2025年9月5日金曜日

▼教職員パワハラ再発防止動画 自殺した野球部員の遺族「問題多い」

教職員パワハラ再発防止動画 自殺した野球部員の遺族「問題多い」

 

2025年9月3日() 12:20 朝日新聞(小沢邦男)

 

 県立岡山操山高校2年の男子生徒が2012年、所属していた野球部の監督からの激しい叱責(しっせき)により自殺した問題を受け、県教育委員会が再発防止に向けた啓発動画をつくった。動画サイトなどで公開している。遺族の要望に基づく動画作成だが、遺族側は「核心の部分で私たちの意見が反映されていない」としている。

 

■岡山県教委が動画作成

 動画は教職員と生徒を対象にしたもの。今年1月に県教委が発表した再発防止策に含まれる「体罰・不適切な指導・ハラスメント防止ハンドブック」を紹介している。

 

 生徒が教職員からの体罰や不適切指導、ハラスメントに気づき、助けを求める行動が取れるよう指南する。また教職員には自らの行動や指導を振り返り、こうした行為を根絶する一助にしてもらうとした。

 

 「導入」「事例」「まとめ」で構成。導入では体罰などの基本的な考え方を示す。事例は各5分程度で、野球や柔道、サッカーの部活動、体育や教室での授業中などに起きたとの想定で10本用意した。まとめでは生徒にSOSの出し方を指南し、教職員には体罰などを起こさないためのポイントの確認を促す。

 

 動画制作の外部業者に委託し、事業費は790万円。前年度末に完成し、これまでに69ある県立学校の全教職員、生徒の大半が視聴したという。

 

 一方、動画に併せて遺族の思いも県のホームページに載る。「生徒が教職員からのパワハラなどについて学習する全国に類を見ない取り組み」とするも、「遺族意見の反映が不十分で、問題が多いといわざるを得ない」と指摘する。

 

 例えば、動画では学校から体罰などをなくすために「みなさんも家族や友だちと話してみませんか」と生徒たちに呼びかける場面がある。

 

■「教師側の責務からのすり替え」

 これに対し遺族は「教師側の責務からのすり替えだ」とし、修正を求め続けてきたと強調。「教師側の問題を改善することが生徒側の責務であるかのような言い分」「学校や県教委が責任を持つという自覚が欠如している」と批判する。

 

 また動画の作り方が、体罰やパワハラなどを受けた後の助けを求める行動に焦点を合わせているとして問題視。「生徒が教師のパワハラ指導に『気づく』ことの重要性に関する説明が一切ない。息子は監督のパワハラに気づけさえすれば自死することはなかった」とし、再発防止策として受け入れられないとする。

 

 県教委は「『気づき』が大切なのは大前提で、そのために10の事例を用意した。遺族の意向はできる限り反映している」と説明する。動画を含めた再発防止策は今後、生徒に実施する視聴アンケートなどに基づき評価・検証され、必要に応じて修正するという。

 

 遺族は「息子の死を無駄にしないため県教委へできる限り働きかけを続けるが、遺族単独では困難を極めている」と強調。「県民や全国の有識者とこの動画の問題点を共有し、的確な改善や県教委の体質改善に向けた働きかけをお願いしたい」と訴える。

 

 動画のアドレスなどはこちら(https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/988818_9526699_misc.pdf)から確認できる。


 

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