「それでよく看護師に…」患者の暴言や暴行 病院悩ます“ペイハラ”の背景は
2021年2月5日(金) 9:37 西日本新聞(坪井映里香)
医療従事者が患者や家族から受ける暴言や暴行が医療現場の課題となっている。「ペイシェント・ハラスメント」(患者側からの嫌がらせ=ペイハラ)と呼ばれ、厚生労働省も本年度から対策に乗り出した。ペイハラは医療従事者を追い込み、ただでさえ新型コロナウイルス対策で疲弊している現場を崩壊させかねない。専門家は患者との信頼関係の構築や、患者側の訴えの中身を見極めた組織的な対応が必要と指摘する。
病棟に貼られたポスターの文字の大きさは危機感の表れだ。暴力、暴言、迷惑行為の具体例を示して告げる。「絶対に許しません!」
長崎市の日本赤十字社長崎原爆病院では3年前、入院患者の家族から暴言を受けた看護師が退職する事態が起きた。以来、対策を本格化。医療従事者に対する暴力などがあった場合は警察に通報することを告げる院内放送を1日1回流す。
「職員に怒鳴る患者が減った。抑止力にはなっている」と谷口英樹院長(65)。医療現場共通の課題として、昨年秋には市内の他の2病院と対策を検討する研修会も立ち上げた。
ペイハラは暴力や暴言だけでなく、医療行為への執拗(しつよう)な批判や指示、指導の拒否なども含む。
長崎県医師会が昨年7月にまとめた調査では、72病院のうち7割近い49病院がペイハラを受けた経験があると回答。内容(複数回答)は「執拗かつ辛辣(しんらつ)な対応要求」が最多で「脅迫・名誉毀損(きそん)・侮辱・暴言」、「医療行為等に対する非難や批判と責任追及」と続いた。業務に支障が生じたのは37病院。精神科の受診や退職を余儀なくされた職員がいた病院もあったという。
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世界医師会(WMA)は2012年秋、患者などからの暴力に関する声明を採択。医療現場での暴力は「患者ケアの質に悪影響をもたらす」として加盟国の医師会に対し、各医療機関で暴力への対応を計画化することを勧めた。
厚労省も「患者から暴言などを受けた看護師や看護助手が精神障害になる事案が一定数ある」と把握。本年度中に患者側からペイハラを受けた場合の対応事例などをまとめた医療機関向けの映像教材を作成する。
訴訟に発展するケースもある。長崎市で病院を運営する社会医療法人は昨年11月、入院患者の家族から暴言や暴行を受けた複数の看護師が退職し、病床を一部閉鎖せざるを得なくなったとして家族に損害賠償約3400万円を求める訴訟を長崎地裁に起こした。
訴状によると、病院側は看護師が「ばか」「それでよく看護師になれたね」などの暴言や、頭を押さえ付けられたりする暴力行為を受けたと主張。家族側は「ハラスメント行為は一切ない」と請求棄却を求めている。
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背景に何があるのか。慶応義塾大大学院の前田正一教授(医事法)は、要因の一つに「医療従事者と患者がゆっくり話す時間が取れない医療現場の現状がある」と指摘する。患者の入院日数や診療時間が短いことでコミュニケーションを取る機会が少なく、信頼関係の構築が難しいという。
自身や家族の命を病院に預ける患者側にとって、治療方針を尋ねたり、看護や介護に不備がある場合に改善を求めたりするのは当然の行為だ。そうした要求を医療従事者が一人で抱え込み、対応が遅れて事態が悪化するケースもある。
前田教授は、医療従事者は患者としっかり話をするのは前提とした上で、ペイハラには個人ではなく組織で対応すべきだと指摘。犯罪に当たるもの▽院内規則に抵触するもの▽公序良俗に反するもの-と3分類し、それぞれの対応を定めた上で「必要がある場合は弁護士に相談するなど、組織として毅然(きぜん)とした態度を示すことが医療従事者を守ることにつながる」と話す。
《カウンセラー松川のコメント》
[ペイシェントハラスメント(ペイハラ)]と称するのですね。
しかし、その苦しみを一方的に医療従事者へ向けても
何の解決にもなりません。
医師法第19条第1項や歯科医師法第19条1項により応招義務があり、
患者さんの診療を拒否することが出来ないのを逆手に取っている事案です。
しかし、厚生労働省医政局長から令和元年12月25日に医政発第1225第4号として
発簡された通達によれば、
とのことですし、
患者を診療しないことが正当化される事例として
これからは医療機関を預かる方は、医療従事者をペイハラから守り、
健全な職場環境の維持に努めて頂きたいです。
令和元年12月25日 厚生労働省医政局長 医政発第1225第4号
20191225ousyougimu.pdf (pref.yamanashi.jp)
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