2025年1月17日金曜日

相馬地方広域消防内におけるパワーハラスメント行為に関する最終答申書 追補

相馬地方広域消防内におけるパワーハラスメント行為に関する
最終答申書 追補

2025年1月17日(金) 相馬地方広域消防本部

標記の関する文書が相馬地方広域消防本部のホームページに掲載をされましたので、
拙ブログでは転載致します。
尚、文書URLは以下のとおりです。
obj20250117133501566164.pdf 

第1 本最終答申書追補の位置づけ
 本最終答申書追補は、当委員会が第二次答申書(中間答申)において指摘した令和5年9月の厳重注意措置事案(同答申書第4、2)及びパソコン所管換えに伴う情報漏洩事案(同答申書第4、4)に関して、消防長及び次長が管理監督者としてとるべきであった行為について指摘するものである。
 第二次答申書(中間答申)及び最終答申書において指摘したとおり、「相馬地方広域消防職員のハラスメント防止及び排除に関する規程」が制定された当時から、相馬地方広域消防本部及び組合事務局のハラスメント案件に対する対応は規程に沿わないものであったし、また、同消防本部においてハラスメントに関連する情報の管理は適切になされていたとは言いがたい。このことから、上記事案に対する消防長及び次長の対応について、ハラスメント案件に対する対応やハラスメントに関連する情報の管理について前任者から適切な引継ぎを受けていなかったという斟酌すべき点はあるものと考えられる。
 しかし、これまでの当委員会による調査全体を踏まえて検討すると、前記厳重注意措置事案及びパソコン所管換えに伴う情報漏洩事案において、過去の事案と比較しても、管理監督者として極めて大きな不備がある。
 パワーハラスメントを防止することは、職場環境における安全配慮義務として位置づけられるものであり、上記事案において管理監督者としての重大な安全配慮義務違反があると考えられる。
 再発防止の観点から、上記事案に関する問題点及び管理監督者として取るべきであった行為を具体的に指摘するものである。

第2 令和5年9月の厳重注意措置事案における消防長及び次長の管理監督者としての責任について
 1 令和5年9月の厳重注意措置事案の経緯(概要)
 詳細は第二次答申書(中間答申)別表記載のとおりであるが、概要は次のとおりである。
 令和5年5月、加害職員が、救助訓練の指導者として後輩職員らを指導していたが、同年5月15日、福島県消防救助技術大会の出場選考会終了後、チームの成績に不満を抱き、チームに関わっていた後輩職員らに対して、「おまえら、ほふく辞めちまえ」「おまえらクビだ」などと言い、また、特定の後輩職員に対して「何だ、その目は」などと言い、執拗に責めるなどし、更に、チームに関わるグループLINE上で、チームに関わっていた後輩職員らに対して、「電話してくんな。家に来たら殺す」「全員許さんからな」などと投稿するパワーハラスメ ント事案が発生した。
 この事案において、警防課長は消防長の指示のもと、6月14日から15日にかけて関係者のヒアリングを実施してその結果を消防長に報告し、6月16日に加害職員との話し合いを行い、その結果を消防長に対して報告していたが、消防長は特に何らの対応もとらなかった。
 消防長及び次長としては、加害職員が何らかの処分対象であると考えていたが、加害職員が個々の被害職員に対して謝罪している、被害職員は前向きな方向に向かっている、加害職員を救助訓練から外していると認識していた。また、消防長には、6月から8月にかけて、県大会、東北大会、全国大会があり、他の職員が大会に向けて頑張っている雰囲気を壊したくないという意識があった。
 その後、令和5年8月 21 日、組合事務局総務課長が消防長及び次長に対して、ハラスメントに関するアンケート結果を報告し、このとき、組合事務局総務課長から消防長及び次長に対して、消防長としての処理が必要な事案 であるとして対応を促した。
 この時点で、次長は、「相馬地方広域消防職員のハラスメント防止及び排除に関する規程」に沿って処理する必要があると判断していた。令和5年9月1日頃、消防長及び次長は、加害職員に対するヒアリングの結果を踏まえて対応を協議し、過去の事案における対応を参考にして、指導上の措置としての厳重注意が相当と判断した。
 この判断を踏まえて、令和5年9月7日、次長から消防長に対して「消防長による厳重注意が相当」とする報告書が提出され、9月20日、消防長が加害職員に対して「恐怖感を与える強い口調で指導する不適切な言動」があったとして厳重注意措置をした。
 このパワーハラスメント事案は、加害職員に対する厳重注意措置がなされた後も、被害職員において強度の心的ストレスが継続した結果、病気休暇に入るという重大な結果を生じた。

