。
宇都宮市は「長時間の電話や窓口業務で内部業務が滞る面もあった」としている。防犯カメラの増設や録音機能付き電話導入検討など他自治体よりさらに踏み込んだ対策を取っている。
利用者の苦情などに対して、自治体側はこれまで「我慢するもの」という意識が根強かった。しかしカスハラが社会問題となり、認識も変わってきている。一方でカスハラは比較的新しい概念で、明確な定義がない。このため自治体側も正当なクレームとカスハラの線引きに苦慮しているのが実情でもある。下野市は「市側の説明不足など正当な苦情もある。カスハラ対策で住民サービスを低下させることがあってはならない」と強調する。
カスハラによって職員が離職する問題も全国的に起きている。塩谷町は「対策を講じることで、職員を守る姿勢や職場環境の改善を通じて役場は働きやすい職場であることをアピールできる側面もある」としている。
【カスタマーハラスメント(カスハラ)
】customer(顧客)とharassment(嫌がらせ)を組み合わせた造語。客や取引先が立場を利用して従業員らに暴言を吐いたり、不当な言いがかりをつけたりする迷惑行為を指す。従業員らが心身に不調をきたして離職に追い込まれるなど社会問題になっている。サービス業を中心に民間企業で対策強化が進む。国も対策を企業に義務付ける検討に入り、東京都や北海道議会では条例制定を目指す動きがある。
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