2022年10月7日金曜日

セクハラ、オワハラ、急な内定辞退 企業も学生も気を付けたい就活トラブル

セクハラ、オワハラ、急な内定辞退
 企業も学生も気を付けたい就活トラブル

 

2022年10月7日() 19:30 北海道新聞(清水博之)

 

 就職活動を巡り近年、企業と就活生の間でトラブルが頻発しています。「セクハラ」「オワハラ(就活終われハラスメント)」など企業側が是正しなければいけないケースもあれば、就活生側の不注意でトラブルが起きることもあります。2024年春に向けた採用活動、就職活動の準備が進む中、トラブルを避けるための注意点を札幌弁護士会の上木健司弁護士に聞きます。

 

 ――就活を巡ってどんなトラブルが起きているのですか。主なトラブルを教えてください。

 

 企業の採用活動に伴うものでは、面接などでの就活生のプライバシーを侵害したり、従業員が就活生をしつこく食事に誘うなどのセクハラが目立ちます。内定を出した企業が就活生の就活打ち切りを迫るオワハラ、また逆に内定をもらった就活生が入社直前になって内定を辞退する問題もあります。

 

■選考基準は適性や能力 政治思想や宗教は無関係

 ――企業側は採用活動にあたり、将来にわたって組織で活躍してくれる人材を確保するため、個人情報を含め、できるだけ就活生の情報を求めようとしがちです。どこからがプライバシー侵害に当たるのですか。

 

 日本の労働法制は解雇に厳しく、企業側は一度採用してしまうとなかなか辞めさせることができないため慎重になり、応募した就活生のさまざまな属性を知りたくなるのは分かります。しかし選考の基準はあくまで応募者の適性・能力にすべきであり、それらと直接関係しないことを聞くのはプライバシー侵害に当たります。例えば本人の出生地や家族の職業・地位・学歴、生活環境、資産などは就活生の能力と関係ありません。また支持政党や宗教、尊敬する人など思想信条に関わることも無理に聞いてはいけません。

 

 ――いずれも憲法で定められているルールですね。しかし企業は世界基督教統一神霊協会(旧統一教会)など反社会的な活動が指摘される宗教団体との関わりも聞いてはいけないのですか。

 

 他の会話の中で就活生側から出てきた内容ならよいのですが、特定の宗教を非難するような聞き方はトラブルになる恐れがあります。また身元調査や健康診断も本人の了解なしにすべきではありません。厚生労働省は指針として「公正な採用選考の基本」をホームページに掲示しています。企業は応募者にも基本的人権があることを意識し、尊重しなければなりません。選考はあくまでも本人の適性・能力に基づいて行う必要があるのです。

 

■プライバシーの質問「答えないとマイナス」は誤解

 ――立場の弱い就活生からすれば、採用してもらいたい企業から質問されれば、プライバシーや思想信条に関わることでも答えざるをえなくなるのではありませんか。

 

 質問に答えないと採用にマイナスになる―と不安になるかもしれませんが、答える必要がないことは答えないという意思を相手に伝えましょう。プライバシーや思想信条に関わる質問を表だってしてくる企業は、大企業であっても人権意識に欠けている企業と言え、長続きしないと思います。仮に就職しても問題が起きる可能性があります。適性・能力に関係ない質問であれば、やんわりでもきちんと指摘することが大事です。

 

 ――企業側のセクハラについて聞きます。セクハラには言葉によるもの、身体的接触によるものなどありますが、就活ではどんな状況で、どんなセクハラが起きているのでしょうか。

 

 かつては面接で、就活生に交際状況などについて聞くことは珍しくありませんでしたが、さすがに今はないと思います。近年はインターンシップ(就業体験)や企業説明のセミナーなど、企業の従業員と就活生が長時間接する機会に従業員が性的な冗談を言ったり、飲み会にしつこく誘ったりするハラスメントがあります。また最近は、相談を受ける大学OBOGと就活生を結ぶマッチングアプリや交流サイト(SNS)が利用されていますが、アプリで就活生と知り合った従業員が就活生を個人的に誘って性的暴行するといった事件も起きています。企業は採用側という優位性・優越感から、立場の弱い就活生につけ込むことがないよう、対等な人間として尊重する意識を従業員に持たせなくてはいけません。就活生側は「夜遅くに誘われても会わない」「二人きりで会わない」「会う場所は他人の目がある公共の場や企業のオフィス」といったことに気をつけてください。

 

■他社の内定辞退強要や行動制限は「オワハラ」

 ――オワハラについて教えてください。オワハラという言葉は最近ですが、内定者が他社に流れないようにする会社側の行為は過去からありました。今はどんなトラブルが目立っていますか。

 

 昨今は企業側の人材不足で「売り手市場」になっており、就活生が複数の内定をもらうことも多くなっています。内定と引き換えに他社の内定辞退を迫ったり、他社と接触しないように合宿参加などによる行動の制限を強要したりする例があるようです。

 

 ――どこまでが許容され、どこからが「度が過ぎた」状態となるのでしょうか。

 

