2026年3月28日土曜日

「辞めるの?」家族経営の社長パワハラ、泣き寝入りする従業員 相談窓口も身内…「誰も声を上げられない」

「辞めるの?」家族経営の社長パワハラ、泣き寝入りする従業員
 相談窓口も身内…「誰も声を上げられない」

 

2026年3月28日() 14:00 西日本新聞(山下真)

 

 「それ、どういうこと。会社辞めるの?」。威圧的な発言を繰り返すパワハラ加害者は、家族経営の小さな企業の社長だった-。他の役員に相談しても、家族同士のかばい合いで見過ごされ、仕返しされるかもしれない。そう悩み、告発に踏み切れずにいるという従業員に話を聞いた。

 

 「社長が会議で感情的になって…。業務指導の範囲を超えて、人格を否定することもあります」

 

 九州北部にある販売・サービス業者に勤める従業員は、記者にとつとつと語り始めた。社長によるパワハラ行為が複数のスタッフに及んでいると訴える。

 

 この会社では終業後、各販売店をオンラインでつなぐ業務報告の会議が開かれる。ここで社長が特定の誰かを名指しし、きつく罵倒することがあるという。

 

社員旅行の出欠確認

 録音データを聞かせてもらった。昨年12月の会議では、スタッフの仕入れが気に入らなかったのか、社長が声を上げる。

 

 「ばかの一つ覚えというやつや。考えてないよ、本当に」「(研修で)いろいろな所に連れて行ってあげてるんだけどな。無駄なんやろうね。金がかかるんやけどな」

 

 今年2月の会議では、社員旅行の出欠確認を巡って口調を強める。「行かないってどういうこと? 俺、何か処罰しないといけなくなる? 辞めるの?」。不参加なら解雇だと迫るような言葉まで飛び出した。

 

 この会社は30人程度が働き、社長をはじめ役員は家族が務める。社長は地元の業界団体の役員にもなっている。従業員は「気に入らないスタッフに、社長は『この業界で働けなくしてやる』と迫る。過去にも泣き寝入りし、辞めたスタッフがいる」と打ち明ける。

 

人手不足が慢性化

 どういう意図でこうした言葉を投げかけたのか。2月中旬、記者が取材に行くと、社長は発言について「いつかは覚えていないが、おそらく言ったのだろう」とおおむね認めた。その上で「スタッフを育てようという思いがあった。厳しく言い過ぎた部分は悪かった」と語り出した。

 

 業界は人手不足が慢性化している。従業員は仕事に追われ、幹部候補が育ちにくい環境にある。後進を育成したいと思うあまり、自らが若い頃に受けた昔の指導と重ねていたという。

 

 社員旅行はスタッフの親睦を深め、チームワークを育むのが狙い。会社が費用負担する福利厚生の一環として積極的にPRする。「できれば参加してほしい思いだった。もちろん、実際に解雇するわけではない」と弁明した。

 

 一連の発言はパワハラではないのか。社長は「分からない。内容によって違う部分もあると思う」と言葉を濁した。

 

実名で訴えなければ…

 働く人がパワハラに悩んだ場合、各都道府県の労働局などにある「総合労働相談コーナー」が相談を受けている。福岡労働局の担当者は「相談者に話を聞き、まずは会社にある相談窓口に行ってもらうように案内している」と説明する。

 

 労働施策総合推進法は2022年から、全ての企業に対して相談窓口の設置などパワハラ防止措置を義務付ける。企業は相談に基づきパワハラがあるかどうかを調べ、必要に応じて加害者を処分する。

 

 労働局の担当者は「企業の相談窓口に実名で訴えなければ、企業もその後の対応ができない」と話す。コンプライアンス(法令順守)を徹底し、幹部社員も複数いる企業なら、こうした対応は有効だろう。

 

家族が相談窓口担当

 ところが、この会社では社長の家族が相談窓口担当になっており、ハラスメント防止の資料は社長が作成したという。スタッフは、告発すれば働きにくくなるのではと懸念し、結局相談できないのではないか。相談しても、公平に判断されるだろうか。

 

 こうした状況を踏まえ、この従業員は嘆く。「職場では社長が絶対的な権限を持つ。仕事を続けるため、波風を立てたくないからと誰も声を上げられず、パワハラが黙認されている」

 

 会社は34日、トップのハラスメント防止などを見据え、店長にも人事などの権限を移し、社長に集中しないように対応した。

 

「法の限界」解決難しく…まずは自分を守る 原昌登・成蹊大教授に聞く

 家族経営の小規模企業で社長によるパワハラがあったら、どう対応すればいいのか。成蹊大の原昌登教授(労働法)に聞いた。

 

 現在の法制度は、事業者にハラスメント防止の措置を義務付けるという立て付けだ。社長は先頭に立って防止に取り組まないといけないが、社長自身が加害行為に及ぶという問題は解決が難しく、法の限界の部分と重なる。

 

 一般的には、まず労働局などの行政に相談することが考えられる。だが、労働局は防止措置を講じているかといった法的な観点から企業を指導することが中心で、個別の事案を調査し、これがパワハラに当たるなどと認定することはできない。相談する側のニーズからすれば、制度上の限界があるといえる面もある。

 

 録音や文書などの証拠をそろえ、会社側を裁判で訴えるという手だてもある。ただ、本人の負担はかなり大きく、職場で働き続けるのは事実上難しくなるかもしれない。職場環境の改善には限界があり、経営者によるハラスメントは対応が難しいのが実情だ。

 

 規模の大きな会社なら、被害者が部署を変えたり、休職制度で休んだりすることもあり得るだろうが、小規模な会社では難しい。もし深刻な被害を受けたら、心情的に納得がいかないかもしれないが、自分の心身を守るため、その職場をいったん離れることも選択肢に入れてほしい。まずは1人で悩まず、周囲や行政、弁護士などの専門家へ相談することが大切だ。


《カウンセラー松川のコメント》

日本の企業総数の99.7%、337万者強は中小企業です。
しかし、その中小企業も
製造業その他なら「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
」、
卸売り業なら「
資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人」、
小売業なら「
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人」、
サービス業なら「資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人」です。
しかし、これを小規模事業者にすると、84.5%の285.3万者です。
製造業その他なら「従業員20人以下」
商業・サービス業なら「従業員5人以下」
となります。
我が国の殆んどの企業は従業員が20人以下であり、
商業・サービス業ならば就業規則の制定も不要な5人以下なのです。
この様な小さな組織に大企業同様のシステムを導入するのは難しく、
報じられている企業ならば30人の従業員が居るので、
単なる中小企業となります。
それでも、同族企業や家族経営、社長一人が経営者の様な
外部の者が経営に携わらなかったり、事務部門には不在のの場合も多いです。
この様な状況なので、就職する際には小規模事業者やそれに近い企業では、
それなりの覚悟が必要と言えます。
報じられている社長の対応ならば、まだまだ救いがあると感じられます。
法令や官庁の限界もありますが、実態に沿った体制を整えるのも
行政の仕事だと思います。

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