2021年12月15日水曜日

グロー損害賠償訴訟 「係争中」 口閉ざす関係者

グロー損害賠償訴訟 「係争中」 口閉ざす関係者

 

2021年12月15日() 18:51 産経新聞(野瀬吉信)

 

日本の福祉業界では「障害者福祉の滋賀」といわれている。その滋賀の誇りを大きく毀損(きそん)するスキャンダルとなった社会福祉法人「グロー」(滋賀県近江八幡市)の損害賠償訴訟。性暴力やセクハラを受けたとして元職員の女性2人が提訴して1年が経過した。「係争中」を理由に一見平穏だが、「熱(ほとぼ)りを冷まさないで」「なかったことにするな」といった悲痛や怒りの声が蠢(うごめ)いている。琵琶湖に例えると、湖面はさざ波だが、湖底は大きく渦巻いている。

 

滋賀では「障害者福祉の父」と呼ばれる糸賀一雄氏(1914~68年)が日本の基礎を築く先駆的な実践を積み重ねた。県職員でもあった糸賀氏の言葉「この子らを世の光に」は福祉の基本思想として滋賀だけでなく全国で継承されている。

 

■偏った習慣、今も

 

スキャンダルは突然、表面化した。

 

グローの理事長、北岡賢剛氏(63)=令和2年12月24日に理事長辞任=から性暴力やセクハラ、パワハラを繰り返し受けたとして、元職員の女性2人が昨年11月13日、北岡氏とグローを相手取って計約4250万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。訴状によると、女性2人は7~10年以上にわたって、北岡氏から強制わいせつ行為などを繰り返し受けていた。

 

今年1月12日、Zoomを使ったオンライン会見で女性2人は「(業界には)ハラスメントを受けても『受け流すのがプロだ』という偏った習慣が今も根強く残っている。裁判を北岡氏やグローの問題と片付けず、自分の職場でも起こりうる、あるいはすでに起こっていることと捉え、組織の在り方や人を大切にすることを考え直してもらいたい」と訴えていた。

 

■業界のビッグネーム

 

この訴訟が一つの社会福祉法人の問題に終わらなかったのは北岡氏が障害者福祉業界のビッグネームだからだ。

 

今年は新型コロナで中止となったが、北岡氏は毎年2月に大津市内のホテルで開催される業界の祭典「アメニティーフォーラム」を中心になって運営していた。フォーラムには全国の業界人だけでなく知事や国会議員ら政治家、官僚、文化人など1200人を超える関係者が集う。また、北岡氏は厚労省社会保障審議会障害者部会委員、内閣府障害者政策委員会委員に選任され、一定の影響力を保持(ともに昨年11月辞任)。そんな北岡氏を〝障害者福祉業界の天皇〟と称する人もいる。

 

個人的にも北岡氏の幅広い人脈に接したことがある。

 

平成28年2月、アメニティーフォーラム開幕日に開く飲み会に参加しないかと、親しい知人を通じて北岡氏から誘いがあった。同市内の洋風お食事処では、北岡氏のほかフォーラム参加の安倍昭恵さんらとともにカウンターに座った。少し遅れてタレントの梅沢富美男さんも駆け付け、楽しいひと時を過ごしたが、2度目のファーストレディーだった昭恵さんと気軽に会食する北岡氏の〝実力〟を強く意識した。

 

■求められる県の対応

 

提訴後、北岡氏は口を閉ざしているがグローはホームページで「一方的な糾弾がなされておりますが、当方の主張を的確に行い、適切かつ真摯(しんし)に対応する」とコメントしている。

 

原告の支援団体によると、訴訟は非公開の進行協議中で、傍聴できる弁論は来年1、2月になる。これまでに原告が主張する北岡氏によるセクハラ、パワハラの不法行為は100以上に上り、準備書面で提出したという。

 

「係争中」を理由に関係者は性暴力、ハラスメントについて口を閉ざす。業務への影響もグローや、グローを障害者支援施設「むれやま荘」(滋賀県草津市)など2施設で指定管理者に指定している県は「支障はなく、影響もない」と口をそろえる。ただ、「問題がないわけない」という厳しい声はある。また、スキャンダルの表面化から1年が経過し、「『熱りが冷めた』と、なかったことにされる嫌な予感がする」「悲痛や怒りの言葉が蠢いている」と憂慮する関係者もいる。

 

糸賀一雄生誕百年記念事業(平成26年)の実行委員に北岡氏とともに名を連ねた滋賀県湖南市の前市長、谷畑英吾氏(55)は「グローが滋賀のイメージを大きく損なったのは確か。県は訴訟の行方を見守るだけでなく、福祉業界の実態調査を自ら実施し、性暴力やセクハラなどの根絶を宣言すべきだ」と迫る。

 

裁判は長期化が必至。「行方を見守る」という決まり文句でやり過ごせるほど、軽い問題ではない。


《カウンセラー松川のコメント》

拙ブログの1月20日付け記事
「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: 「性暴力なくす社会に」滋賀の社福法人損賠訴訟で原告 (mms119.blogspot.com)
これの続報です。
ニュースに記述の[平成28年2月、アメニティーフォーラム開幕日に開く飲み会]
ですが、列席者が当時の首相夫人安倍昭恵やタレント梅沢富美男とのことなので
要するに自身の力の誇示の為の宴席であり、
この様な宴席を設ける者は何か後ろめたい事をしている人が少なくないです。
行政も協力して確実な実態調査や業界の健全化を図って欲しいです。

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