「下着が見えちゃうよ」「体型良いね」元同僚に性的発言や“ちゃん付け”呼び
…繰り返された言動をセクハラ認定 裁判所が慰謝料を命じた背景
2025年10月30日(木) 16:00 フジテレビ
「○○ちゃん、ありがとう」。ある日、突然自宅に届いた電報には、そんな言葉が綴られていた。東京都内にある佐川急便の営業所で働いていた40代の女性は、同じ営業所の男性係長から、度重なるセクハラを受けたとして裁判を起こし、東京地裁は10月、男性に慰謝料など22万円の支払いを命じた。
日常的に積み重ねられてきた言葉によるハラスメントを、「社会通念上、許される限度を超えていた」と認定した判決。その経緯に迫る。
突然届いた電報…
2021年5月、女性の自宅に、佐川急便の営業所から一通の電報が届いた。表紙に「祝」という文字が書かれ、宛名には女性の職場での呼び名「○○ちゃん」と書かれていた。
「いつも明るく対応してくれてる事にみんな幸せを感じています…ありがとう!」
日頃の感謝の言葉が並んでいた。
ただ、この電報は業務用の信書便のキャンセル分を使って送られたもので、事前の了承はなかったという。
女性は驚きと不快感を覚えた。
「かわいい」「胸元が…」繰り返された言葉
女性は佐川急便の営業所に勤務。係長だった男性とは業務上のやり取りがあり、彼は日常的に女性を「○○ちゃん」とちゃん付けで呼んでいた。
ある日、営業所内で荷物を探していた女性が、背後から近づいてきた男性に驚いて「きゃっ」と声を上げた。すると男性は、「今のかわいい」と口にした。
また別の日には、前屈みになった女性に対して「それ胸元が…はだけて下着が見えてしまうよ」「体型良いよね」などと伝えたという。
うつ病で休職
女性は2021年11月ごろから、出勤前に涙が止まらなくなるなどの症状が現れた。
上司に相談し、営業所の所長も事情を聴いた。会社は男性に「厳重注意」を与えたが、女性の症状は改善せず、2021年12月には心療内科で「うつ病」「PTSD」「適応障害」と診断された。
その後、2022年4月から女性は休職し、2023年に会社と男性を相手取って損害賠償を求める裁判を起こした。会社とは2025年2月に和解が成立し、70万円の解決金が支払われた。
問題視された「ちゃん付け」
今回の裁判では、男性係長が女性を「ちゃん付け」で呼び続けていたことが問題視された。
判決は「ちゃん付け」について、一般的に子どもに対して使われる言葉であり、成人に対して使われるのは、交際相手等の親密な関係にある場合が多いと指摘。
さらに、厚生労働省が定める「心理的負荷による精神障害の認定基準」でも、「○○ちゃん」と呼ばれることがセクハラの例として挙げられていることも指摘している。
裁判所は、こうした背景を踏まえ、「業務上においてこのような呼称を用いる必要性は見出し難い」「原告と被告の年齢や性別、本営業所に勤務する従業員同士にすぎないという両者の関係性に照らすと、原告に不快感を与えるものであった」と判断した。
つまり、「ちゃん付け」は単なる呼び方ではなく、職場での立場や関係性、言葉の使い方によっては、相手に不快感や心理的負荷を与える行為になり得るということを意味する。
さらに、電報の送付や、「かわいい」という発言、下着や体型に関する発言についても、「原告に不快感や羞恥心を与える不適切な行為であったといえる」と認定。一連の行為を、「社会通念上許容される限度を超えた違法なハラスメントとして、不法行為に当たる」と断じた。
うつ病との因果関係は否定
一方で、女性は、うつ病などの発症が男性の言動によるものだと主張したが、裁判所は「業務のストレスや家庭の事情も影響していた」などとして、因果関係は認めなかった。
そのため、休業損害や治療費などの請求は退けられた。
認められたのは、慰謝料20万円と弁護士費用2万円で、東京地裁は10月、男性に計22万円の支払いを命じた。
問われた“呼び名”の負担
この裁判では、女性に対する身体的接触は一切なく、言葉の使い方が焦点となった。そして、不適切な発言が繰り返されたことについて「社会通念上、許容される限度を超えた違法なハラスメント」と断じている。
職場で交わされるコミュニケーションは業務の一部であると同時に、人間関係の土台にもなる。何気ない呼び方や言葉が、相手にどう受け止められるか——。そんな現代を生きる上で必要な視点があらためて問われた判決となった。
《カウンセラー松川のコメント》
拙ブログ10月23日付け記事
「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: 職場で「〇〇ちゃん」はセクハラ 元同僚に22万円支払い命令
これの続報です。
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