消防内部のハラスメント176件 処分の6割が署長や補佐役
初の全国調査
2025年2月17日(月) 13:30 琉球新報(共同通信)
全国各地の消防本部や消防署で2023年度に暴力や性的嫌がらせなどハラスメント行為が少なくとも176件発生し、幹部級を含む206人が懲戒処分されていたことが16日、総務省消防庁による初の実態調査で分かった。有識者は厳しい上下関係や階級制などの特殊な職場環境が背景にあると指摘。放置すれば人材確保が一層難しくなり、地域の防災力低下につながる恐れもある。再発防止に向け、同庁は研修強化など対策を呼びかける通知を出した。
各地の消防でハラスメントが相次ぎ、同庁は24年7~8月、全都道府県の担当部署に23年度の実態報告を求めた。
集計結果によると、最多はパワハラで145件。次いでセクハラ19件、パワハラやセクハラなどが複合した「複数のハラスメント」が11件、妊婦への嫌がらせ「マタハラ」は1件だった。上司から部下へのハラスメントが83・5%を占め、同僚から同僚は15・3%、部下から上司は1・1%だった。処分内容は1人が免職、17人が停職、43人が減給、32人が戒告、半数超の113人が訓告など。
組織の中堅が大半で、人口10万人未満の地域の消防署長などに相当する消防司令と、その一つ下の階級の消防司令補で合わせて60%を超えた。階級がより高い消防正監や消防監、消防司令長が処分された例もあった。
年代は50代が最も多く、以下、40代、30代の順。発生場所は、執務室が107件と大半だった。食堂や車内、ガレージ、訓練室でも起きていた。
実態調査では個別事例の具体的内容は尋ねていないが、顔を蹴ったり靴に酒を入れて飲ませたりといった行為が各地で発覚している。
総務省消防庁は1月29日付で各都道府県の消防担当部署などに予兆の早期発見や研修を呼びかけた。同庁は「ハラスメントは許されない行為で、職員の士気低下や職場環境の悪化にもつながる。対策徹底を求めていきたい」としている。
公務員研修協会(大阪市)の高嶋直人代表理事は「パワハラは階級組織で起きやすい」と指摘。消防組織には憲法に基づく団結権が認められていないとして「抑止力が働きづらく、声を上げにくい。管理職や現場のトップがマネジメントスキルを持ち合わせていない場合が多い。処分の厳格化とともに組織的支援が求められる」と話している。
「氷山の一角」対策急務
災害や火災から地域を守る各地の消防で職員に対するハラスメント行為が問題化している。過去に公表された事例では、訓練中の暴言や酒席での暴力など内容はさまざま。被害を受けた職員の退職が相次ぐ消防本部もあり、対策が急がれる。閉鎖的とされる独特な職場環境も要因とみられ、消防関係者からは「各地で明るみに出ているのは氷山の一角だ」との指摘も出ている。
機能不全
「殺すぞ」「おまえん家なんか沈めばいい」。宮崎県高千穂町など3町でつくる西臼杵(にしうすき)広域行政事務組合消防本部では2024年12月までに一般職員27人中20人が上司からパワハラを受けたと訴えた。
同事務組合議会が設置した調査特別委員会(百条委員会)では10~12月、一般職員、幹部、退職者ら関係者50人への証人尋問を行った。百条委の佐藤さつき委員長によると、上司からのパワハラでうつ病や適応障害になり、休職に追い込まれた職員もいた。
25年1月、被害者らが加害者を同本部や西臼杵消防署で勤務させないよう求める嘆願書を同議会側に提出。百条委が2月3日に公表した調査報告書は、上司3人による計26件のハラスメントを認定。「組織は、浄化作用が機能不全状態だった」などと結論付けた。同本部では15年の開設以降、7人が退職し、24年12月末に新たに1人が職場を去った。被害を訴えた職員のうち約半数が退職を検討しているという。
西臼杵広域行政事務組合消防本部で開かれた百条委員会=2024年12月、宮崎県
閉鎖的職場
同様のハラスメントは各地で起きている。福島県の相馬地方広域消防本部では数年前からパワハラが相次いで発覚し、24年12月までに約10人を処分。後輩職員を骨折させたり、金銭を要求したりしていた。24年2月に第三者委員会が聞いたアンケートでは、応じた職員127人の約6割がハラスメントがあったと回答した。神奈川県の海老名市消防本部は21年、複数のパワハラがあったとして職員計5人を懲戒処分した。部下の髪を勝手に切るなどしていたためだ。
総務省消防庁はハラスメントの多発を受けて17年に有識者検討会を開催。研修の充実や通報制度の確立といった対策をまとめ、各消防本部に通知した。22年には、約8割の本部で研修を実施しているが、不祥事は後を絶たない。
大阪府の消防本部に勤める30代男性は「消防は上下関係が厳しく、閉鎖的な職場だ。ハラスメントを周囲に相談しても、うやむやになるケースもある」と声を潜めた。
《カウンセラー松川のコメント》
拙ブログ2月16日付け記事
「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: 【独自】消防職場でハラスメント多発 初の全国調査、176件判明
これの続報です。
琉球新報のニュースですが、基となっているのは共同通信の記事ですが、
基ニュースでは総務省消防庁の発表を報じているだけですが、
琉球新報ではデータからの分析や関連情報を載せた形ですので、
拙ブログに掲載を致しました。
常備消防でのハラスメント事案、特にパワハラ事案は鎮静化しておりません。
加害者を出さないよりも、被害者に対する迅速丁寧な対応が現実的です。
ハラスメント事案で自然鎮火を待っても、拡大するばかりの上に、
内部で密かに処理も出来なくなります。
幹部の適切な対応は当然ですが、全職員による報連相も必要です。
0 件のコメント:
コメントを投稿