2024年5月30日木曜日

▼役場へのカスハラ、対応手順を明示し組織的に対策…「呼び出された職員が半日戻れなかった」例も

役場へのカスハラ、対応手順を明示し組織的に対策
…「呼び出された職員が半日戻れなかった」例も

 

2024年5月30日() 16:14 読売新聞(立山光一郎)

 

 悪質なクレームや不当な要求を受ける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を防ぐため、鳥取県江府町が対応要領を作成し、運用を始めた。その場しのぎにしない毅然(きぜん)とした対応で、統一した手順に基づき、組織的に対策を講じていくとしている。

 

カスハラ対応要領を作った江府町。役場の窓口では職員がマニュアルに沿って対応する

 

 カスハラは民間企業だけの問題ではない。全国の自治体や病院の職員を対象に自治労が2020年に行った調査では、全体の半数近くが過去3年に被害を受けたと報告した。県は04年に「県不当要求行為等対策要綱」を、京都市は07年に「市職員の公正な職務の執行の確保に関する条例」を制定するなど対策している。

 

 江府町によると、役場窓口でのカスハラは年に数件程度だが、「大きな声をあげられた」「呼び出された職員が職場に半日戻れなかった」「公共施設の修繕を電話で執拗(しつよう)に求められた」といった事例があった。応対した職員が体調不良になり休職したケースもあったという。

 

 今回、同町は厚生労働省が22年に策定した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」にならい、独自に対応要領を作成した。組織的に対応するための基本的なルールを示すことで、健全な職場環境や職員の健康を維持する。

 

 例えば、長時間にわたって職員を拘束したり、居座ったりするような場合には、30~60分を目安にルールを説明した上で「これ以上の対応はできない」と告げる。さらに15分程度経過した時点で対応を打ち切ると伝え、それでも居座る場合は再度退去を求め、応じない場合には警察に対応を要請すると告げる――と手順をマニュアル化した。

 

 また、警察への通報は町長、副町長、総務課長の指示に基づいて行い、要領には、通報する際の状況説明例も示した。このほか、複数の職員で対応し、情報を庁内で共有することや担当者に一人で対応させないことを明記した。

 

 町民からは「行政に対する意見、提案などを言わせないようにするためか」という意見も寄せられたが、町は「意見封じの意図はない。対応のルールをあらかじめ公表し、冷静に問題の解決に臨むための環境を整えることが目的」とする。

 

 今月1日に運用を開始し、29日時点で、該当する事例はない。八幡徳弘副町長は「対応要領の公表は手の内を明かすこと。『役場がそこまで考えているのか』と思ってもらえる」と効果を期待する。対応要領は、町のホームページで公開している。

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