2021年6月8日火曜日

「え、おかしくない?」産休でボーナスなし…“団交の鬼”と一緒に闘った22歳

「え、おかしくない?」産休でボーナスなし…
“団交の鬼”と一緒に闘った22

 

2021年6月8日() 9:35 西日本新聞(竹次稔

 

 「え、おかしくない?」

 福岡県内にある特別養護老人ホームの介護職を産後休業中だった恵美(22)=仮名=は目を疑った。支給されるはずのボーナスが振り込まれていなかったのだ。


 昨年4月末から産前休業に入り、6月上旬に出産。731日までが産後休業で、81日から育児休業に入っていた。


 ボーナス支給日は毎年710日と1210日。4月までは勤務しており、その分の支給は当然の権利だと思っていた。


 知り合いの社会保険労務士に尋ねると「それはおかしい」、福岡労働局も「あなたの話だけでは違反とは言えないが、望ましくない」との見解だった。


 昨年8月、施設長と話し合いの場を持った。「給与規定で、休職中の人はボーナスの支給対象から外すと決めている。今までも支払っていない」と一蹴された。


 納得できない中、知人に連合福岡ユニオン(福岡市)の存在を教えてもらった。担当は「団交の鬼」、特別執行委員の志水輝美(70)になった。

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 11月、志水は幼子がいる恵美を伴い、施設側と団体交渉を始めた。志水はボーナス不払いの根拠を問いただすが、施設側の対応はのらりくらりで「最終的には理事長が判断する」などと曖昧な回答が続いた。


 志水は反論を加えていく。1210日のボーナスから、産前休業に入るまでの4カ月間ほどは勤務実態がある。前年もボーナスは支払われており、労働基準法に基づいて、勤務実態に応じた支払い義務が生じていると訴えた。


 さらに、「休職中の者はボーナスの支給対象から除外する」との給与規定そのものを問題視。男女雇用機会均等法や育児・介護休業法では、出産、育児休業の取得などによる不利益な取り扱いを禁じている。規定自体が違法であり、見直すべきだと求めた。


 施設へ問題提起する恵美に、「圧力」ではないかと感じる事態も起きていた。「男性職員と不倫しているのではないか」とあらぬうわさが流された。一部管理職が関与していた疑いが生じ、志水は「セクハラではないか」と糾弾。だが、この問題についても法人側は責任を認めなかった。


 さすがにくじけそうになる恵美だったが、志水は繰り返し「最後まで一緒に闘っていくから」と励ました。「今回はあなたの話ではあるが、あなただけの問題ではない。女性差別という根本的な問題がベースにある」


 団交だけが志水の闘い方ではない。労働基準監督署の監督官に対し、面会や書面、電話とさまざまな手段を使い、法人への監督調査を働きかけた。法人側には大きなプレッシャーになったのだろう、「裁判で決着をつける」としてきた姿勢が変化していった。


 法人側は5月中旬、取材に対して「同意書を既に交わした」と明らかにした。賞与の一部に該当する「和解金」の支払いがあったとみられる。

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 本来であれば、施設長に一蹴された時点で、多くの職員は泣き寝入りするだろう。恵美はくじけず一人で労働基準監督署に行ったが、すぐに対処してもらえなかった。だが、志水が一緒に付き添うと「申告を正式に受理され、全く応対が違った」という。


 福祉の現場で、若い女性は貴重な介護の担い手として高齢化社会を支えている。「出産に伴う休職という部分で労働者の権利が守られないならば、男女平等の社会は成り立たない。だから徹底的に闘った」と志水は振り返る。


 粘り続けた恵美はその後、この施設を去り、新しい職場で働き始めたそうだ。「この経験は、これからの人生に絶対に役に立つはず」と話している。志水も母として、労働者として、少し強くなった恵美の幸せを願っている。


《カウンセラー松川のコメント》

福祉業界も職場内での嫌がらせが多く感じます。
介護職の方々は奉仕の心を持っているので
強く抗うよりも諦めて受け入れてしまう傾向が
高いのではないでしょうか?
今般は[産休中なのでボーナスが無支給]との事案です。
ハラスメントの種類からすれば明らかにマタハラです。
「産休を使用するとボーナスを全面カットする」と
他の職員にも威圧していると解釈出来ます。
「Mメンタルサポート」 ブログ出張版: 高額すぎる葬儀に不適切ケア…福祉現場のパワハラ支配 (mms119.blogspot.com)
での《カウンセラー松川のコメント》でも述べましたが
他に求人のある業界ならば
理不尽な職場に義理を果たす必要などありません。
職員の定着率の悪さは職場の悪さの指標になりますから、
無理に残留する事は外部に対して悪事を隠蔽しているのと同じなのです。
その点では、この事案の被害者は理不尽な職場を退職し、
新しい職場へ移られたそうなので、正しい選択をしたと思います。
労働者の味方であるべき労基署も
悪質事案対処が多いのに担当する職員は少ないと言う過酷な状態なので
有ってはならないのですが塩対応となる事もあります。
それは私自身も経験しているので分かります。

被害者の方へ
闘いに於いて良きパートナーと巡り会えた事は幸いでした。
その幸いから得られた事を活かして欲しいと思います。

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