2024年4月5日金曜日

“性別で不当な扱い受けた” 垂水市の女性消防士退職

“性別で不当な扱い受けた” 垂水市の女性消防士退職

 

2024年45日 19:53 NHK

 

鹿児島県の垂水市消防本部に勤めていた女性消防士が、女性用の仮眠室がないため、当直勤務ができないなど、性別による不当な扱いを受けたとして退職していたことがNHKの取材で分かりました。

総務省消防庁は「一般論として、女性用施設がないことを理由に当直勤務から除外することは、性別による差別の禁止に違反する可能性がある」としています。

一方、垂水市消防本部は「仮眠室が完成するまでの間の、やむを得ない対応だった」としています。

 

総務省消防庁は、全国の消防士に占める女性の割合を再来年度までに5%に引き上げる目標を掲げていて、女性が働きやすい環境づくりに向けて、各消防本部に対し、仮眠室など女性用の施設を整備するよう求めています。

 

こうした中、垂水市消防本部に勤務していた女性消防士などによりますと、消防本部には女性用の仮眠室がないため、男性と同じような当直勤務ができず、原則、庁内での業務を担当させられたということです。

 

女性は、性別による不当な扱いを受けたとして去年10月に退職しました。

 

NHKが県内20の消防本部などに取材したところ、女性消防士を採用したことのある14の消防本部などのうち、垂水市消防本部だけが女性用の仮眠室を整備していませんでした。

 

垂水市消防本部はNHKの取材に対し、「女性用の仮眠室の整備は消防本部の耐震補強工事にあわせて行う必要があったことなどから、ことし秋に工事完了予定というスケジュールで整備を進めていた。完成するまでの間に男性と同様の勤務をさせることで、さらなる不利益を課すわけにはいかず、やむを得ない対応だった」としています。

 

一方、総務省消防庁は「個別の案件についてはコメントできないが、一般論としては、女性用施設がないことを理由に女性だけを当直業務から除外することは、地方公務員法で定める性別による差別の禁止に違反する可能性があり望ましくない」としています。

 

【元消防士の女性「女性が働く環境全く整っておらず」】

垂水市消防本部に勤務していた女性は、匿名を条件にNHKの取材に応じました。

 

女性は、人の命を救う仕事がしたいと消防士を志し、垂水市消防本部におととし、採用されました。

 

採用された当時は、女性用の仮眠室などはありませんでしたが、消防本部の幹部からは「消防学校での初任教育から戻って来るまでに整備する」と説明を受けたと言います。

 

しかし、半年間の消防学校での生活を終えて消防本部に戻ったあと、整備されていたのは女性用のトイレだけだったということです。

 

女性は「ちゃんとした更衣室もなく、部屋からトイレまでの廊下のような換気扇も窓もないところで着替えざるを得なかったり、現場から帰ってきて汚れても、シャワーも浴びられない状況で、消防職員として働く環境は全く整っていなかった」と話しています。

 

また、庁舎内で男性職員から何度も体を触られたり、仕事を与えられないなどのハラスメントも受けたと訴えています。

 

女性は「女性が働くにあたって、施設面だけでなく、組織の体制や体質なども含め、配慮が全くできていないと感じた。消防士になるために勉強に励み、男性と同じように働きたくて知識面や体力面でも努力を続けてきたのに悔しいと同時に辛い」と話しています。

 

職場でのハラスメントについて、女性は垂水市消防本部に対し、調査と関係者の処分を求めています。

 

これについて、市消防本部は「調査中だ」としています。

 

【専門家「性別による配置の差別」】

今回のケースについて、労働法や性別による差別の問題に詳しい一橋大学大学院法学研究科の相澤美智子教授は「女性活躍推進が叫ばれるようになっていまだにこんなことがあったのかと正直驚いた。法的な観点から見ると、女性消防士に当直勤務をさせず、日勤しか割り当てないのは、性別による配置の差別に当たる。女性職員を採用した時点で女性用の仮眠室などを設置しなかったことが問題だ」と指摘しています。

 

そのうえで「消防の仕事は男性の仕事という固定観念があり、仮眠室などの設置を先延ばしにしてきたのかもしれないが、消防の幹部はそうした固定観念にとらわれないよう意識すべきだ。身体的な救助が必要な場合は女性の市民は女性消防士が対応してくれてよかったと思うようなので、市民のメリットのために女性の消防士を増やすことは必要だ」と話しています。


《カウンセラー松川のコメント》

垂水市消防本部は吏員44名(定員44名)、うち女性吏員1名、
1署1分遣所です(2023年4月1日現在。垂水市、総務省消防庁情報)。
女性用設備の設置状況から
当該女性吏員の採用が初めてだったと思われます。
しかし、採用時には女性用トイレ・仮眠室・シャワー室が無い時点で
採用自体が無理であった事は明白です。
男女雇用平等や男女共同参画の観点から、
女性消防吏員の採用は大切な事ですが、
その為には受け入れられる体制が必要なのです。
「トイレは消防学校へ入校中に作れば良い」
「仮眠室やシャワー室は近々の工事と一緒に済ましてしまえ」
では、あまりにも無計画過ぎます。
受け入れるならば、それなりの計画を立てるべきでしょう。
その点では、垂水市消防本部の対応は後手に回り過ぎと言えます。
また「仮眠室が無いから、男性吏員の様に泊まり勤務をさせない」では
セクハラ防止の観点とは言え、パワハラの「過小な要求」に該当するでしょう。
そして、不必要に身体を触られたとの事ですが、
これも部外者に行えば「痴漢」です。
同じ職場の者に対してなら平気で痴漢が出来る神経を疑います。

被害者の方へ
就業する以上は書面の条件だけでなく、実際に見学をして、
疑問点があれば確認をするべきてはないかと思います。
確かに行政機関での求人なので「受入態勢は出来ている」と
解釈してしまうのも当然だと思います。
しかし、消防機関は元々男所帯な上に、
今まで女性の採用実績が無かったのならば、
そこは確認をしておくべきだったかも知れません。


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