議員のハラスメント防げ 福島県内 意識改革効果徐々に
職員への不適切言動根絶へ市町村議会に条例化広がる
2025年1月27日(月) 11:01 福島民報新聞
福島県内の市町村議会で、議員から自治体職員へのハラスメントを防ぐ動きが出ている。昨年に条例を定めた白河市議会と金山町議会に続き、会津美里町議会が15日に条例案を可決。西会津町議会は3月の制定を目指す。威圧的・性的言動などが全国で問題となる中、組織として抑止力を高める狙いがあり、制定した議会からは意識の高まりを感じるとの声が上がる。専門家は条例が議員と職員の適切な関係性づくりに有益とした上で、研修の充実などの努力を続ける必要性を指摘する。
59市町村の議会事務局に条例化などの状況を福島民報社が聞いた。白河市、金山町、会津美里町の3議会が条例を制定済み、西会津町議会が制定予定とした。
会津美里町議会では、町議による不適切な振る舞いが改革の契機となった。特別委が行った調査で、回答した職員らの3割弱が過去10年間に町議(元職含む)からハラスメントを受けたと回答。「威圧的・高圧的な発言、理不尽な罵倒をされた」「無視された」といったパワハラや、「体を触られた」「容姿をからかわれた」などのセクハラを疑わせる訴えが届いた。町民アンケートでも回答者の6割弱が町議会の現状を「評価しない」と答え、ハラスメントを問題視する記述もあった。
特別委委員長を務めた根本謙一副議長(76)は、住民の負託を受けた議員は条例がなくとも範を示すべき存在との立場だ。ただ、不適切な行いを放置すれば「町の業務に支障が出るだけでなく、議会への信頼の失墜につながる」との危機感から条例化に踏み切った。検討過程での研修などにより議員の問題への認識は深まったとみており、同町の男性職員は「言動に気をつけようという姿勢を以前より感じる」と受け止めている。
白河市議会も市議から職員への問題行動を発端に特別委を設置。有識者を招いた研修など調査研究を積み重ね、昨年の9月議会で議員提出の条例案を可決した。議会の承認を得た上での「当該議員の氏名を公表する」などの対応を条文に盛り込んだ。石名国光議長(77)は「議員間に言動を注意し合う空気が生まれている」と制定後の変化に触れた上で「『うっかり』『つい』の言動でも相手を傷つけかねない。十分な注意が必要だ」と意識改革の重要性を説く。
■未然防止で動く議会も
問題が表面化する前段からハラスメントに当たる行為や対応を定義し、未然防止を図る議会もある。
金山町議会は「ハラスメントに関する心構えを明文化すべき」との若手議員の提案を機に検討委で条例作りを進め、昨年の3月議会で可決した。委員長を務めた栗城康太郎議員(69)は「転ばぬ先の杖(つえ)」と狙いを説明。「ベテランほど自覚なく慢心した対応をしてしまう恐れがある。議員と職員が言動に注意を払う効果が出ている」と手応えを口にする。
このほか、楢葉町議会は条例制定に向けた検討を始める方針、三春町議会は条例が必要とする意見があると回答。田村市議会は昨年に設けた特別委で、ハラスメント対応を含む改革策を協議中としている。
■研修充実させ実効性担保を
地方自治研究機構(東京都)によると、議員のハラスメント防止に関し単独条例を持つ自治体は昨年12月26日時点で全国86に上る。公務員研修協会(大阪市)代表理事の高嶋直人さんはハラスメントを防ぐ重要性が社会に認知され、自治体における「最高法規」の条例化が広がったとみる。
議員によるハラスメントの背景として(1)執行部を厳しく監視する使命感(2)公務員としての自覚の薄れ(3)選挙が機能していない(4)研修の少なさ―などを挙げた上で、条例は「最低限の抑止効果」と評価する。実効性を保つためには、問題への理解を深める研修の充実などが鍵になると指摘している。
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