2021年2月25日木曜日

パワハラ自殺「謝罪」も調整

パワハラ自殺「謝罪」も調整

 

2021年2月25日() 7:32 山形新聞

 

 2014年、酒田地区広域行政組合消防本部の男性消防士=当時(20)=が訓練中の上司からのパワハラが原因で自殺したとして、両親が組合に15千万円の損害賠償を求めた訴訟は24日、地裁鶴岡支部で和解が成立した。組合は慰謝料などの損害賠償として11千万円を支払う。

 男性は146月、救助の技術を競う大会に向けた選抜メンバーとして訓練に励んでいたさなかに自殺。両親は177月に提訴し、パワハラに関わった上司や遺族への尋問などを経て、昨年9月から和解の可能性を含め協議してきた。今月1日には原告、被告双方が裁判所が示した和解案に合意する意向を表明していた。

 原告側は組合に対し
▽組織全体のハラスメント防止講習に加え、今後、男性が参加していたのと同じ救助訓練に臨む職員に対する講習も行い、概要を市ホームページで公開する
▽職員が第三者委員会の調査報告書を閲読する機会を設ける
▽消防長の年頭あいさつで、パワハラのない職場づくりに取り組むことを盛り込み公表する
―などと求めた。

 原告側の弁護士は、和解に応じた理由について、慰謝料の算定に関し、当初「パワハラはなかった」と説明するなどした組合の対応により遺族が受けた苦痛に対して、配慮がうかがえる点や、消防本部が再発防止に取り組むことを約束する内容が盛り込まれた点を挙げた。また、パワハラに関わった上司からの謝罪を、遺族が一貫して求めてきた経緯を受け、この日、組合側から「謝罪の仕方を調整させてほしい」などと申し入れがあったと明かした。

 男性の自殺については、169月に地方公務員災害補償基金県支部が公務災害と認定した。組合は17年、訓練を指導する上司が男性の胸ぐらをつかんで壁に押し付け、「お前は必要ない」と言い放つなどの行為が確認され、「自殺の理由はパワハラ以外に認められない」とする第三者委員会の調査報告を発表。関与した職員7人に停職や減給などの懲戒処分を出した。

両親が談話「悲しみ、ずっと続く」

 和解成立を受け、男性の両親が談話を発表した。「消防士になる夢をかなえ、わずか3年で逝ってしまうのはさぞ心残りだっただろう。和解は一つの節目だが、悲しみはこれからもずっと続く」と、男性の死から68カ月、提訴から37カ月が経過しても、癒えることのない心の痛みを吐露。消防本部の再発防止へ向けた取り組みについては、「少しでも職員が働きやすい職場となるよう、和解を選んだ。真摯(しんし)に取り組み、他の組織の模範となることを望む」と訴えた。

酒田市長「風化させない」

 一方、組合管理者の丸山至酒田市長は「パワハラによって若く貴重な人材が失われたことを、改めて重く受け止めている」と遺憾の意を示し、「事件を風化させず、継続してハラスメントのない職場づくりに努める」とコメントした。


《カウンセラー松川のコメント》

亡くなられた方は、どの様なことをしても絶対に蘇りません。
「世の中には絶対は無い」とも言われますが、
現代の科学技術では死者の蘇りは不可能なのです。
自殺された方の御遺族である御両親も和解と言う形で
パワハラの事実や今後のパワハラ対策を形として残す道を選ばれたのだと思います。
損害賠償の請求額1億5千万円に対して、1億1千万円の支払いを決定し
和解の道を選んだ酒田地区広域行政組合消防本部も、
金銭的には組織防衛しておりませんが、
きちんと和解をする事で体面を保つ事が出来、
その点では良い意味で組織防衛になったと思います。

2 件のコメント:

  1. 表面上ではなく、本気でパワハラ対策がなされることを願っています。

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    1. 別の機関で同様の案件を扱った経験があり、その時の事について多くは語れず申し訳ございませんが、上層部が風化させまいと真剣に講習会を長年続けていても、受講する側の中には他人事としか受け止めておらず、受講態度も悪かった機関があります。
      真剣に取り組むのは良いのですが、現場との温度差が生まれてしまうと、意味を成さない事を身を以て知りました。

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