2024年6月8日土曜日

▼関係者の約半数がセクハラ・性暴力があると回答…芸能・メディア業界に巣食うハラスメントの実態とは?

関係者の約半数がセクハラ・性暴力があると回答…芸能・メディア業界に巣食うハラスメントの実態とは?

 

2024年6月8日() 8:02 TOKYO MX

 

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは、芸能界・メディア業界におけるハラスメントについて議論しました。

 

◆セクハラや性暴力が起きやすい構造的問題

 

近年、芸能界・メディア業界におけるセクハラ・性暴力問題が相次いで明らかになっています。なぜメディア業界で性暴力の問題が生まれるのか、そしてメディア業界のハラスメントの実態とは?徹底的に議論します。

 

この問題を語るにあたり、株式会社トーチリレー代表取締役の神保拓也さんはまず一般企業と芸能・メディア業界の構造面を比較。「一般企業では、セクハラやパワハラがあった場合、内部通報の窓口がある。そこに通報すると会社と利害関係が一致しているので正しく調査されることが多い。しかし、芸能・メディア業界は、訴えられた側が売上に繋がるポジションなどにあると、利害関係的に調査しづらい構造がある。それが問題の温床になっているのではないか」と指摘します。

 

芸能界のハラスメント問題解決に取り組む日本芸能従事者協会 代表理事の森崎めぐみさんは、「ハラスメントと意識できずに思い詰めてしまったり、自分がやらないといけないと思い込まされてしまう状況になりやすい」と被害者を案じつつ、「芸能界には元来ハラスメント対策がなかった。ハラスメント研修を増やすなど、問題解決に全員で取り組み、一般社会・企業と同じことをやるべき」と改革の必要性を唱えます。

 

臨床心理士のみたらし加奈さんは「第三者が介入しづらいという問題は大きい」と主張。さらには、「告発することで仕事に繋がらなくなる流れができてしまっている状況で、たとえ第三者が介入しても、被害者が『何もなかった』と言ってしまいやすい構造がある」とも。

 

また、性暴力における問題点にも言及。「例えば、いじめの問題はネットなどでもいじめと断定する人が多い。しかし、性暴力となると被害者に責任を求めるような形になることがある。それは、いじめの定義は想像しやすいものの、性暴力は性欲を伴わない場合や支配が伴っている場合などがあり、定義を理解し難いゆえに『これは性暴力ではない』と言い切ってしまったり、想像しにくいところはあると思う」とみたらしさん。

 

NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子さんも、この意見に賛同する傍ら、「去年、刑法改正が行われ、地位関係を利用した性的行為が同意のないものだとみなされた。社会が少しずつ変わっているなかで、芸能界もそうであってほしい」と望みます。

 

◆もしもハラスメントを目撃したら…その対処法は?

 

評論家の荻上チキさんが代表を務める団体がタレントやスタッフに対し芸能界・メディア業界でのハラスメント実態調査を行ったところ、「セクハラや性暴力の被害を受けたことがあるか」という質問に対し、「ある」が51.4%。「目撃した」が45.5%。「加害・加担した」が3.9%。

 

この結果に神保さんは、自社の所属タレントを使ってほしい芸能事務所、有名タレントを起用することで視聴率を稼ぎたいメディア、芸能の仕事で生計を立てたいタレント、三者それぞれニーズがあるなかで、それらを牽制する機能や遵守する制度・仕組みがないと、最も弱いタレントに皺寄せが行ってしまうと危惧。「これが正しく機能するよう第三者的な機能がないと、この問題は潰し込めない」と言います。

 

さらに、一般企業は以前に比べハラスメントは格段に減少し、その要因は教育や構造・制度改革など企業努力によるところが大きいと指摘し、「メディアもそうしないといけない」と神保さん。加えて、「ハラスメントという言葉が危険で、これはやっていることの罪を少し軽くしてしまう。ハラスメントという言葉で考えないほうがいい」と注意を促します。

 

