30代男性パワハラ自殺訴訟 会社と上司に賠償命令 福岡地裁判決
2025年3月19日(水) 13:30 毎日新聞(志村一也)
大分県佐伯市の海運会社に勤務していた男性(当時30歳)が2019年4月に自殺したのは上司のパワハラが原因だったとして、両親が同社や当時の上司に計6841万円の損害賠償を求めた訴訟で、福岡地裁(林史高裁判長)は19日、同社と上司1人に連帯して計6612万円の支払いを命じた。両親側は、男性が自殺する直前まで上司から「ナマケモノ」などとやゆされるメールを送られていたと訴えていた。
訴状などによると、男性は商船系高専卒業後の14年に同社に入社。2隻の船舶管理業務などを担っていた18年10月~19年4月4日、上司から届いたメールには「貴方にも後輩が出来ました。追い越されない様によ~く考えて下さい」▽「ナマケモノの態度を改めなければあなたを必要とする理由が見当たりません」――などと男性を否定するような内容が書き込まれていた。
男性は「ナマケモノ」と記されたメールを受信した4日後の19年4月8日、大分県佐伯市の自宅で死亡しているのが見つかった。自殺とみられる。佐伯労働基準監督署は21年4月、パワハラなどと自殺の因果関係を認め、労災認定。男性の両親は同社に謝罪と損害賠償を求めたが、拒否されたため、22年4月に福岡地裁に提訴した。
両親側は訴訟で上司からのメールについて「屈辱的表現でばかにされ、存在価値を否定された。強度の心理的負荷を与える違法なパワハラだ」と主張。同社や上司はパワハラを是正・防止などをせずに安全配慮義務に反したと訴えていた。
一方、同社側はメール送信を認めた上で「パワハラに当たらない」などと請求棄却を求めていた。
「ナマケモノにも程がある」上司からのメールは”パワハラ”
30歳男性の自殺 海運会社と上司に約6600万円支払い命じる判決
福岡地裁
2025年3月19日(水) 16:41 RKB毎日放送
6年前、大分県佐伯市の海運会社に勤務する男性が自殺したのは、上司からのパワハラなどが原因だとして男性の両親が会社や上司らに損害賠償を求めていた裁判。福岡地裁は19日、自殺との因果関係を認め、会社と上司に6600万円あまりの支払いを命じました。
■自殺した男性の両親が訴え
この裁判は、大分県佐伯市の海運会社「福永海運」に勤務していた瀧本明範さん(当時30歳)が2019年に自殺したのは、時間外労働による過労や職場の上司から送られた不適切なメールが原因だとして、瀧本さんの両親が、会社や上司らに損害賠償費など約6800万円の支払いを求めていたものです。
■業務と自殺との因果関係認める判決
19日、福岡地裁の林史高裁判長は、瀧本さんの自殺と、業務や上司からの不適切なメールとの因果関係を認め、「福永海運」と当時の上司1人に合わせて約6600万円の支払いを命じました。
■上司のメールは「業務上の必要性なく不適切」
判決によると、瀧本さんの上司は「ナマケモノの態度を改めなければあなたを必要とする理由が見当たりません。猛省してください」「手抜きにも程があります」「貴方にも後輩が出来ました。追い越されない様によ〜く考えて下さい」などのメールを送信しました。
これらのメールについて判決は、「このような表現を用いたことに業務上の必要性がなく、社会的相当性を欠く不適切なもの」で「人格を貶める表現」だと指摘。
■時間外労働・休日の電話対応で「心理的負担」
また、瀧本明範さんは、亡くなる前1か月の時間外労働が43時間あまりに及んだほか、帰宅後や休日も電話連絡などの対応を求められ精神的緊張を強いられ、「質的にも量的にも相当程度の心理的負荷を生じさせた」と判断しました。
その上で、瀧本さんは、業務によって精神障害を発病し自殺に及んだと認めました。
■父親と弁護士が会見
判決後に会見した原告側代理人の光永享央弁護士は「労働の相談で最も多いのはパワハラ事案だが、民事訴訟で勝訴するのは難しい。この裁判の結果が労働環境に良い影響を与えてほしい」としています。
また、原告である瀧本さんの父親は「(会社内で)人を人と思わないパワハラに満ちたようなことが当然となっているのは残念。今後、海運を支えていく人たちが二の足を踏まないようにしてほしい、そうしないと我が息子の命は無駄になる」と涙ぐみ話しました。
■労災認定も
瀧本さんの自殺については、佐伯労働基準監督署が2021年、労働災害に認定しています。
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