【どゆこと?】セクハラ被害 県内の現状と課題
被害女性の証言・宮崎県
2021年9月15日(水) 19:30 宮崎放送
MRTテレビ「Check!」の新コーナー、「どゆこと?」。ニュースや普段の生活の中で「それって、どういうこと?」と悩んだり、疑問に思っていることを少しでも皆さんに役立つように取材し、報告します。
今回のテーマは、「セクハラ」です。「セクハラ」という言葉も以前に比べると世間に浸透してきました。私たちの意識や生活も変化してきている一方で、なくならないセクハラの現状を取材しました。
宮崎市の中心市街地で街の人に聞いてみました
(川野武文アナウンサー:以下、川野AN)
「いま、世間でセクハラに関して厳しくなりましたが、以前と変わったように感じますか?」
(女性)
「昔に比べてすぐ『セクハラ』になりますよね。(被害を受けるだけでなく)逆もそうかも。男性社員とも、こちらもどうやってコミュニケーション取っていいか分からない。」
(男性)
「ハラスメントの研修・勉強会をしたばかり。会社としてそういうハラスメントに今厳しくなっていますので。」
労働局「セクハラの相談は例年100件前後。」
私たちの意識や生活に変化がある一方で、後を絶たないセクハラ被害。セクハラなどの相談を受け付けている宮崎労働局に県内の現状を聞きました。
(宮崎労働局雇用環境・均等室 狭間美恵室長)
「昨年度は53件、セクハラで(相談が)寄せられております。通常だとだいたい(年間)100件前後のご相談がございます。」
ここ数年100件前後で推移している宮崎労働局へのセクハラの相談。
昨年度の相談件数が急激に減少した原因について、宮崎労働局は新型コロナの影響で事業の縮小や人との接触機会が減っていることが考えられると分析していて、根本的な解決には至っていないとしています。
労働局へ相談した場合の対応は
心と体に影響を与えるセクハラ被害。宮崎労働局へ相談した場合、どのような対応がとられるのでしょうか。
(宮崎労働局雇用環境・均等室 狭間美恵室長)
「会社に話をするという紛争解決援助の制度や調停の制度がありますので、それを利用するとこちらから会社に助言や指導をすることができます。」
厚労省によるセクハラの定義
県内でも毎年多くの相談が寄せられているというセクハラですが、具体的にどのようなことがセクハラにあたるのか、厚生労働省が以下のようにまとめています。
● 性的な関係の強要
● 食事やデートへしつこく誘う
● 個人的な性的体験談を話す・尋ねる
● 必要のない身体的接触
● わいせつ図画の配布・掲示
● 性的な冗談・からかい など
性的な関係の強要はもちろん、食事やデートへしつこく誘う、また個人的な性的体験談を話したり聞いたりすることも性的な言動と判断されます。
他にも必要のない身体的接触、わいせつ画像の掲示などもあげられています。
こうした言動がセクハラにあたるというのは、何となく世間にも浸透してきたように思います。
また、セクハラといえば男性から女性にというイメージがありますが、男女どちらも行為者にも被害者にもなり得ます。
さらに職場だけでなく取引先やお客様との間など、人と人がいるところなら幅広い場面で起こり得ますので身近な問題として捉えていただきたいです。
セクハラ被害を受けた女性の証言
セクハラは、受けた人の心に消えない傷をつけるだけでなく、その人の人生を変えてしまうこともあります。
セクハラ被害が原因で退職に追い込まれた県内在住の女性の話を聞きました。
大手通信関連企業に勤めていたもののセクハラ被害が原因で2年半前に退職に追い込まれたAさん。今回、匿名を条件に取材に応じてくれました。
(川野AN)
「今回セクハラ被害について話を伺いたいのですが、まず事実関係を順を追って話してもらえますか?」
(セクハラ被害にあった女性 Aさん)
「最初は、私の隣の席の人だったのですけれど、後ろを通りながら背中を触って通り過ぎていくということから始まって、家に私が帰宅する時に後をつけてくる。私が飲み会で出ている時に帰りがけにどこかで待ち伏せしていたみたいで、翌日に『きのうは遅かったね、何時くらいだったね』とか『ここで見ていたよ』とか(言われたことも)ありました」
