部活めぐるパワハラが招いた自死の悲劇
部活生に「強烈かつ理不尽な叱責」加えた元顧問に
県が検討する「求償権」とは
2025年3月24日(月) 20:28 琉球放送
2021年に自ら命を絶った、沖縄県立コザ高校の男子生徒の遺族が、県に対して損害賠償を求めていた裁判は、8200万円を支払うことで県との和解が成立した。しかし遺族の前にはまだ、全国の同様の事案でも当事者たちを苦しめている「法律の壁」が存在する。
▼遺族コメント
「元顧問は公務員であることで個人責任を問うことができないという、法の壁に苦しみました」「県には、元顧問に対して、求償権を行使することを強く求めます」
コザ高校の男子生徒(当時2年)が自殺した問題は、第三者再調査委員会によって生徒が所属していた空手部顧問(当時)による「理不尽かつ強烈な叱責」が自殺の原因だと結論付けられている。
しかしその賠償責任は、「顧問個人」ではなく「県」に対してしか問えない「法律の壁」が遺族の前に立ちふさがってきた。国家賠償法の規定では、公務員が職務上の行為で他人に損害を与えた場合、その賠償責任は、個人ではなく国や公共団体が負うものとされているのだ。
専門家はその理由をこう解説する。
▼日本大学大学院危機管理学研究科(行政法)鈴木秀洋教授
「なぜこの規定があるのかっていうと、やはりその公務の特殊性にあります。例えば消防活動や災害の救助、又は虐待対応で家庭に踏み込まなければならない場面で、個人として訴えられてしまうとなると、“萎縮してしまう”、積極的な公務活動ができなくなってしまうんですね。その意味で、国家賠償法の組織責任規定は全ておかしいとは思いませんし、この規定は必要」
しかし鈴木教授は、コザ高校の事案に関しては、この規定に付随する「求償権」が行使されるべきだと語る。
■「求償権」とは
求償権とは、公務員に故意または重大な過失があった場合、国や公共団体が、その賠償額を公務員個人に請求できる権利だ。
▼日本大学大学院危機管理学研究科(行政法)鈴木秀洋教授
「報告書も見させていただいた中で、これは逆に行使しないとまずい事案ですよね」
「 “学校の先生って忙しいのに” とか “学校の先生を過度に追及するのは” というのはありますけど、それを超えてる事案はあります。今回の事案はまさにそれを超えている事案なので」
「こういう場合は求償権が行使されるのだというような、ひとつのメルクマール(指標)、判断基準になるものだと思います。その意味ではすごく意義があるし、沖縄県としては悩む事案ではないだろうと考えています」
遺族は元顧問に直接責任を問いたいという心情を抱えるなか、県はこの「求償権」についてどう考えているのか。
県教育庁は取材に「元顧問の行為が国家賠償法の “重過失にあたるかどうか” を弁護士と相談し、対応を検討したい」と回答し、「求償権の行使」を検討しているとした。
ただ学校現場で「求償権」が行使された事例は他府県を見てもかなり少ない。同様の事案に苦しむ全国の多くの当事者が歯がゆい思いをしているのが現状だ。
今回話を聞いた鈴木教授は、県が求償権を行使すれば「全国の類似の事案の一つの光になる、他県の行政判断にも影響をもたらす」可能性があると語っている。
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