街頭演説中に背後から抱きつかれる
――有権者の立場を利用した「票ハラスメント」被害に遭う女性候補者たち
…野放しにすれば「政治家になりたいという女性は増えない」
2026年4月7日(火) 12:21 読売新聞(木村優里)
女性の地方議員や候補者を支援
政治分野でのジェンダー格差などを研究する浜田真里さん(38)は、女性議員が増えない一因はハラスメントだと考える。女性の地方議員や候補者を支援する団体「Stand by Women」を設立し、「研究で得た知見をもとに、状況を打破したい」と語る。
街頭演説中に被害も
これまで370人を超える議員や候補者にじっくりとヒアリングしました。街頭演説中に後ろから突然抱きつかれたり、「演説中の写真を送るからLINEを交換しよう」としつこく迫られたり、トラウマになるような被害がありました。
地方議員は国会議員と異なり、秘書がいない人が多く、一人で様々なことに対峙(たいじ)しなければいけません。特に、有権者の立場を利用した「票ハラスメント」は拒絶しにくく、孤立しやすいです。支援団体では、個別の相談に対応し、地方議会での研修も行っています。
ジェンダー問題に興味を持ったのは、大学生のとき、海外で働く日本人女性のインタビューをまとめた就職支援サイトを作ったのがきっかけです。社会人になってからも運営を続け、約600人にインタビューしました。共通していたのは、日本での生きづらさを感じていたことです。「女性だからこうしなければ」という型や世間の目に息苦しさを感じているようにも見えました。背景に何があるのかきちんと理解したいと思い、30歳で大学院の受験に挑戦しました。
大学院では、DV(配偶者や恋人からの暴力)や選択的夫婦別姓、痴漢など、ジェンダー問題について学びました。何とか解決しなければと思ったとき、法的な問題にぶつかり、政治がきちんと解決策を示す必要があると感じました。法律や条例を作る政治は、多様な声を吸い上げることが求められるのに、日本では女性議員が極めて少ない。それが女性が生きづらさを感じる社会構造の原因なのではと問題意識を持ち、現在の研究に行き着きました。
大学院在学中に第1子を出産し、育児と研究の両立はとても大変でした。同時に、想像以上に深刻なハラスメントの実態を聞くうちに、この状況を野放しにすれば、政治家になりたいという女性は増えず、仮になっても続けていくのは難しいと危機感を持ちました。
当時、日本にはこの分野の目立った研究はほとんどありませんでした。「それなら私がやる」「社会に絶対に必要な研究だ」という強い思いが、両立の原動力になりました。
女性首相誕生も「まだ道半ば」
日本で初の女性首相が誕生し、女性の政治参画への関心は高まっています。議員や候補者のハラスメント被害が社会的に認知され、声を上げやすくなったと、変化も感じていますが、まだ道半ばです。
歴史を振り返ると、女性参政権運動に取り組んだ元参院議員の市川房枝さんなど、政治分野で道を切り開いてきた方々がおり、そのバトンを受け継いでいると思っています。私も、次の世代にバトンを渡せるように、多様な人材が政治に参画できるような社会を目指して活動を続けていきたいです。
【取材後記】「知った責任」言葉が刺激
支援団体を作った経緯を取材で聞くと、「研究を通じ、多くの被害を知った責任を強く感じた」と語っていた。研究を突き詰めるだけでなく、自らサポート活動にまい進し、社会を変革しようとする姿に、芯の強さを感じた。
浜田さんは地方議会の研修で、現状や対策、必要な施策などを伝えている。研修の途中に退席して戻ってこない男性議員が複数いたと聞いて驚いた。浜田さんはそんなことにもめげず、「研修は一度だけでなく、民間企業のように繰り返し行うことが大事」と話し、条例を制定する必要性などを教えてくれた。
記者も政治の取材をする中で、ジェンダーギャップに疑問を持ってきた。「知った責任」という浜田さんの言葉を聞き、記者の立場から、課題や対策を追っていきたいと改めて思った。
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