当初、被害を訴えることにためらい
セクハラ被害にあった女性Aさん(以下、Aさん)は当初、被害を訴えることをためらったといいます。
(Aさん)
「あまり周りに言うと周りの空気も悪くなるし、私も(会社に)いづらくなったりするのが嫌だったのと、家までつけてこられるというのがあるから(相手を刺激するのが)怖かった。」
その後もセクハラは続き、Aさんは会社に相談することを決意しました。
(Aさん)
「会社的には『本人、私ではなくて、相手にも確認を取らなければいけない』と言われるので、そうなると、私も(会社に)立場的にいづらくなるので『それはやめてほしい』と会社に伝えて。」
(川野武文アナウンサー:以下、川野AN)
「でも、相手に確認しないと会社としては判断ができないというか。」
(Aさん)
「私のところに1日に何件も、ショートメールにも、私のスマホのメールにしても、会社のメールにしても、いっぱい相手からメールが来ていたので、プライベートな内容で。それを会社に見せて、会社の方で私と相手の距離を保てるように、周りで気を付けてくれたりとか、2人で一緒の仕事に回らなくていいようにしてくれたりとか。」
ところが、上司が変わったことで対応にも変化があったといいます。
(Aさん)
「(新しい上司は)考え方も違うし、『話は聞いてる』と言っていたのですが、捉え方が軽かったようで、(セクハラを)茶化すような感じで言われたりとか・・・」
エスカレートするセクハラ
告発ができない理由として、Aさんのお話にもありましたが、当事者としては働きづらくなる、相手の逆恨みが怖いなど、様々な不安や恐ろしさが沸き起こって、なかなか相談しづらいという状況があると思います。
また、Aさんの場合、上司によって状況の捉え方が変わり、被害に対する対応も軽くなったという話もありました。
このような状況の中で、Aさんのケースは解決に至らないまま、セクハラはエスカレートしていきます。
(Aさん)
「私が1人で残業中に、全員帰ったはずが(セクハラの加害者が)後から来て、『疲れたでしょ』と肩を揉まれたり、そのまま押し倒そうとしたりもあったので、どうしてもその空間にいるのが嫌になっていきました。」
組合に相談するも 12年勤めた会社を辞めることに
上司の対応に限界を感じたAさんは会社の組合に相談します。
(Aさん)「『相手を3か月ほどで転勤させるからもう少し我慢してほしい』と言われたが、1年近く経ってもらちがあかない状態で。」
(川野AN)
「結局どうにもならず。周りの同僚はどうでした?」
(Aさん)
「『さっき見てたよ』とか『今(相手が)あそこにいるから行かない方が良いよ』とか気を遣ってくれるのですが、そこまでなのですね。だからといって(同僚が)会社に自分で見たところを伝えてくれることはなくて、やっぱり自分の身は自分で守らないといけないと感じになっていたので、それであれば会社を辞めるしかないと思って・・・」
こうしてAさんは12年勤めた会社を辞めることになりました。
(Aさん)
「やっぱり社員と契約社員で差があるなというのは一番感じたところです。」
(川野AN)
「今回退職までに至ったこのセクハラの1件に関しては、どこに一番腹立たしさというか」
(Aさん)
「会社の対応の遅さとか、きめ細かさ、(契約社員の)私に対してはそうではなくて、(社員である)セクハラした人の方への配慮が大きかったような感じがします。」
Aさんは契約社員であったのですが、色々な業務を任されていて、周りからの信用を得ていました。そういう方が12年も務めていた会社を辞めてしまうというのは、人材が流出してしまうという点で、企業としても損失です。
会社側もきちんとした対応が必要であったのではないかと考えます。
セクハラの法的な問題点と対策を弁護士に聞きました
つづいては、セクハラの法的な問題点や対策について、主に企業や医療機関のハラスメント防止対策などの指導・相談を行っている宮崎市の弁護士法人きさらぎで話を伺いました。
(川野武文アナウンサー:以下、川野AN)
