「願いが叶うならもう一度パパに会いたい」
”パワハラ”で父親を失った娘が涙のメッセージ 新潟・中央区
2025年6月12日(木) 5:00 新潟総合テレビ
18年前、新潟市水道局に勤めていた30代の男性職員が上司から精神的に追い詰められ、自殺した問題を受け、水道局は5月、正しい組織を目指し、問題を風化させないことを誓う植樹式を行った。当時1歳で父親を亡くした娘もこの植樹式に出席し、父への思いを語るとともに、水道局の対応の不誠実さを訴えた。
■パワハラに悩み職員自殺…再発防止誓う植樹式
植樹式で植えられたのは『正風(しょうふう)のき』と名付けられたキンモクセイで、「正しい組織」や「風通しのよい職場」などの意味が込められている。
「来年には成人式で振り袖を着ます。天国から私の晴れ姿見ていてね」
この植樹式で、涙ながらに父親への思いを訴えていたのは、19歳になった娘だった。
■妻が発見した”パワハラ”に悩む夫の遺書
その中で、男性職員の妻もマイクで自身の苦しい思いを吐露した。
「夫は係長から、これまでの業務経験の能力では達成することができない困難な業務を命じられ、夫が分からなくて困っていても係長から教えてもらえず、期限までに終わらせることができないため、係長からの叱責を恐れ、自ら命を絶ってしまいました。家族みんなで楽しい日々を送っていましたが、突然途絶えてしまいました。私は一睡もできぬまま翌日の朝を迎えました。ただひたすら夫が帰ってくるのを待ち続けていました。あまりにも突然で現実を受け入れることができない状況の中で、葬儀の準備をしなければならなく、言葉にならない悲しさ・つらさに押しつぶされました。お通夜の夜、幼い2人の子どもを寝かしつけた後、自宅のパソコンに遺書が打ち残されているのを見つけました。そこには『どんなに頑張ろうと思っていても、いじめが続く以上、生きていけない。分からないのは少なくとも分かっているはずなのに、いじめ続ける。人を育てる気持ちがあるわけでもないし、自分がおもしろくないと部下に当たるような気がする。このままではどうして良いか分からないし、相談しろと建前的には言うけど、回答がもらえるわけでもない。逆に怒られることが多い。今まで我慢していたのは家族がいたからである。でも限界です』と打ち残されていました。ただ悔しくて、悔しくて涙が止まりませんでした」
■当時1歳の娘は来年”成人式”
「キンモクセイの木を“正風のき”と名付けて植樹いたします。正風の木の『正』という文字には、夫の名前の正宗の1文字、正しい組織になるようにという願いが込められています。『風』という文字には、この事件を風化させない、風通しの良い職場になるようにという願いが込められています。『き』には気持ち、これまでの、これからの軌跡をこの木に刻むという願いが込められています。2度とこのような事件が起こらないようにするためには、決してこの事件を風化させないでください。そして、皆さんのお一人お一人の認識が必要不可欠です。夫が亡くなった後の職場アンケートによりますと、夫が職場で悩んでいたこと、元気がなかったことを感じている方、気づいている職員の方が複数いましたが、誰からも助けていただけず、夫はただ一人、悩み苦しみ、自ら命を絶ってしまいました。職場で悩んでいる人、困っている人がいたら、助けてあげてください。パワハラを許さない。見逃さないという強い意思のもと、パワハラ行為をしている人には注意をしてあげてください」
また、当時1歳だった現在19歳の娘も亡き父親への思いをつづった手紙を読み上げた。
「来年には成人式で振り袖を着ます。天国から私の晴れ姿見ていてね。パパは私が1歳の時に天国に行ってしまったので、私の直接の記憶はありません。しかし、ママから、私が生まれてから温かく接してくれたことを聞いてパパをそばに感じています。生まれたばかりの私を見て『この子はママに似るぞ』と言ってくれたこと、周りの方からも、私もママも感じるほど私の性格はママそっくりになりました。パパの見る目はさすがだね。パパが一生懸命考えてくれた私の名前、私は私の名前が大好きです。パパの思いのこもった私を表すもの、名前を書くたびにパパが天国から応援してくれているように思う時があります。この名前を大切にしながら、これからも胸を張って頑張ります。」
■「もう一度パパに」当時1歳の娘が亡き父への思い語る
植樹されたキンモクセイと父親の遺影に向かって手紙を読み上げる娘の声は震え、涙がこぼれていた。
■自殺から18年…再発防止へ前進
当初「パワハラはなかった」と主張し謝罪をしてこなかった新潟市水道局は、遺族が提訴した裁判で”市の責任が認められた”ことから、2023年に当時の水道局長や新潟市の中原市長が謝罪をしている。
しかし、自殺の原因となった当時の上司は手紙で謝罪の言葉を寄せたのみで、遺族が求めてきた直接の謝罪は実現していない。
植樹式で水道局の長井局長は、「これは決して区切り・終わりではなく、むしろ我々にとってスタートになる。このように目に見える形で植樹がなされ、そして銘板が作られた。これを見て職員がまた気持ちを新たにして、常に自分を律することができるように、そんなよりどころにしていきたい」と再発防止に向けた決意を語る。
今後は全職員を対象にハラスメント研修を行うほか、毎年5月8日には黙祷を捧げるとしている水道局。
二度と同じように悲しむ人を出さないためにも、形だけでなく根本から組織風土などを変えていくことが望まれる。
新潟いのちの電話
025-288-4343(24時間対応)
《カウンセラー松川のコメント》
拙ブログ2022年12月9日付け記事
「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: 新潟市水道局に賠償命令の“パワハラ訴訟” 自殺した職員の遺族が出した手紙に3年越しの返答 判決後…遺族「3年前に欲しかった」《新潟》
これの続報です。
精神的に追い詰めさせて自殺をさせてしまう。
これは直接に手を下さなくても、
追い詰めた者は殺人に手を染めたのと代わりありません。
何をしても亡くなられた方が戻ることはありませんが、
亡くなられた方を追い詰めた者は「殺人の正犯」
それを看過した上司は「殺人の共犯」であることを
一生忘れないでください。
決して司法で裁かれた訳ではありませんが、人を殺しているのは事実ですから。
そして、ハラスメントでの直接の被害者は一人だとしても、
本当の被害者はそれだけではないことも、全ての人に知って頂きたいです。
御遺族の皆様へ
辛く悲しい日々を送り続けられたことでしょう。
でも、悲しんでばかりいるよりも、
この事案を風化させないで、また多くの人々に知ってもらうことで、
今後の犠牲者を出さないこともまた供養の一つになると思います。
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