全国消防本部でのハラスメント 2023年度に176件 消防庁調査
2025年2月19日(水) 6:33 NHK
全国の消防本部で、2023年度にパワハラやセクハラなどのハラスメントが176件にのぼったことが、総務省消防庁の調査でわかりました。
総務省消防庁は、各地の消防からハラスメントの報告が相次いだことなどから、全国720のすべての消防本部を対象に、2023年度の実態を調査しました。
その結果、ハラスメントと認定されたのは176件で、このうち
▽パワハラが145件と最も多く
次いで
▽セクハラが19件
▽複数のハラスメントが11件
▽マタハラが1件でした。
ハラスメントを行った側と受けた側の関係は
▽上司から部下が147件と、全体の8割を超え
次いで
▽同僚から同僚が27件
▽部下から上司が2件
となっています。
ハラスメントが起きた場所は
▽執務室が107件と最も多かったほか
▽ガレージと食堂、車内が、それぞれ21件
▽訓練室が19件などと
管理職の出入りが少ないガレージや訓練室でも相次ぎました。
懲戒処分などを受けたのは206人で、年代別では
▽50代が89人
▽40代が68人
▽30代が35人
▽20代が9人
▽60代が5人でした。
調査結果を受け、総務省消防庁は全国の消防本部に
▽通報や相談をしやすい環境づくりや
▽ハラスメントや予兆の早期の把握
▽職位や勤続年数に応じた研修
などの対策の徹底を通知しました。
村上総務大臣は「ハラスメントは、個人の尊厳や人格を侵害する許されない行為だ」と述べ、消防本部の対策を支援する考えを明らかにしました。
ことしも暴力行為で懲戒処分が
浮き彫りになった消防組織のハラスメントの実態。
今月も、明らかになった事例があります。
和歌山県紀美野町は今月5日、地元の消防本部で部下の胸倉をつかむなど暴力行為をしたとして、50代の課長を減給の懲戒処分にしたと発表しました。
匿名の情報をもとに、町が委員会を設置して職員への聞き取りなど調査を進めたところ、複数の職員の証言から暴力行為があったと認定されたということです。
また、監督責任を果たしていなかったとして、上司にあたる消防長と消防署長を厳重注意しました。
専門家 “人材育成の強化が重要”
消防組織などにハラスメント防止の研修を行っている「公務員研修協会」の高嶋直人代表理事に話を聞きました。
ハラスメントが相次いでいることについて、高嶋さんは
▽上司の命令が尊重される「上意下達」の気風が強い階級組織が背景にあるほか
▽複数の自治体で構成する広域連合では、責任の所在があいまいになり、各自治体のトップが当事者意識を持ちにくいことや
▽消防組織に労働組合がないことも影響しているのではないかと分析しています。
そのうえで、高嶋さんは「少子化で人材獲得競争が激化する中、職業を選択するときにハラスメントが相次ぐ組織を選ぶとは考えにくく、人手不足になりかねないのが一番の問題だ。『人的インフラ』ともいえる消防組織において、ハラスメント防止は極めて優先順位の高い課題だといえる」と指摘しています。
そして、対策については「厳罰化が進むと隠蔽が行われてしまうという側面もあるので、組織としてマネジメント力の向上に取り組むことが一番の近道だ」として、管理職を中心に研修を実施するなど、人材育成の強化が重要だという認識を示しました。
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