部活顧問からのハラスメント放置 行政の介入困難な私立校の権利侵害
2025年6月10日(火) 7:00 毎日新聞(斎藤文太郎)
部活動の顧問からいじめやハラスメントを受けて学校や自治体に相談しても、対応してもらえない――。私立学校に通う子どもの保護者からNPO法人に寄せられた相談だ。
私立学校は公立学校に比べて行政による指導監督権限が及びにくいとされる。このNPOは、私立に通う児童・生徒の権利が侵害がされた場合の救済機関の必要性を訴えている。
9日に記者会見した「スクール・リバティー・ネットワーク」の中村眞大共同代表は、私立学校が原則、教育委員会の管轄外となっていることから「児童・生徒が権利侵害を受けたときの相談先が明確ではない」と指摘する。
国が私立高の授業料無償化を進めていることを踏まえ、「税金が私立学校にこれまで以上に投入される。ガバナンスや公共性もしっかり高めるべきだ」と話した。
NPOによると、大学を除く私立学校の多くは都道府県が所管しているが、「建学の精神」に基づく自主性が尊重されるため行政の介入権限は弱く、情報公開を義務づける仕組みが少ない。
保護者が学校に関する情報を漏らさないよう求める「誓約書」を書かされるケースも複数あり、権利侵害が発生しても表面化しにくいという。中村代表は「『私学の自主性』が『私学の治外法権性』を生み出している」と強調する。
東京都内の私立高に娘が通うという母親は会見で、「校則がない」とうたう学校に入学したのに、まもなく「ドレスコード」として靴や服装を指定されたことを明らかにした。「違反すれば指導を受け、不当と思える退学処分も行われている。都に通報しても『学校に伝える』と言われるだけだった」と話した。
卒業生らに7億円超の損害賠償請求訴訟を起こした武蔵野東学園(東京都武蔵野市)の卒業生保護者も登壇。「現役の保護者は報復を恐れ、内部告発もままならない。学園のガバナンスも、都の指導・監督も機能していない」と訴えた。
NPOは2023年発足。多くの私立学校の児童・生徒や保護者から相談が寄せられており、「運動部の顧問からハラスメントや部員を使ったいじめを受けているが、学校に相談しても対応がなく、県に相談しても改善は見られなかった。泣き寝入り状態だ」といった内容もあるという。
このほか、「学校創立者の誕生日に、『お誕生日おめでとうございます』と叫ぶ儀礼を強要される。リモートでも実施された」「『黒い服を着てはいけない』『サッカーをしてはいけない』というルールを押しつけられる。理由を聞いても非科学的な回答しか返ってこない」といった声も寄せられている。
会見に同席した日本大の末冨芳教授(教育行政学)は「誰に言っても何も救われない、という状況を改善するため、責任部局を私学行政を担う都道府県に置くべきだ。学校経営者の資質・能力を含め、私立学校の公共性を改めて考え直すタイミングに来ている」と指摘した。
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