2025年6月10日火曜日

死亡の警部補の妻「上司の重過失に言及なく、残念」 長崎地裁判決

死亡の警部補の妻「上司の重過失に言及なく、残念」 長崎地裁判決

 

2025年6月10日() 21:20 毎日新聞(樋口岳大、百田梨花、添谷尚希)

 

 長崎県警佐世保署の男性警部補(当時41歳)が202010月に自殺したのは、当時の上司2人のパワーハラスメントと長時間労働が原因として、遺族が県に計約13870万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、長崎地裁は10日、ほぼ請求通りとなる約13587万円の支払いを命じた。松永晋介裁判長は、警部補の死亡前に月200時間前後の時間外労働が常態化していたとして、県側の安全配慮義務違反を認めた。

 

 「上司への求償や警察の業務改善につながる判決を願ったが、そうはならず、残念」。亡くなった警部補の妻(54)は勝訴したものの、判決後に長崎市で開いた記者会見で失望感をにじませ、控訴を検討する考えを示した。

 

 国家賠償法は公務員個人が職務中の行為で他人に損害を与えた場合、国や自治体が賠償責任を負うと定める。一方、国賠法には公務員に故意や重大な過失があった場合、国や自治体が対象者に賠償を求める「求償権」の行使も規定されている。妻は会見で、警部補が残した遺書に「(長崎県警の業務が)改善されることを願います」と記してあったと説明。ただ、判決は重過失について言及せず、「県に求償させ、県警の業務改善につなげたかった」と悔しさをにじませた。

 

 遺族によると、県警は警部補の宿直業務などについて、「ほとんど労働する必要のない勤務」として労働時間に算入しないことが認められている「断続的労働」とみなし、時間外労働の割増賃金を支払っていなかった。遺族側は、こうした運用が長時間労働の一因になったと考え、訴訟ではきちんと労働時間と認めて割増賃金を支払うよう求めた。だが判決は、この点も認めなかった。

 

 警部補が生前に着けていた腕時計や結婚指輪、遺品のスマートフォンや水筒を持参して判決に臨んだ妻は「お金が欲しいのではなく『県警が変わってほしい』と思って裁判をした。それをくみ取ってもらえず、主人も残念に思っているだろう。これでは終わらない」と語った。


《カウンセラー松川のコメント》

拙ブログ6月10日付け記事
「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: 上司からのパワハラで警察官自殺 県に1億3500万円の損害賠償を命じる判決 長崎地裁
これの関連ニュースです。
県警は警部補の宿直業務などについて、「ほとんど労働する必要のない勤務」
として労働時間に算入しないことが認められている「断続的労働」とみなし、
時間外労働の割増賃金を支払っていなかった
・・・とのことですが、
命令や指示等に基づき、正規に勤務先で対応可能な状態であるならば、
それは労働者ならば勤務時間とされていることに対し、
警察官ならば労働に対する解釈が異なるのは、
今後の働き方として問題があると思います。
「公務員だから」「公安職だから」で、民間企業の労働者と差別化するのも、
今後の求人に対する応募者減にならないか心配です。
勿論、特殊な環境であるので、一概に民間企業の労働者と同一視も
要検討になると思います。
また、遺族である原告から
「県に求償させ、県警の業務改善につなげたかった」
との声ですが、この思いは当然だと思います。
しかし、被告である警察に対して批判的な判決を出せば、
正当性を主張している被告は当然の様に控訴するでしょう。
ところが、これを単なる金銭解決にすれば、
県であれ県警であれ政府であれ、関係者の個人的な懐は痛みませんから、
満額回答も可能であると裁判官は判断したのかも知れません。
勿論、労働環境になんて興味も示さず、知識も薄いから、
この度の判決になったのかも知れません。
その点については、報道だけでは判断出来ないのが残念です。

御遺族の皆様へ
県を相手とは言え、警察の実態は国(=政府)です。
裁判官も政府の人間ですから、政府の顔に泥を塗る判決はなかなか出しません。
二審である高裁判事であれば、国寄りの判決を出す可能性は高くなります。
それは最高裁でも同様でしょう。
金銭解決を望むのでなければ、控訴は必要ですが、
控訴をする以上は、何も得られない結果となる覚悟もお持ちください。

0 件のコメント:

コメントを投稿