病気で死亡 龍ケ崎の消防隊員 公務との因果関係認める判決
2025年2月17日(月) 17:40 NHK
8年前、茨城県龍ケ崎市の消防隊員が勤務としてトレーニングをしていた際、病気で死亡したことをめぐり、公務災害と認められなかった処分の取り消しを遺族が求めた裁判で、東京地方裁判所は病気の発症と公務との間に因果関係が認められるとして、処分を取り消す判決を言い渡しました。
稲敷広域消防本部の龍ケ崎消防署で高度救助隊の隊員として勤務していた当時25歳の男性は、2017年11月、不整脈を起こして亡くなりました。
当時は勤務中に「体力錬成」と呼ばれるトレーニングをしていて、死亡後、男性には基礎疾患の所見が確認されたということです。
遺族は公務災害を請求しましたが、地方公務員災害補償基金茨城県支部は「『体力錬成』は長年、日常的に行われていて、急激な作業環境の変化はなかった」などとして棄却していました。
遺族は地方公務員災害補償基金を相手に訴えを起こし、17日の判決で東京地方裁判所の矢崎達也裁判長は「およそ4年半にわたって継続して行っていた『体力錬成』は、基礎疾患を悪化させる要因となりうる十分な過重性を有する」としました。
その上で、病気の発症と公務との間に因果関係が認められるとし、公務災害棄却の処分を取り消す判決を言い渡しました。
この判決について、地方公務員災害補償基金は「判決の内容を精査し、今後の対応について検討していく」としています。
また、稲敷広域消防本部は「判決の結果が届いておらず、コメントできない」としています。
訓練は「アスリート並みの負荷」
死亡の消防職員の公務災害、東京地裁が不認定取り消し
2025年2月17日(月) 20:14 産経新聞
茨城県龍ケ崎市の消防署で勤務時間中に倒れて死亡した男性救助隊員の遺族が、地方公務員災害補償基金に公務災害と認定しなかった処分の取り消しを求めた訴訟の判決が17日、東京地裁であった。野口宣大裁判長は「死因と公務の間には相当因果関係がある」として、処分を取り消した。
高度救助隊の隊員だった宮本竜徳(たつのり)さん=当時(25)=は平成29年11月、訓練中に倒れ、亡くなった。死因は致死性不整脈。その後の解剖で、心筋症の基礎疾患があったことがわかった。
基金側は「死因は公務で引き起こされたものではない」として、公務災害と認めなかった。
野口裁判長は、宮本さんが25年4月以降、「アスリート並みの負荷を伴う訓練」を週3、4日で行っていたと指摘。基礎疾患がある中でこうした運動を続ければ死因が誘発される危険性は高く、死因と訓練に因果関係があったと結論づけた。
消防白書によれば、令和5年中に公務で死亡した消防職員は4人で、このうち1人が演習・訓練などが原因だった。
遺族側代理人は「泣き寝入りせざるをえない人もいる」と話す。基金は公務災害の認定基準として「発症前に通常業務に比べて特に過重な業務に従事したこと」などと定めているためだ。
宮本さんについても、基金側は「訓練は日常的に行われていた」などとし、公務災害にはあたらないと主張。ただ、判決は「認定基準は裁判所を拘束しない」として、訓練の運動強度と死因の関係を詳細に検討した。
宮本さんの父、洋治(ひろはる)さん(70)は「基金には現場の実態を把握し、不合理な認定基準を改定してほしい」と話した。
「公務外」認定取り消し
茨城・ 龍ケ崎消防署 訓練後死亡の署員 因果関係認める
東京地裁判決
2025年2月18日(火) 7:00 茨城新聞
龍ケ崎消防署員の宮本竜徳さん=当時(25)=が勤務時間中の訓練後に死亡したのを公務災害と認めないのは違法として、遺族が地方公務員災害補償基金(東京都)に「公務外」認定の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は17日、基金側に処分の取り消しを命じた。「アスリート並みの運動強度」を伴う訓練で、死亡と因果関係があると判断した。
判決では、宮本さんが行っていた訓練は「一般人の日常生活で行う運動強度をかなり上回るアスリート並みの運動強度」と指摘。死亡後の検査で宮本さんの心臓には不整脈原性右室心筋症の基礎疾患が確認されており、「致死性不整脈の発病は、公務に内在する危険が現実化したもので、公務との間に相当因果関係があると認めるのが相当」と結論付けた。
基金側が「日常業務と比べて特に過重な職務に従事したこと」を公務災害の認定基準としていると主張した点については、本件のような強い負荷を伴う業務が日常業務だとしても一律に公務起因性を否定されるわけではないと退けた。
判決によると、宮本さんは高度救助隊員として勤務。2013年から週に3~4回程度、約20キロの重りを両手で持って頭の後ろで上げ下げしたり、約33メートルのロープを両手で素早く引く訓練に従事していた。17年11月、訓練中に突然倒れて救急搬送され、翌日に致死性不整脈で亡くなった。