ここで、キャスターの堀潤からは、「(ハラスメントを)目撃したとき、どう対処すべきか?」との質問が。これにみたらしさんは、“行動する傍観者”になるための5つの介入方法、「Distract(気を逸らす)」、「Delegate(誰かに頼む)」、「Document(記録を残す)」、「Direct(直接言う)」、「Delay(後から行動する)」を紹介。

 

そして、「“気を逸らす”と言うのはひとつのポイント。例えば、飲み会でハラスメントが起こっているときに、直接は言えないものの、飲み物を倒せば注目が集まる。その瞬間に被害者を移動させることができる。あとは“記録を残す”ことも重要。被害者は性被害の事実を残したくない人もいるので、その人の代わりに証拠を持っておくことも大事。ハラスメントは直接『やめなさい』と言うこと以外にもやれることがたくさんあることは、もっと周知されるべき」と補足します。

 

一方、能條さんが「(ハラスメントは)特に二者間、第三者がいないなかで起きるので難しいが、当事者が増えていくと対応しやすくなると思う」と語ると、森崎さんは「もしも2人きりになってしまったら、まずは逃げる。そして、逃げてきた人を見つけたら、認めてあげる、そうした空気感を作ることが大事。それが、当事者が一番助かる。(ハラスメントありきで)仕事がもらえるとか、そうしたことは考えず、行為自体が良いか悪いかきちんと判断することが重要」と対処法を指南します。

 

前述の実態調査では、セクハラ以外に圧力の問題も浮き彫りになっています。「出演・取引の禁止」などの圧力をかけられたことがあるかという質問に対し、48.2%が「ある」と回答。「目撃した」は46.7%。逆に圧力を「かけた」と答えた人は7.1%でした。

 

こうしたハラスメント問題の解消に向け、森崎さんが代表を務める日本芸能従事者協会は「日本の芸能界は声を上げる環境が整っていない」、さらには週刊誌やSNSなどでの告発は被害者が誹謗中傷を受けるなど二次被害の恐れもあるとして、安全が保障されている相談体制の確立が必要だと指摘しています。

 

また、日本芸能従事者協会では芸能従事者を対象に、メンタルケアを行う臨床心理士が状況により適切な機関などを紹介してくれるメールの相談窓口「芸能従事者こころの119」を設けています(現在は一時休止中)。

 

◆芸能・メディア業界からハラスメントをなくすためには?

 

最後に、今回の議論を踏まえて、芸能界・メディア業界のハラスメントをなくすための案をコメンテーター陣が発表。能條さんはシンプルに“声を上げやすい環境づくり”を提唱。「やはり声を上げていくしかない。そして、その勇気を持って声を上げた人を孤立させないこと、失望させないようにちゃんと周りが(話を)聞いていくことも必要」と言います。

 

神保さんは「本来メディアはこうした問題にスポットライトを当て、切り込む機能が求められている」とし、“メディアが本来の機能を果たす”ことを切望。「ある意味メディアの不作為、本来の機能を果たさず、(ハラスメントの)構造を支える一役を買ってしまっている状態が根本にある」と警鐘を鳴らします。

 

一方、みたらしさんが提案するのは、“行動する傍観者を増やす”、“相談窓口の常設”、“気軽に臨床心理士に”の3点。なかでも、臨床心理士への相談に関しては「保険適用ではないので費用はかかるが、いつか裁判を起こしたいとなった時、相談者の同意があれば裁判資料として提出できるので、自分の記録を残しておくためにも臨床心理士に相談してほしい」とそのメリットを語ります。

 

森崎さんも「(みたらしさんの)おっしゃる通りで、臨床心理士は守秘義務があるので、安全な相談できる場があると認識してほしい」と付け加えつつ、「(ハラスメントがあった際には)まず友達に相談を。一人で悩まないで」と声を大にします。

 

そして、最後に堀は「ダメな業界はヒエラルキーができ、上に行けばパワーが強すぎる。現場で決めたことも上からの一言でダメになることはたくさんある。この構造を変えてほしい。現場にこそ力を!」と改革を訴えていました。

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