 2 パワーハラスメント事案に対する消防長及び次長の管理監督者としての責務
 1) 消防長の責務
 消防長は、消防本部事務を統括し、消防職員を指揮監督する立場にある(相馬地方広域消防本部組織規則第4条2項)。
 また、消防長は、「相馬地方広域消防職員のハラスメント防止及び排除に関する規程」において、ハラスメントの防止及び排除のために実施する措置に関する調整、指導及び助言にあたらなければならないとされ(第4条)、更に、ハラスメント対応委員会による事実関係の調査の結果、ハラスメントの事実が確認された場合は、懲戒処分を含む必要な処置を講ずるものとされている(第14条)。
 更に、消防長は、規程上、職員の規律違反について懲戒審査会に審査を要求する権限を有する唯一の者である(相馬地方広域市町村圏組合職員の懲戒の取扱いに関する規程第7条)。

 2) 次長の責務
 次長は、消防長の職務を補佐し、消防本部事務を掌理する立場にある(相馬地方広域消防本部組織規則第5条2項)。
 また、次長は、「相馬地方広域消防職員のハラスメント防止及び排除に関する規程」において、ハラスメント案件の事実関係の調査、対応措置の審議等を行うハラスメント対応委員会の委員長を務めると定められている(第11条)。
 よって、次長は、ハラスメント事案への対応において、適切に消防長と連携し、消防長を補佐すべき責務を負うものと解される。

 3 令和5年6月16日頃の消防長の対応について
 消防長は、警防課長から報告を受けた後、本件事案について何らの対応指示をしないまま、その後、令和5年8月21日に組合事務局からハラスメントに関するアンケートの結果が報告されるまで時が経過している。
 しかし、6月16日頃までに警防課おいて作成したヒアリングの記録により、加害職員によるパワーハラスメント行為があったことは十分に認められるところであり、消防長は、懲戒審査会に審査を要求する権限を有することに基づき、6月16日頃の時点で、懲戒審査会に本件事案の審査を要求すべきであった。
 この点は、本件事案の一連の経過のなかでも、重大な安全配慮義務違反である。

 4 令和5年9月1日頃の消防長及び次長の対応について
 本件事案は、令和5年8月21日に組合事務局からハラスメントに関するアンケートの結果が報告されるまでの間、被害職員に対する事実関係の確認が実施されていないばかりか、加害職員が訓練に参加していることで被害を拡大させていた。
 その後、令和5年9月1日頃、消防長及び次長において、被害職員に対する事実関係の確認を行わないまま、指導上の措置としての厳重注意が相当と判断した点は著しく不当である。
 消防長は、ハラスメントの防止及び排除のために実施する措置に関する調整、指導及び助言をすべき義務を負うことに基づき、「相馬地方広域消防職員のハラスメント防止及び排除に関する規程」に沿って被害職員に対する事実関係の確認の機会を確保したうえで、懲戒審査会に本件事案の審査を要求すべきであった。
 また、次長は、ハラスメント事案への対応において、適切に消防長と連携し、消防長を補佐すべき責務を負うことに基づき、「相馬地方広域消防職員のハラスメント防止及び排除に関する規程」に沿って被害職員に対する事実関係の確認の機会を確保したうえで、消防長において懲戒審査会に本件事案の審査を要求するよう、あるいは少なくともハラスメント対応委員会に委任するよう、助言すべきであった。

