2021年12月30日木曜日

「車で送るよ」上司は親切心でも部下には“セクハラ”

「車で送るよ」上司は親切心でも部下には“セクハラ”

 

2021/12/30() 9:30 毎日新聞

 

 A美さん(23)は、従業員数約200人の機械部品製造卸会社で営業アシスタントを務めています。直属の上司、B太さん(35)の態度が親切なのか、セクシュアルハラスメントなのか、誰にも相談できず悩んでいます。特定社会保険労務士の井寄奈美さんが職場のセクハラについて考えます。

 

 ◇上司から「いつでも送るよ」

 

 A美さんの職場は郊外にあり、社員の大半は自家用車で通勤しています。A美さんは自動車運転免許を持っていないため、電車とバスを利用しています。

 

 昨年4月に入社し、最初の3カ月は研修期間で、ほとんど定時で帰宅していました。バスの本数が多い時間帯で特に不自由しませんでした。しかし7月から営業部に配属となってから、残業する日が出てきました。バスは午後8時台になると1時間に2本になります。A美さんは残業のときはバスの時間に合わせて仕事を終えるようにしていました。

 

 A美さんは直属の上司、B太さんの指示を受けています。日中、B太さんは外回りが多く、他の先輩のサポートを受けて仕事を進めていますが、B太さんが夕方に会社に戻ってから仕事の修正を命じられることがあります。

 

 ある日、A美さんはいつもより遅くなり、バスの時間を気にしていると、B太さんが「僕は車で来ているから駅まで送りますよ」と言います。隣の部署で残業していた同期の友人と2人で駅まで送ってもらいました。

 

 A美さんは翌朝、B太さんにお礼を伝えると、「僕の帰り道でもあるので、いつでも送りますよ」と言われました。A美さんは「それは申し訳ないので大丈夫です。会社からバス代をもらっています」と返しました。その後はしばらく残業がありませんでした。

 

 ◇断り切れず車に2人きり

 

 数カ月後、A美さんは終業間際になってから、B太さんに翌日の打ち合わせに必要な資料の準備を依頼されました。これまで何回かやったことがある仕事でしたが、終業時間までに終わりそうにありません。周りの人が帰宅する中、午後8時前にやっと終わりました。

 

 B太さんも残業していました。B太さんは「遅くまでありがとう。助かったよ。駅まで送ります。おなかがすいたでしょう。帰り道に軽く食事でもどうですか?」と言います。その日は同期もおらず、A美さんとB太さんだけです。

 

 A美さんは「ちょうどバスの時間ですから、お気遣いなく」と伝えましたが、B太さんは「食事はともかく駅まで送ります。僕の指示で遅くなったので上司として当然のことです」と言います。

 

 A美さんは断り切れず、B太さんに駅まで送ってもらいました。車内では、B太さんの家族の話など、とりとめのない話をしていました。しかし、仕事を終えてほっとできるはずの時間に、異性の上司と狭い空間に2人でいることが不快でした。

 

 その日以降、A美さんはできるだけ残業せずに帰宅できるよう事前に当日にすべき業務を聞いて、昼休みを短くしてでも終わらせるようにしています。ただ、また終業間際に仕事を命じられるのではないか、B太さんと2人きりになるのではないかと不安です。

 

 ◇職場のセクハラとは

 

 職場のセクシュアルハラスメントについて考えます。A美さんはB太さんの言動を不快に感じています。

 

 職場のセクハラは、受ける側の働く人の意に反する性的な言動に対する反応により、労働条件に不利益を受けたり(対価型)、就業環境が乱されたり(環境型)することです。

 

 事例のA美さんのケースでは「自家用車で異性の上司と2人きりになることを強要されたこと」が性的な言動になるのかどうかが判断のポイントです。

 

 上司のB太さんにセクハラのつもりはなく、親切心からの行動かもしれません。しかし、A美さんは2人きりで車に乗ることに不安や不快を感じています。また通勤経路とはいえ、社外で2人きりで車に乗っているところを第三者が見た場合、なんらかの臆測をされる可能性があります。B太さんの行動は上司として望ましいものとは言い難いでしょう。

 

 上司と部下の関係では、上司の提案に対して部下からは「NO!」と言いにくいものです。「小さな親切、大きなお世話」という言葉もあります。部下がはっきりと断らないのをいいことに、業務の関係を超えて部下のプライベートに入りこむ行動は避けなければなりません。

 

 ◇プライベートに踏み込まない

 

 特に、自家用車はプライベートな空間です。運転者がどこを走らせるか主導権を握ります。2人きりで同乗させられる方は大きな不安を抱えることになります。B太さんは「バスを待つより車の方が早くて便利」と考えているかもしれませんが、それはB太さんの価値観でしかありません。A美さんがどう考えるかを優先しなければなりません。

 

 A美さんは可能であれば、B太さんからの申し出をはっきりと断り続けることです。社内にハラスメント相談窓口があれば「困っている」と相談しましょう。ハラスメント相談窓口は「ハラスメントではないか」と不安に感じることも相談の対象です。それらが難しい場合は、外部の専門家や、都道府県の労働局にある雇用環境・均等部を頼ります。

 

 職場で不安を抱えたまま仕事をすることは、社員の心身の健康を損なうことにつながります。上司は、親切なつもりが押し付けになっていないかどうか、気配りが求められます。特に部下のプライベートに踏み込むことは避けるべきです。


《カウンセラー松川のコメント》

ニュース見出しから「ハラスメントが発生している」との
ミスリードを狙ったニュースです。
ニュースの冒頭では相談者がセクハラかどうか迷っているとのこと。
ハラスメントの第一は被害感覚の有無です。
だから、迷っているならば、まだハラスメントは発生していません。
それをニュースとして面白くする為に、
何とかしてハラスメントに仕立て上げようとしている感があります。
行為を受けた者が「ハラスメントだ」と感じれば、
それはハラスメントの可能性がありますし、
逆に「ハラスメントではないかも」と感じているのであれば、
それはハラスメントでない可能性が非常に高いです。
また、「ハラスメントではないかも」と感じていても、
その行為を受けたくなければ、行為を受けずに断ってしまう事で
相手の出方によって、ハラスメントに発展する場合もあります。
その時に嫌悪感を抱けば、そこからがハラスメントです。
何でもハラスメントで片付けてしまうのは、
社会生活を送り難くするだけですので、
マスコミの風潮に流されることなく、
自身の感覚で判断することが大切です。

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