2022年10月5日水曜日

退職勧奨を断った日から始まった壮絶ないじめとパワハラ 勤続30年、51歳男性課長の告白

退職勧奨を断った日から始まった壮絶ないじめとパワハラ
 勤続30年、51歳男性課長の告白

 

2022年10月5日() 18:35 神戸新聞(小谷千穂)

 

 10月10日は「世界メンタルヘルス(心の健康)デー」。近年、心の病は増え、生涯を通じて5人に1人がかかるといわれる。職場のいじめやパワーハラスメントによって精神疾患になるケースも多く、新型コロナウイルス禍で状況は悪化。NPO法人「ひょうご労働安全衛生センター」(神戸市中央区)に相談を寄せた、ある男性課長(51)=兵庫県西宮市=の告白を紹介する。

 

■ある日突然、社長から呼び出され

 電子部品加工の兵庫県内企業に勤める男性は、今年4月に適応障害と診断され、4カ月間休職した。体調を崩した理由は、30年勤めて課長の役職が付いていた職場で、社長や社員からの嫌がらせを受けたことだった。

 

 きっかけはコロナの感染拡大。社長は2020年9月、男性を呼び出し、「会社の売り上げが低迷すると予想され、早期に人員削減が必要だ」などと強い口調で告げた。退職合意書にサインするよう促した。

 

■自席の後ろに監視カメラ

 高校と大学院に通う子ども2人の学費を賄わなければならなかった男性。長年働いた会社に貢献したいとの気持ちもあり、「退職の意思はない」と断った。その後1カ月間、退職の強要が続いたが、折れなかった。

 

 すると突然、毎日、仕事が終わった後に詳細な日報を記入するよう社長から指示が出た。1日の業務の内容や気付き、改善点などを書き、A4判の紙を埋めなければならない。対象は退職勧奨を受けた社員4人だけで、男性は「嫌がらせだ」と受け止めた。自席の後ろに監視カメラが設置され、指示通りするしかなかった。

 

■後輩社員から「新入社員のようだ」と…

 日報には総務担当の後輩からコメントが付いた。「新入社員のようだ」「重要な仕事はお任せできない」「意味が分からない」など抽象的な批判ばかり。業務記録に30分でも空白があれば指摘された。社長命令として電話対応も一手に担わされ、管理職の立場にそぐわない扱いを受け続けた。

 

 日報は、約1年半で計300枚以上書いた。精神状態をぎりぎり保っていたが、経験のない工場への異動辞令が出された。肉体労働の負担も加わって限界に。診断を受け、休職することになった。

 

 関わった商品が街中にあふれる仕事に誇りを持ち、「会社が好きだった」と振り返る男性。だが、人間不信になった。一人でも入れる労働組合に相談し、今は会社と交渉を重ねながら、労災を申請している。

 

■トップが嫌がらせの当事者に

 今年4月、法律で中小企業にもパワハラ防止措置が義務付けられたが、同センターの西山和宏事務局長は「トップが嫌がらせの当事者になっている場合があり、実質的に機能はしていない」と指摘。テレワーク中心の業務で社長からの指示が土日や夜中にも届き、うつ病になった例もあったという。

 

 同センターは9、10日各午前10時~午後6時、電話相談窓口「職場のメンタルヘルス・ハラスメントほっとライン」(TEL078・382・2118)を開設。窓口は全国一斉に設けられる。西山事務局長は「会社の物差しによって感覚が狂い、『自分が悪い』と相談できない人も多い。誰かに話すことで、自分の状況を客観的に見られる」と気軽に電話するよう呼びかける。


《カウンセラー松川のコメント》

管理職と技能職。管理部門と現業。
収益を上げないポストはリストラされ易いです。
この報道での課長も社長から見れば「収益に貢献しない社員」にしか
見えなかったのでしょう。
民間企業も余裕がある時は地位や在籍期間を考慮した待遇ですが、
リストラを迫られると「金を運んでこない者」「賃金の高い者」は
解雇対象にしたくなります。
これで経営難を乗り切れれば良いのですが、
他の社員から「組織への貢献度は低くない」と認識されている者を
この様な手法で追い込むと「いつか自分もそうなるのでは」と
悪影響を与えてしまい、優秀な人材が流出する可能性も高くなります。
パワハラ相談窓口を社内に設けている企業も少なくありませんが、
中小企業の様にトップと末端の距離感が少ない企業では
トップによるハラスメントが起きる確率も高くなります。
しかし、社員によるパワハラ相談窓口担当では
トップのパワハラには対応も出来ませんので、
結果として機能不全となりますし、担当者も問題を抱えたままとなります。
お勧めする窓口設置方法は[社内と社外の両方に設置]
それが難しいならば[社外窓口を設置]です。

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