銀行員が自殺
…異動先で未経験業務、怒鳴る上司「数字が上がらない」
追い詰められた25歳 労災認定、銀行「風通し良くする」
上司の具体的な処分内容は不明、
遺族「命を落とすまで数字を追わせるのでしょうか」
2024年5月16日(木) 17:22 埼玉新聞
2017年に東和銀行川越支店(埼玉県川越市)に勤務していた男性行員=当時(25)=が上司のパワーハラスメントなどを受けて自殺し、昨年8月10日に川越労働基準監督署から労災認定されていた問題で、同行は労働問題の再発防止策を発表した。
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再発防止策は主に、(1)ハラスメント研修などを継続的に実施し、業務の目標設定を本部主導から営業店の自主設定に変更する(2)人事部などの担当者が職場環境やハラスメントの有無についてヒアリングを行うと同時に、従業員組合でも独自調査を行い、監査部が結果を経営陣に共有する(3)若手行員の育成方法を結果重視からプロセス重視に変更し、融資案件などの相談を本支店が一体で支援する―ことの3点。17年10月から順次着手しているという。
同行は「行員一人一人が安心して働ける風通しの良い企業風土を築けるよう全行を挙げて取り組んでいく」とした。17年12月に当時の川越支店長、副支店長、上司を社内規定にのっとり処分したが、具体的な内容は明らかにしていなかった。
■遺族「ただただ悲しい」(以下、初報記事)
東和銀行(群馬県前橋市)の川越支店に勤務していた男性行員=当時(25)=が2017年に自殺し、川越労基署から労災認定されていたことが7日までに、関係者への取材で分かった。認定は昨年8月10日付。異動後の未経験業務に加え、日常的に強い口調で叱責(しっせき)されるなど上司によるパワーハラスメントにより心理的負荷が重なったとされる。
遺族の代理人弁護士によると、男性は17年4月に川越市の川越支店に異動し、法人渉外課に配属。その後、上司から日常的に「稟議(りんぎ)書作成が遅い」「企業分析が下手」「数字が上がらない」などと怒鳴られ、返事以外の発言をすることがはばかられる環境で仕事をしていた。また、同年5月ごろには顧客から会社として応じることができない無理な注文を受けていたこともあったという。
追い詰められた男性は同月31日、出社せずに自殺。直前には「転勤して、問題ばかり起こしてしまい、皆さんにご迷惑をおかけしてしまっていることを非常に悩んでおりました」「その事を支店の中で、誰にも相談できず、どうにもならなくなってました」などとメモを残していた。
遺族は「夢と希望を持って社会人になった息子が、自ら死を選択してしまったことは、ただただ悲しい。命を落とすまで数字を追わせるのでしょうか。そんな組織を変えてほしい」と訴えている。
川越労基署は男性が同年5月ごろに適応障害を発病していたとして、許容される範囲を超える精神的攻撃を受けたと認定。代理人の立野嘉英弁護士は「若手行員の異動に伴う業務内容と経験・能力とのギャップや、相談しにくい職場環境による負荷も評価された」とし、「従業員のメンタルヘルス対策として、パワハラ防止は当然ながら、未経験業務を担う人をフォローし、相談しやすい職場環境や体制をつくっていくことも重視すべき」と指摘した。
埼玉新聞の取材に東和銀行は「残念なことが起きたと受け止めている。遺族に対しては真摯(しんし)に対応したい」とコメントした。
■埼玉労働局、相談を受け付け
埼玉労働局では、平日の日中、最寄りの労基署で労働環境などに関する相談を受け付けている。このほか電話相談窓口として「労働条件相談ほっとライン」(電話0120・811・610)=平日は午後5時~同10時、土日祝日は午前9時~午後9時=を開設。また、厚労省は勤労の悩みや精神衛生に関する電話相談窓口「こころの耳」(電話0120・565・455)=月・火曜は午後5時~同10時、土日は午前10時~午後4時=を設置している。
■厚生労働省は悩みを抱えている人の相談窓口の利用を呼びかけていて、埼玉でも「埼玉いのちの電話」で受け付けています。
【埼玉いのちの電話】
・相談電話
048(645)4343
・フリーダイアル
0120(783)556
・ナビダイヤル
0570(783)556
【日本いのちの電話】
・ナビダイヤル
0570(783)556
午前10時~午後10時
・フリーダイヤル
0120(783)556
毎日:午後4時~同9時
毎月10日:午前8時~翌日午前8時
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