2025年6月2日月曜日

▼LGBTQの学生 9割ハラスメントなど経験 NPO法人が調査

LGBTQの学生 9割ハラスメントなど経験 NPO法人が調査

 

2025年6月2日() 10:00 毎日新聞(西本紗保美)

 

 LGBTQなど性的少数者の若者を対象にした調査で、この1年に学校で困難やハラスメントを経験した中高生は9割にのぼり、そのうち6割超が教職員が要因になっていることが、NPO法人の調査結果で判明した。学校で性の多様性について学ぶ内容に誤りや差別的な発言があることも浮かんだ。

 

 2023年施行のLGBT理解増進法では、性的少数者についての教育や相談体制について努力義務が課せられた。ただし現行の学習指導要領は性の多様性について触れられていないため、授業の内容や質に差が出ているとみられる。

 

 ◇10代の半数超が「自殺考え」

 

 調査は学校や行政などでLGBTQへの理解の啓発や支援に取り組む認定NPO法人「ReBit(リビット)」が23月にインターネット上で実施。1234歳の当事者4733人から寄せられた回答を分析した。22年にも実施しており、今回で2回目となる。

 

 この1年で「自殺を考えた」と回答した当事者の割合は、10代で539%、20代で405%、30代で303%となった。また、10代で自傷行為を経験した割合は4割超、自殺未遂は2割弱となった。

 

 ◇学校の教職員からハラスメントも

 

 学校生活関連の設問では、中高生の回答者1077人のうち、この1年で困りごとやハラスメントを経験したと回答した割合が895%に上った。経験したと答えた人に具体的に内容を尋ねたところ、他の生徒から「自分や他の人が当事者でないと決めつける言動」が637%、「LGBTQをネタ・笑いものにされた」が439%だった。

 

 一方、学校の教職員がきっかけで困難やハラスメントを経験した割合は638%に上り、「不要な男女分け」(462%)や「自分や他の人が当事者でないと決めつけた言動」(301%)などが挙がった。「担任にセクシュアリティーについて安心して相談できない」と答えた中高生の割合は946%に上った。

 

 さらに、当事者のうち中学生は401%、高校生は240%がこの1年でいじめや暴力を経験していた。中学生では「体を触る、服を脱がされる、性的なことを言われる」などの性暴力を、80%が生徒から、24%が教職員から経験したと回答した。

 

 ◇教科書には載っていても…

 

 LGBTQを巡っては、22年に改定された生徒指導提要で、学校における適切な支援体制の必要性が盛り込まれた。翌23年施行のLGBT理解増進法では、性的少数者についての教育環境の整備や、当事者の相談機会の確保などを努力義務としている。

 

 民間の教科書会社も、性的少数者についての記載を増やしてきた。24年度からは小学校中学年の保健体育を取り扱う全社が、LGBTや性の多様性について掲載。25年度からは中学校の道徳と保健体育でも全社が載せた。

 

 こうした流れを受けて、今回の調査でも「過去1年に授業でLGBTQについて教わった」と回答した学生は592%と22年の調査から190ポイント増加した。

 

 ただ、「この1年で教職員から差別や誤った内容の発言があった」と回答した学生は301%に達し、「小学校で性の多様性を教わった」と答えた中学生の割合は3割にとどまっている。

 

 ◇学習指導要領に記載なく

 

 17年の学習指導要領改定では、保健体育で「思春期になると異性への関心が芽生える」という「異性愛」を前提とした記述の見直しを求める声も当事者団体から上がった。しかし文部科学省は「保護者や国民の理解などを考慮すると難しい」として見送った経緯がある。

 

 現在、LGBT理解増進法施行後初となる、10年に1度の学習指導要領改定の議論が進んでいる。リビットの薬師実芳(みか)代表理事は「セクシュアリティーについて安心して相談できる人がいることが、自殺念慮の低下につながるというデータもある。どの学校でもLGBTQについて適切に学び、支援を受けられる体制を整えてほしい」と話している。

0 件のコメント:

コメントを投稿