「そもそもセクハラは法律違反なんですよね?」
(弁護士法人きさらぎ 代表弁護士 高山 桂さん:以下、高山弁護士)
「そうです。具体的に言いますと、男女雇用機会均等法という男性も女性も平等に社会の中で働いていけるようにするための法律がありますが、その中に就業環境が乱されないように事業主がセクハラ等の言動がないようにしなければならないという法律上の義務があります。性的言動といったセクハラで労働者が就業できなくなるというのは明確な法令違反です。」
(川野AN)
「事業主だけでなくセクハラの加害者もアウトなんですね」
(高山弁護士)
「それはもちろん(法令違反)です」
弁護士に聞く対策
セクハラ被害にあった場合、どのような対策をしたら良いのでしょうか。
(高山弁護士)
「セクハラの問題の1番難しいところは、2人きりの口頭で性的な言動やセクハラが行われた場合、事実関係の確認に時間を要するということがあります。セクハラ的言動をする人は繰り返します。仮にそこの録音などが難しいとしても、何回も何回も(セクハラ被害に)あったということを(会社の)総務部に相談したり、『こういったことを言われた』ということで、日記でもよいので、自分で控えておく、記録をつけておく(ことが大事です)」
会社も組合も何もしてくれない
証拠を集めることが大切。そこで1つポイントになりそうなのが・・・
(セクハラ被害にあった女性 Aさん:以下、Aさん)
「1つだけ会社がしてくれたのが、室内に監視カメラをダミーですけどつけてくれました。私たちはダミーだと知っていて、加害者が出社したときに『監視カメラをつけた』と伝えました。(カメラを)つけてから触ってくることもなくなりました」
抑止力も期待できるカメラは客観的な証拠としても有効な手段となり得そうです。一方・・・。
(Aさん)
「メールなどの証拠を見せているのに判断してもらえないというのはつらい。最後、辞める時には『会社も組合も何もしてくれない」という言葉を残して退職しました。』
勇気をもって相談したということが無駄にならないように
証拠が大切であること、法律や制度があることはわかりました。
一方で、被害者は個人ではどうにもできない、力が及ばないといった部分を公的な機関や会社といった組織で助けて欲しいと思っているわけですので、被害者が勇気をもって相談したということが無駄にならないようにと思います。
さらに、セクハラ行為、「こういうことがダメなんだ」ということを一人一人が認識した上、で、国や企業がしっかり機能する環境整備を同時に進めていく必要があります。
また、Aさんのケースは泣き寝入りという形になってしましましたが、今はSNSなどで個人が情報を発信できる時代です。
企業が「セクハラ」などの悪い職場環境をそのまま放置していたら、知らぬはその企業の方ばかりで、就活生などに「ブラック企業」として情報が出回る可能性があります。
このようなことがボディーブローのように効いて、良い人材が集まらないようになるかもしれません。
いま、「SDGs」の推進が求められていますが、企業としては「ジェンダーの平等」や「不平等の是正」など「安心して働き甲斐のある環境づくり」を職場でしっかりとやっていくことが必要ではないでしょうか。【了】
《カウンセラー松川のコメント》
記事としては3回に分けられていたものを
一つに纏めましたので非常に長い記事となってしまいました。
セクハラは「加害者に悪意が無い」「本人の受け止め方次第」
「目に見える実害が無い」等で軽く扱われる事も少なくない様です。
しかし、セクハラに関しても国としてのガイドラインが示されてますので
これに則って適切な対応をしないと、
裁判沙汰になり企業としての被害も発生する可能性があります。
「セクハラを放置している企業」「セクハラを容認している企業」
この様なイメージはどう考えてもマイナスにしかなりません。
一度墜ちた信頼性は元に戻すのも大変な事です。
企業も真剣に取り組むべき時代なのです。
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