2021年7月23日金曜日

「息子の死を無駄にさせない」 県教委に再発防止策求める両親

「息子の死を無駄にさせない」 県教委に再発防止策求める両親

 

2021年7月23日() 8:30 毎日新聞(松室花実)

 

 自宅の玄関にはあの日、生徒が命を絶つ前に置いていったカバンがそのまま残されていた――。20127月、岡山県立岡山操山(そうざん)高校(岡山市中区)で野球部マネジャーだった2年の男子生徒(当時16歳)が自殺して、25日で9年になる。「悪口を言わない優しい子だったから、言葉の暴力をそのまま受け入れてしまったのかな。『少しは悪口を言ってもいいんだよ』と教えておけば良かった」。両親はいまだに悔やみ続けている。

 

 県教委は当初、生徒が自殺した原因を「不明」としたが、両親が第三者委員会による再調査を繰り返し要望。ようやく調査が始まったのは、生徒が亡くなって6年後の188月だった。両親は「決して命を無駄にするような子ではなく、『まさかうちの子が』と信じられなかった」と振り返る。今年3月、「野球部監督からの激しい叱責などが自殺の原因だった」とする報告書がまとめられ、県は6月、ホームページで全文を公開した。

 

 第三者委は報告書で、再発防止策の進捗(しんちょく)状況の公表と第三者からの評価、検証を提言した。だが、県教委からは説明や関係者の処分など具体的な対応は何もないという。両親は「息子の死を無駄にしたくない」といい、報告書で指摘された問題点を踏まえた適切な再発防止体制を早期に築くよう求めている。

 

 報告書によると、生徒は114月に入学し、野球部に入部。元部員は聞き取り調査に対し、監督の男性教諭から「ミスをした時に『殺すぞ』と言われた」「態度が気に入らないとパイプ椅子を振り上げる」と明かすなど、日常的に暴言や体罰が繰り返されていた。生徒もたびたび叱責され、「耐えられない」と126月に退部。だが他の部員から戻るよう促され翌月、「マネジャーなら叱られない」と考え復帰した。

 

 同年725日、別の部員が体調不良を訴え、監督は氷の用意をさせようと生徒を呼んだが、部室を清掃中で気がつかなかった。激怒した監督は練習後、炎天下のグラウンドに生徒を1人残し、怒鳴り続けた。その帰り道、生徒は同級生に「もう俺はマネジャーじゃない。存在しているだけだ」と話したのが最後の言葉となり、同日夜、自ら命を絶った。

 

 こうした事実が報告書で明らかになった3月、遺族は県教委に説明と謝罪、関係者の処分などを求めた。県教委からは、父親が再度メールを送った5月中旬まで返答がなかったという。当時の監督とは生徒が亡くなった1年後、一度だけ面会したが謝罪はなかった。「手紙でなら謝罪を受け入れる」と申し入れても一切連絡がなく、現在も教員を続けているという。県教委は取材に対し「再発防止策は検討中。遺族への謝罪、関係者への処分なども調整中なので、現段階で具体的なことはコメントできない」としている。

 

 両親は「パワハラをする教員がいる限り、ひとごとではない。二度と同じ悲劇が起こらないよう、教員への指導や法整備などパワハラをなくすための仕組みを整えなければならない」と訴えている。


《カウンセラー松川のコメント》

行政としてはもう触れて欲しくない事件なのだと思います。
また、掘り返されると都合の悪い事情があるのかも知れません。
だから、調査に及び腰の部分があるのでしょう。
教員は児童生徒に対しての絶対者でありますから、
尚更にハラスメントに関する知識と防止に注力して欲しいです。

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