遺族の公務災害認定請求に対し、基金の茨城県支部長は18年8月、公務外と認定。遺族は同支部審査会に審査請求したが、23年3月、日常業務と比べて特に過重な職務に従事したとは認められないなどとして棄却された。遺族側は同年10月に提訴した。
判決後の会見で、宮本さんの父洋治さん(70)は「この判決を勝ち取れたことを素直に喜びたい」と語った。母藤子さん(57)は「今を生きる消防士たちのために、この勝訴が基金の(公務災害)認定基準の改定に生かされれば」と期待した。
基金の担当者は「判決の内容を精査し、今後の対応を検討したい」と述べた。
《カウンセラー松川のコメント》
今般の訴訟にはハラスメントに関しては言及しておりませんので
記事のカテゴリーもハラスメントにも消防にもしておりません
「私の覚え」的な部分もある記事です。
先ず初めに感じたのは、
「このトレーニングが先輩等からの無理強いではなかのか?」
です。しかし、連綿と続いているトレーニングであれば、
基礎疾患云々で免除や減量も難しいでしょう。
同調圧力もあるでしょう。
勤務中に亡くなられたのは非常に残念ですし、
御遺族の気持ちも分かります。
だからこそ、公務災害として認定して欲しいのも当然です。
私も公務災害に該当すると思います。
その結果、遺族からの公務災害を請求に対して
地方公務員災害補償基金茨城県支部は
「『体力錬成』は長年、日常的に行われていて、
急激な作業環境の変化はなかった」
これは
「発症前に通常業務に比べて特に過重な業務に従事したこと」
な当たらないとの判定。
そして、裁判所の判断は
「一般人の日常生活で行う運動強度をかなり上回るアスリート並みの運動強度」
と指摘し、
「およそ4年半にわたって継続して行っていた『体力錬成』は、
基礎疾患を悪化させる要因となりうる十分な過重性を有する」
「致死性不整脈の発病は、公務に内在する危険が現実化したもので、
公務との間に相当因果関係があると認めるのが相当」
との判決となりました。
さて、指摘された
「一般人の日常生活で行う運動強度をかなり上回るアスリート並みの運動強度」
とのことですが、
・約20キロの重りを両手で持って頭の後ろで上げ下げしたり
・約33メートルのロープを両手で素早く引く訓練
これを週に3~4回程度実施とのこと。
当然、この他にランニングや負荷を掛けたトレーニングも行っていたはずです。
週に3~4回程度なのは、2部制勤務だから当務の日を指していると思います。
しかし、消防吏員であれば勤務中のトレーニングも
一般人の日常生活で行なう運動強度を上回る運藤強度になるでしょう。
20㎏以上の装備を着装し、活動困難な場所で消火活動や救助活動を行なうのですから
体力練成も並大抵の物ではないでしょう。
まして、救助隊員となれば、ポンプ隊員では対応出来ない救助事案を扱いますから、
ポンプ隊員を上回るトーニングはアスリート並みの運動強度となるでしょう。
アスリートの皆様には申し訳ありませんが、市民の生命財産を守り救う仕事はありません。
それに比べて、消防吏員、なかでも救助隊員は救助事案について消防最後の砦です。
だからこそ、トレーニングもアスリート以上となるのも当然です。
さて、
ここで考えてみたいのは、公務災害の要件です。
私は被災者に故意過失がなければ原則認めるべきでしょうし、
過失も重大な過失でなければ事情の酌量で処理するべきでしょう。
消防職員ならば
・一般職員
・事務担当吏員
・予防担当吏員
・警防担当吏員
・幹部吏員
これだけでも、トレーニングの度合いが変わって当然です。
しかも、警防部門には
・指揮担当
・消火担当
・救急担当
・救助担当
・市民対応担当
と細分化され、ここでもトレーニングの度合いが変わって当然です。
救助隊員が
・アスリート並みの運動強度
・日常的に行われていて、急激な作業環境の変化はなかった
どちらも真実です。
勤務中に死にたいと考えている消防吏員は居ません。
ところが、現実には
トレーニングに起因して不整脈原性右室心筋症の基礎疾患を悪化させ死亡
と言う悲劇が発生しました。
消防職員は医療や健康管理の専門家ではありません。
だから、24時間一緒に居ても内疾患については気が付かなくても当然です。
「日常的に行われていて、急激な作業環境の変化はなかった」
この理由だけで、公務災害に認定しないのも硬直した見解です。
基金の担当者の業務量が増えるのは申し訳ありませんが
職務や担当業務の内容を勘案しての判断も必要だと思います。
そして
「健康管理を本人任せだけにしない」
これが大切なのではないでしょうか?
今般の訴訟を切っ掛けにして
各消防本部でも健康管理について見直して欲しいと切望します。
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