第3 パソコン所管換えに伴う情報漏洩事案における情報セキュリティ責任者及び情報セキュリティ管理者の責任について
 1 パソコン所管換えに伴う情報漏洩事案の経緯
 令和4年7月、それまで当時の次長(現消防長)が使用していたパソコンを更新し、更新後の旧パソコンを、消防本部通信指令室に所管換えした。しかし、その所管換えの際、専ら次長のみが取り扱うべきデータについて、消去が完全にはなされておらず、ハラスメントに関する調査記録、人事評価に関する記録、管轄外居住者に関する記録等が残っていた。
 令和5年8月、消防本部通信指令室において、消防本部職員が上記パソコンを使用していた際、組合事務局が従前実施したハラスメントに関する調査記録のデータが残されているのを発見した。
 その調査記録には、発見した職員自身が加害職員とされるハラスメント事案の調査記録が含まれていた。
 発見した職員は、パソコン内に、組合事務局が従前実施したハラスメントに関する記録のデータが残されていたことを速やかに報告せず、翌日以降、警防課長と喫煙所で一緒になった際に、警防課長に伝えた。
 その後、警防課長は消防長に対して、通信指令室のパソコン内に、組合事務局が従前実施したハラスメントに関する記録のデータが残されていたことを報告し、消防長は警防課長に対して当該記録のデータを消去するよう指示した。
 その後の経緯については、消防長及び警防課長の記憶に齟齬があるところであるが、大筋としては、消防長から警防課長に対して、次長が使用していたデータが格納されているフォルダを消去するよう指示があり、警防課長において発見した職員の立ち会いがないまま当該フォルダを消去した。
 この事案では、発見した職員によりハラスメントに関する調査記録のデータが漏洩し、消防職員らの通報・相談窓口やアンケートに対する信用、信頼を失墜させるという重大な結果を生じた。

 2 情報セキュリティに関する消防長及び次長の責務
 1) 消防長の責務
 消防長は、情報セキュリティ責任者として、消防本部の情報セキュリティ対策に関する統括的な権限及び責任を有する(相馬地方広域市町村圏組合情報セキュリティポリシー、情報セキュリティー対策基準4)。

 2) 次長の責務
 次長は、消防本部総務課長の事務を取り扱うことから、情報セキュリティ管理者として、消防本部の情報セキュリティ対策に関する権限及び責任を有する(相馬地方広域市町村圏組合情報セキュリティポリシー、情報セキュリ ティー対策基準4)。

 3 令和4年7月、パソコン所管換えの時点での当時の情報セキュリティ管理者(当時の次長、現消防長)の対応について
 ハラスメントに関する記録のデータは、秘密の保持が徹底されるべきものであり、次長が従前使用していたパソコンを、所管換えにより消防本部通信指令室で使用する前の時点で、次長が取り扱っていたハラスメントに関する記録のデータが完全に消去されていなかったことは、情報セキュリティ管理者としての重大な注意義務違反である。
 情報セキュリティ管理者であった当時の次長(現消防長)は、所管する部局の情報セキュリティ対策に関する責任を負っていたものであり、パソコンの所管換えにより、次長のみが取り扱うべきデータが、他の職員に閲覧されることのないよう、データを完全に消去すべき職務上の義務があった。

 4 令和5年8月、警防課長から報告があった際の情報セキュリティ責任者 (消防長)の対応について
 消防長が警防課長にデータを消去するよう指示したこと自体は適切であるが、その具体的な手法として、データを発見した職員の立ち会いのないまま、次長が使用するデータが格納されているフォルダを消去しただけであったことは、情報セキュリティ責任者としての注意義務違反である。
 本来であれば、消防長は情報セキュリティ責任者として、情報セキュリティ管理者である次長の指示のもと、発見した職員に立ち会わせて、当該データを特定し、消去する対応をさせるべきであった。
 更に、後日、消防長から発見した職員に対して、どのようなデータが残されていたのか、誰が閲覧したのか等について報告を求め、発見した職員から消防長に対して書面による報告がなされたとされているが、情報漏洩の態様 及び被害状況等は記録として残されなかった。これは、消防長が、発見した職員に対して、情報セキュリティに関する事故として所定の報告書作成と提出をさせなかったという不適切な対応によるものである。

 4 結語
 以上のとおり、令和5年9月の厳重注意措置事案及びパソコン所管換えに伴う情報漏洩事案に関して、消防長及び次長において職場環境にかかる重大な安全配慮義務違反があったものと認められる。

 以 上

令和6年12月26日

相馬地方広域消防内におけるパワーハラスメント行為に関する第三者委員会
  委員長 安村誠司
  委員  藤野美都子
  委員  渡辺慎太郎


《カウンセラー松川のコメント》

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「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: 相馬地方広域消防内におけるパワーハラスメント行為に関する 最終答申書
これの追補です。
詳細で具体的な記載があり、
外部の閲覧者としても分かり易く記載されています。
この答申書追補も他山の石とはせず、
それぞれの部署での留意点として活用される事を切に願います。



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