 国民は憲法上、職業選択の自由を有しています。企業側は強要にならないよう就活生に一応の判断を求め、表面的には応じているように見えるかもしれません。しかし就活生の真意に反して行動の自由を阻害する行為は許容限度を超えています。オワハラ行為の情報は学生の間ですぐに広まり、大学当局にも伝わって結果、企業のイメージダウンにもつながります。不当なプレッシャーをかけるのはやめ、去る者は追わないという姿勢が大事です。

 

■突然の「入社辞めます」 ほかの学生の迷惑にも

 ――内定取り消し、内定辞退のトラブルについて教えてください。近年は就活生側の突然の内定辞退が多いようですね。

 

 企業が採用内定を出すと条件付きですが労働契約が成立します。条件とは契約を解除できる「解約権留保」と、就労が始まる時期についての「就労始期」です。内定の取り消しや辞退はこの契約の解除を意味します。

 

 企業側の内定取り消しは簡単にはできません。できるのは、企業側が内定当時に知ることができなかった、または知ることが期待できないような事案で、内定取り消しが客観的な合理性と社会的相当性を有する場合のみです。適性・能力について就活生が虚偽の内容を述べることなどがこれに当たります。例えば職種によりますが、車の運転が必要な職種で運転免許を有していると答えたにもかかわらず、実は運転免許がないことが分かれば、内定の取り消しが認められるでしょう。ただし基本は取り消せないと考えた方がよいですね。

 

 一方、内定辞退は民法で就労開始日の2週間前までに企業側に伝えればよいことになっています。しかし企業も年間計画を立てて採用を進めているので、入社しないと決めたなら早く伝えるべきです。入社直前の辞退では企業が人員の補充ができないばかりか、他の就活生の入社機会を奪いかねません。

 

 道内大学の就職担当者によると、企業が内定を出した学生と連絡が取れなくなり、大学に問い合わせしてくるケースが増えているそうです。企業の担当者は「本当にウチに入ってくれるのか分からない」と困り果てているといいます。社会人になるのですから、他の人に迷惑をかけないという意識をきちんともってほしいと思います。

 

 ――最後に就活セミナーや塾などの就活ビジネスのトラブルについて教えてください。

 

 よくあるのは、面接の受け方などを有料指導しますよ、といったところが入り口になってアンケートを書かせ、個人情報を入手して無料セミナーに誘って高額なセミナー受講や教材購入の契約をさせるケースです。さらにはキックバックを約束して他の学生への勧誘をさせるマルチ商法まがいのものもあるようです。不安をいたずらにあおって契約させた場合は消費者契約法に基づき、契約を取り消せる場合もありますが、そうなる前に、内容や料金に違和感を感じたらきちんと契約を断りましょう。

 

 <上木健司(うえき・けんじ)弁護士>1972年、大阪府高槻市生まれ。96年に京都大学法学部を卒業して東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入った。国の司法制度改革を機に一念発起して慶応義塾大学の法科大学院(ロースクール)に進み、2007年に司法試験合格。08年に札幌で弁護士活動を始めた。20年に他の弁護士2人と札幌つづみ星法律事務所設立。北海道との縁は学生時代のバイクツーリングで、夏の道内を数回訪れ「1年を通して住んでみたかった」という。司法試験合格後の修習地として札幌を選び、そのまま移住を決めた。趣味は北海道で始めたゴルフ。最近は家族とのキャンプが増え、胆振東部地震(18年)後に災害用に買いそろえたアウトドア用品が活躍している。


《カウンセラー松川のコメント》

就活生に対するセクハラも後が絶えない様です。
芸能界に於ける製作側から演者へのセクハラと同様の背景です。
「その企業に就職したい」その願いを人質にして
採用側が性的な言動や交際を持ちかける行為。
受けるのも断るのも可能ですが[採用]と言う人質を取られている身としては
[断る=不採用]と考えざるを得ないでしょうから、
「一度くらいなら」と諦めの境地で受ける場合も多々有ったのは明白です。
この様な卑怯なセクハラを現行法で根絶させるのは困難かも知れませんが、
被害者が毅然とした態度で採用側企業に訴える事で
加害者が罰せられる可能性は低くありません。
しかし、通報も被害者の判断次第ですから、通報の強要も難しいです。
それでは、当該報道でのもう一つのハラスメント[オワハラ]ですが、
こちらは更に厄介な問題です。
話は変わりますが、恋愛での二股行為は非難対象でしょうか?
自由恋愛ですから一時期に何人の相手と恋愛をしても
非難される筋合いではないとも言えます。
しかし、多くの方の倫理観では二股(またはそれ以上)を架ける行為を
「誠実ではない」と非難対象とするのではないでしょうか?
さて、就職先を選ぶに当たり、誰しも第一志望に採用されたいでしょう。
採用側も優秀な人材が欲しいのも当然です。
「御社は滑り止めとして申し込んでます」その様に表明しない限り、
採用側としても「是非とも自社に入って欲しい」と願います。
それならば、採用側としても「他社への求職活動し止めて欲しい」と
願うのも当然のことです。
本当は入りたくない企業を受けるのは、相手にとって失礼な事です。
幾つも採用試験を受けているのは、二股恋愛と同じ様なものです。
オワハラが嫌ならば幾つもの企業に求職しないか、
または最初に採用通知を出した企業に就職することです。

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