2022年9月17日土曜日

多忙な課長「部下からのメール放置」はパワハラか

多忙な課長「部下からのメール放置」はパワハラか

 

2022年9月17日() 9:41 毎日新聞

 

 ハラスメントや精神疾患、労働条件など、職場で起こるトラブルの原因はさまざまです。部下を持つ上司が、職場で問題を起こさないために知っておくべき知識とは何か。特定社会保険労務士の井寄奈美さんが具体的な事例を基に解説します。

 

 A太郎さん(38)はIT関係の会社で開発部の課長をしています。部下は15人です。先日、人事部から呼び出され、「A太郎さんからパワーハラスメントを受けている」という相談が部下からあったと聞き、とても驚いています。

 

 A太郎さんは課長職ですが、いわゆるプレーイングマネジャーで、自分自身の担当業務があります。部下の業務の管理、他部署との調整、部門をまたいだプロジェクトチームの業務などもあり、朝早くから夜遅くまで多忙な日々を過ごしています。

 

 A太郎さんの課は課員の頑張りで好成績をあげており、夏のボーナスも他部署よりも多く支給されました。課員も満足しているだろうと考えていたところにA太郎さんは人事部から呼び出されました。ハラスメント相談室に「課長からパワハラを受けている」という相談があったということでした。

 

 ◇「まさか自分が」

 人事部から呼び出された時、A太郎さんは「まさか自分が」と驚きました。A太郎さんは部下を怒鳴りつけたこともなく、無理難題を押し付けたこともありません。何をもってパワハラと言われているのか全くわかりませんでした。

 

 人事部から伝えられたのは「A太郎さんにあいさつをしても無視される」「仕事のことで相談をしても、まともに向き合ってもらえない」といった内容でした。「メールにCCを入れているのに確認してくれない」という相談もありました。

 

 これらの行動は部下を無視し、「人間関係からの切り離し」(仲間外しや無視)を意図したものと考えられるため、パワハラに該当するのではないかとのことでした。

 

 A太郎さんは部下を無視したつもりは一度もありません。ただ、指摘されている内容は、自分の行動としてあり得ると感じました。

 

 ◇仕事に集中すると周りが見えず

 A太郎さんは仕事に集中すると周りが見えなくなるため、あいさつをされても返していない可能性は十分ありえました。ただ、特定の部下を無視する意図はなく、タイミングの問題でした。

 

 また、部下から相談を受けた時、自分が直接対応することは多くありませんでした。相談してきた部下のレベルに合ったリーダークラスの部下に相談に応じるよう依頼してきたからです。その方が教える方も教えられる方も、業務に対する理解が進むと考えていました。

 

 メールのCCについても、CCで入ってくるメールの数が多すぎて、全てを確認していないことは事実でした。自分が見落としている場合、部下から「あの件の確認お願いします」「あの件はどうなっていますか」など、直接の働きかけがあることが通例でした。

 

 自分の抱える業務量を考えると、それらの対処方法で手いっぱいでした。これまで大きな問題はなく、自分のやり方を部下も理解してくれていると思い込んでいました。

 

 ただし、今回の件で、そのやり方が合わないと感じている部下がいることは理解できました。でも、人事部に相談する前に、直接、自分に言ってくれたら説明もできたのにと、少しモヤモヤしています。

 

 ◇職場のパワハラとは

 20224月から中小・零細企業を含むすべての会社にパワハラに対する防止措置をとることが義務付けられました。パワハラに対する世間の関心も高まっているといえます。

 

 パワハラとは「優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を害する行為」と定義づけられています。パワハラとされる行動類型としては、(1)身体的攻撃(2)精神的攻撃(3)人間関係からの切り離し(仲間外し・無視)(4)過大な要求(5)過小な要求(6)個の侵害――が挙げられています。

 

 今回のA太郎さんの対応は、(3)の「人間関係からの切り離し」に該当するのではないか――と思われるケースです。

 

 A太郎さんの側からすると「今までもこのやり方でやっており、問題はなかった」「部下も理解してくれている」と考えがちです。しかし、見方を変えると「問題は生じていたが気づいていなかった」「部下は言いたいことはあるが、言えなかった」とも考えられます。

 

 今回、部下がA太郎さんに直接言わず、人事部に相談をしたということは、「言いたいことはあるが、言っても聞いてもらえない」と部下に思われている可能性が高いといえるでしょう。

 

 管理職になった場合、自分の仕事だけでなく、部下の様子に気を配ることが求められます。「自分の考えは伝わっているはず」と思い込むのではなく、部下に自分の考えを説明し、部下の考えも聞き、お互いの考えのすり合わせをすることが重要といえます。場合によっては、これまでの自分のやり方を見直す必要もあるでしょう。


《カウンセラー松川のコメント》

[挨拶をしても返答が無い][相談しても対応してもらえない]
これが事実ならパワハラに該当するかも知れません。
しかし、朝ならば口頭での挨拶をしないのでしょうか?
それとも、その挨拶さえも無視ならばパワハラと言えるでしょうし、
相談を持ちかけても対応せずでもパワハラの叶うせいは高いです。
ところが、実際はメールの読み落としや相談対応は相応の部下に指示。
それでも「パワハラだ」と感じてしまうのは、
どこかに甘やかされている部分があったのでしょう。
また、A太郎さんが熱中すると周囲が見えなくなる性格ならば、
朝の挨拶を交わす時間帯や退勤時間帯は部下の状況を把握するべきで
仕事に没頭するのでなく、受け身の姿勢で勤務するべきでしょう。
管理職云々ではなく部下が出来た時点で、
自分ばかりでなく部下への配意も必要でしょう。
自分への相談事を部下に任せる場合でも任せきりでなく、
相談を持ち込んだ相手にも解決具合や心情把握をするのが
上司としての役目であると思います。
A太郎さんはパワハラ加害者ではありませんが、
部下への配慮が足りなかったのは間違いありません。

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